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第33話

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 キャンプ場を出たとき、すでにお昼1時頃だった。
 俺達はお腹がぺこぺこだったので1番近いところで良さそうなお店を探す。
 
 結構田舎なのでお店が少なく、お昼時なのでどこもいっぱいでなかなか入れそうなところが見つからなかったが、雰囲気の良さそうなお蕎麦屋さんが入れそうだったので、そこに入る。

 駐車場は入れたのだが、中に入ると待ちの人がいっぱいいて結構待たされる。
 お蕎麦屋さんなので、回転は早い方だと思うが、席に座れたのは1時45分頃だ。
 注文してからさらに待たされる。

 待っている間、俺とカケルくんの小学校のオリエンテーリングでのこと、隠しゲームのファイナルステージのこと、ゲームが終わって端末の充電が無くなり苦労して受付棟に戻ってきた話を、全部2人に話した。

 佑:「なんかさ、端末の充電ゼロにしたのって、ワザとじゃない?大聖に復讐するためにさ。」
 アユタ:「オレもそう思う。多分あの端末、壊れてないよね?だと、そんな急に減らなくない?」
 
 俺:「オレもそう思うんだ。ゲームでは一応謝ったけど、端末の充電が無くなった時、そんなにまだ怒ってるんだなと思って、すごく辛くて悲しくなったよ。
 オレも一応カケルくんを探しに行って、迷ってすごく不安な思いしたけどさ、カケルくんのは置いてけぼりだからね。しかも怪我までしてたし。
 オレまだそんなに恨まれてるのかぁって思うと、ちょっと立ち直れない。
 会うこともできないし、どうしたらいいんだろ?」

 アユタ:「やられた方はさ、悲しいのがずっと残るんだよね。やった方はすぐ忘れるけど。
 でも、ワザと置いてったなら果てしなく恨むだろうけど、大聖はただ班長だったっていうだけで、それ以外何かしたわけじゃないのにな。
 長年恨むのはちょっと違うよな。」

 佑:「もしかしてカケルくんは、ワザと大聖に置いていかれたと思ってるのでは?」

 俺:「え?あの状況で、ワザとって思うかな…?皆軽くパニクッてたし。」

 佑:「その、土砂降りになる前の段階で、すでに置いてけぼりにされてたとか?」

 俺:「…そう言われたら自信ない。
 カケルくんてさ、5年生で初めて同じクラスになったんだけど、それまで全然印象無くてさ、こんな子いたっけ?って思うくらいだったんだ。
 俺は何回か話したけど、ほとんど休み時間もいつも1人で、本読んでるか何かノートに書いてるとか図書室にいるとかで、他の友達と遊んでるの見た記憶ないんだよね。
 だから、人数点検の時、うっかりカケルくんの存在を外して確認してた可能性は否めない…。」

 アユタ:「そもそもいくら小学生でも、たった7人ではぐれてしまうかな?誰かは見てるものだろ?」

 佑:「でも、一緒にいるのに存在無視されてたとしたら…?オリエンテーリングの間中そう感じてたとしたら?で、挙げ句の果てに置いてけぼりなら、かなり辛くて悲しいかもね。」

 俺は改めて、すごく酷いことをカケルくんにしてしまってたんだと思った。

 蕎麦は美味しかったけど、しょっぱい気分。

 俺達は、やっぱりそのまま家に帰ることにした。
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