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大聖の恋

第64話

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 一緒に飲んでいるうちの1人、小野田が、オリエンテーリングの時の話をし始める。

 小野田:「オレさ、すっかり忘れてたんだけど、あの時のことで、ずっと気になってたというか、黙ってたことあるんだ。今更なんだけど。」

 俺:「オリエンテーリングのこと?俺とは同じ班じゃなかったよね?」

 小野田:「そうそう、オレは大聖じゃなくて、こっちの2人と一緒の班だった。」

 こっちの2人とは、一緒に飲んでる、5年生の時同じクラスだった俺と小野田以外の2人だ。

 小野田:「オリエンテーリングの途中で、すっげ酷い土砂降りになったじゃん?
 皆慌てて大きな木の下に行って、カッパ取り出して着てた時、フッと見たら斜め前くらいのところに大聖の班がいたんだ。
 大聖の班に桜井いたよね?女子の。」

 俺:「ああ、確かにいた。桜井。で?」

 小野田:「桜井がカッパ着るのにかなり手間取ってたから手伝ってあげようと思ってそばに行ったんだ。まあ、全然オレ役に立たなくて、逆に邪魔して桜井に怒られたけど。
 そのタイミングで近くにいた先生が来て、“お前ら皆揃ってるか?すぐ青少年の家戻れ!”って言ってさ。
 その後大聖が人数確認した時、なんかオレを指さしてたような気がするんだよね。
 あん時大聖からは離れてて、雨の音が酷くてよく聞こえなかったし、オレ、カッパのフードも被ってたし、気のせいかなとは思ったけどさ。
 オレ、あの頃先生とかにたまにカケルくんと間違われてたんだ。そんなに似てるか?って、自分では似てるとは思ってなかったけど、でももしかしてまた間違えられてたかなー?って。」

 俺はハッとした。

 幻の7人目…。

 小野田:「オレは大聖の班が何人か知らないし、メンバーも誰か知らないし。ただ、桜井が大聖の班かーって思ったくらいで。
 まさか1人足りないなんて全然思ってなかったし。
 で、青少年の家に着いたら大騒ぎだろ?
 そん時も、行方不明のカケルくんが大聖の班だとも気付いてなかったんだ。
 でもさ、後であれ、もしかしてオレのせいだったのかなーって思ってさ。
 あん時オレがそこにいなかったら、カケルくんがいないの気付いて、カケルくんも大怪我とかしなくて済んだのかなって。
 だいぶ経ってからそう思ったけど、もうカケルくんも無事に退院して転校してたし、まいっかって思って、言うの今になった。」

 俺:「うわー、謎解けた!
 オレ、あん時確か7人数えたはずなのに、なんでカケルくんがいなかったんだろうって不思議でさ。
 オレが6人しか数えてないのに7人と思い込んでいたのか、まさか目に見えないはずの物が見えてたのか…とか、すっげ悩んでた。
 良かった!良かったよ、謎が解けて。」

 小野田:「あ、良かった?なら良かった。で、オレのせいじゃないよね?」

 俺:「うん、その前からはぐれてしまってて、多分その時すでに怪我してたと思うから、ていうか、小野田は全然悪くないよ。」

 小野田:「良かったー!オレさ、桜井にも怒られてしょんぼりなのに、さらにカケルくんのもオレのせいだったらと思って、しばらく落ち込んでたよ。」

 俺:「あ、小野田って、桜井のこと好きだったのか!
 今から連絡して呼び出す⁉︎」

 小野田:「バッカ!昔の話!でもさー、今日久しぶりに桜井見たらさ、やっぱ可愛いかったわ。」

 俺達はその後、昔の恋バナで盛り上がった。
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