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第37話
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カケルくんとの思い出話は続く。
俺:「せめてさ、転校?留学?するの言ってくれたらよかったのに。
突然だったからびっくりしたよ。」
カケル:「オレさ、実は、4年生の時ずっと不登校だったんだよね。」
俺:「そうだったんだ、知らなかった!」
カケル:「もともと人に興味が無くて。友達なんて1人もいなかったし。
ずっと本読むか絵描くかしてれば1人でもよかったんだけど、4年生になったら突然学校に行けなくなったんだよね。
5年生になってさ、新学期っていうこともあったけど、先生にクラスメイトの名前聞いて、本宮くんと同じクラスって知ったから行ってみようかなと思って、それから学校にまた行けるようになったんだ。」
俺:「え?何でオレ?」
カケル:「同じクラスになったことなかったけど、目立つから知ってた。
なんか、本宮くんだけは気になる存在だったんだよねー。」
俺:「へー、なんか照れる。」
カケル:「学校行ってみたら、そんなに大袈裟な反応する人もいなかったし、本宮くんがオレの描いてるゲームのキャラ見て話かけてくれて、しばらく楽しくてさ、“友達”っていいかもって思ってたんだ。
そしたらオレが“転校する”って言っても皆無反応なんじゃないかと思って、逆に余計な不安がでてきたんだ。
だから、誰にも気付かれないように、いなくなりたかった。」
俺:「そっか。でも、オレめちゃくちゃ寂しかったよ。オリエンテーリングのことがあったからじゃなくて。」
カケル:「ありがとう。」
カケルくんは照れて笑った。
俺:「ゲームのラスボスのカケルくんは怒って泣いてたし、最後の問題も答えられなかったから、てっきりまだ恨まれてるかと思ったよ。」
カケル:「ごめんなさい!ラスボスのことはさっきも言ったけど、イタズラだったんだ。
俺のこと思い出してほしかったし。
敵キャラがニコニコするのも変でしょ?だから怒ってみた。怒るだけじゃ芸が無いから、次泣いて。
車の施錠確認と、キャンプ場の入り口の受付に鍵落とし物の確認してもらうように仕向けたのもワザとだよ。時間稼ぎで。
お二人に、本宮くんがオレのこと何か話してたか探り入れてた。
覚えててくれたなら、ラスボスがオレだと非常に恥ずかしいし。ちゃんとした敵キャラのままにしないとと思って。
名札付けて、受付もして、話もしてるのにさ、やっぱり全然覚えてる様子無かったから、ラスボスをオレに変えたんだ。
本宮くんがすごく謝ってて、そんなつもりじゃなくて、すごく申し訳なかったけど、嬉しかった。
でも、あの頃の陰キャなオレをぶった斬ってくれても良かったんだけどね。
1つ言うと、最後の問題は…やっぱりちょっと悲しかったな。」
俺:「あの鍵のこと、そうだったんだ!車上荒らしいるんだって、素直に信じてたよ。
受付の名札は正直見てなかったなぁ。それに、実はカケルくんの苗字、小学校の時から漢字読めてなかったんだ。パッと見だと今でも読めない。“カケル”の方が下の名前だと思ってたくらいで…。
最後の問題もすっかり忘れてたよ、ごめんね。」
俺は苦笑いだ。
アユタ:「あー、そういえば何か変だと思ってた!」
佑:「そうそう。“オリエンテーリング、懐かしいでしょ?何か思い出話とかしました?”とか聞いてきて、フレンドリーな人だと思ったけど、職員なのに何で鍵落としてんだ?って。フフッ。」
俺:「あとさ、外出たら端末の充電が急激に減ったのもワザと?」
カケル:「それは違うんだ!端末の充電が減ったのは、後で知ったんだ。全然オレが仕掛けたことじゃなくて…でも、そんなことになってごめんなさい!」
俺:「いいんだ。そんなに謝らなくても大丈夫。
最後の問題、“5年生の時、オレとカケルくんがした約束”、さっきの発表会で思い出したよ。
オレ、“ゲームが完成したら、真っ先にオレにさせてくれ”ってカケルくんに言ったんだ。」
カケル:「それ!思い出してくれたんだ。
約束は果たせたかな?」
俺:「うん。まさか発表前にさせてくれるなんてな!最高!」
アユタ:「発表前だから“ディベロップメントゲーム”だったんだな。」
佑:「あー、なるほど。」
カケル:「うん、開発中のゲームっていう意味。
でもさ、まさか本当に本宮くんが来てくれるなんて、思ってもなかった!
キャンプの予約表で名前見つけて、その日に合わせてゲームの受付代わってもらったんだ。
予約の日までにオレのキャラ作ってさ。
でも、最後まで出そうかどうか迷ったけどね。」
カケルくんははにかんだ。
俺:「オレの名前、見つけてくれたんだね。それであの“イツキ/カケル”が出来たのかぁ。
でもなんで隠しゲームにしたの?」
カケル:「隠しゲームにしたら、特別感でるでしょ?
それと、今回は知ってるとおり、“衝撃体感付きのゲーム”なんだ。
一応“痛みが伴う”って最初に言ってるけど、前情報の全く無い人がこのゲームをした時、どんな反応するか見たかったんだ。まあ、ブラインドテストというか…。
怪我してもらったら絶対ダメだし、出力もどれくらいがいいのかとか。
あと、アイテムとか装備とか、攻撃の仕方を詳しく説明した方がいいのか、あんまり必要ないかっていうのも知りたかったから、ほとんど説明無しバージョンで体験してもらったんだ。
お陰様でいいデータが取れました。」
俺:「だから“危険が伴うこともあります”だったんだね。」
佑:「何で中級Bコースの裏?」
カケル:「そこが1番、元自然の家に近いんだ。中級ならチビッコもやらないだろうし。
他のお試しゲームはBコースだけってわけでもないけどね。でもさ。中級は皆だいたい8割方Bコース選ぶんだよね。不思議なくらい。」
アユタ:「何で東京からあんな離れたキャンプ場で?」
カケル:「あのゲームに丁度いい建物があの自然の家だったんだ。
会社の人もあそこで体験してゲームの調整してた。」
俺達はいろんな謎が解けてスッキリした。
そこで改めて、再会を祝してジュースで乾杯した。
俺:「せめてさ、転校?留学?するの言ってくれたらよかったのに。
突然だったからびっくりしたよ。」
カケル:「オレさ、実は、4年生の時ずっと不登校だったんだよね。」
俺:「そうだったんだ、知らなかった!」
カケル:「もともと人に興味が無くて。友達なんて1人もいなかったし。
ずっと本読むか絵描くかしてれば1人でもよかったんだけど、4年生になったら突然学校に行けなくなったんだよね。
5年生になってさ、新学期っていうこともあったけど、先生にクラスメイトの名前聞いて、本宮くんと同じクラスって知ったから行ってみようかなと思って、それから学校にまた行けるようになったんだ。」
俺:「え?何でオレ?」
カケル:「同じクラスになったことなかったけど、目立つから知ってた。
なんか、本宮くんだけは気になる存在だったんだよねー。」
俺:「へー、なんか照れる。」
カケル:「学校行ってみたら、そんなに大袈裟な反応する人もいなかったし、本宮くんがオレの描いてるゲームのキャラ見て話かけてくれて、しばらく楽しくてさ、“友達”っていいかもって思ってたんだ。
そしたらオレが“転校する”って言っても皆無反応なんじゃないかと思って、逆に余計な不安がでてきたんだ。
だから、誰にも気付かれないように、いなくなりたかった。」
俺:「そっか。でも、オレめちゃくちゃ寂しかったよ。オリエンテーリングのことがあったからじゃなくて。」
カケル:「ありがとう。」
カケルくんは照れて笑った。
俺:「ゲームのラスボスのカケルくんは怒って泣いてたし、最後の問題も答えられなかったから、てっきりまだ恨まれてるかと思ったよ。」
カケル:「ごめんなさい!ラスボスのことはさっきも言ったけど、イタズラだったんだ。
俺のこと思い出してほしかったし。
敵キャラがニコニコするのも変でしょ?だから怒ってみた。怒るだけじゃ芸が無いから、次泣いて。
車の施錠確認と、キャンプ場の入り口の受付に鍵落とし物の確認してもらうように仕向けたのもワザとだよ。時間稼ぎで。
お二人に、本宮くんがオレのこと何か話してたか探り入れてた。
覚えててくれたなら、ラスボスがオレだと非常に恥ずかしいし。ちゃんとした敵キャラのままにしないとと思って。
名札付けて、受付もして、話もしてるのにさ、やっぱり全然覚えてる様子無かったから、ラスボスをオレに変えたんだ。
本宮くんがすごく謝ってて、そんなつもりじゃなくて、すごく申し訳なかったけど、嬉しかった。
でも、あの頃の陰キャなオレをぶった斬ってくれても良かったんだけどね。
1つ言うと、最後の問題は…やっぱりちょっと悲しかったな。」
俺:「あの鍵のこと、そうだったんだ!車上荒らしいるんだって、素直に信じてたよ。
受付の名札は正直見てなかったなぁ。それに、実はカケルくんの苗字、小学校の時から漢字読めてなかったんだ。パッと見だと今でも読めない。“カケル”の方が下の名前だと思ってたくらいで…。
最後の問題もすっかり忘れてたよ、ごめんね。」
俺は苦笑いだ。
アユタ:「あー、そういえば何か変だと思ってた!」
佑:「そうそう。“オリエンテーリング、懐かしいでしょ?何か思い出話とかしました?”とか聞いてきて、フレンドリーな人だと思ったけど、職員なのに何で鍵落としてんだ?って。フフッ。」
俺:「あとさ、外出たら端末の充電が急激に減ったのもワザと?」
カケル:「それは違うんだ!端末の充電が減ったのは、後で知ったんだ。全然オレが仕掛けたことじゃなくて…でも、そんなことになってごめんなさい!」
俺:「いいんだ。そんなに謝らなくても大丈夫。
最後の問題、“5年生の時、オレとカケルくんがした約束”、さっきの発表会で思い出したよ。
オレ、“ゲームが完成したら、真っ先にオレにさせてくれ”ってカケルくんに言ったんだ。」
カケル:「それ!思い出してくれたんだ。
約束は果たせたかな?」
俺:「うん。まさか発表前にさせてくれるなんてな!最高!」
アユタ:「発表前だから“ディベロップメントゲーム”だったんだな。」
佑:「あー、なるほど。」
カケル:「うん、開発中のゲームっていう意味。
でもさ、まさか本当に本宮くんが来てくれるなんて、思ってもなかった!
キャンプの予約表で名前見つけて、その日に合わせてゲームの受付代わってもらったんだ。
予約の日までにオレのキャラ作ってさ。
でも、最後まで出そうかどうか迷ったけどね。」
カケルくんははにかんだ。
俺:「オレの名前、見つけてくれたんだね。それであの“イツキ/カケル”が出来たのかぁ。
でもなんで隠しゲームにしたの?」
カケル:「隠しゲームにしたら、特別感でるでしょ?
それと、今回は知ってるとおり、“衝撃体感付きのゲーム”なんだ。
一応“痛みが伴う”って最初に言ってるけど、前情報の全く無い人がこのゲームをした時、どんな反応するか見たかったんだ。まあ、ブラインドテストというか…。
怪我してもらったら絶対ダメだし、出力もどれくらいがいいのかとか。
あと、アイテムとか装備とか、攻撃の仕方を詳しく説明した方がいいのか、あんまり必要ないかっていうのも知りたかったから、ほとんど説明無しバージョンで体験してもらったんだ。
お陰様でいいデータが取れました。」
俺:「だから“危険が伴うこともあります”だったんだね。」
佑:「何で中級Bコースの裏?」
カケル:「そこが1番、元自然の家に近いんだ。中級ならチビッコもやらないだろうし。
他のお試しゲームはBコースだけってわけでもないけどね。でもさ。中級は皆だいたい8割方Bコース選ぶんだよね。不思議なくらい。」
アユタ:「何で東京からあんな離れたキャンプ場で?」
カケル:「あのゲームに丁度いい建物があの自然の家だったんだ。
会社の人もあそこで体験してゲームの調整してた。」
俺達はいろんな謎が解けてスッキリした。
そこで改めて、再会を祝してジュースで乾杯した。
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