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第31話

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 ひとしきり泣いた後、“戻らなきゃ”という思いが強くなり、涙もしっかり乾いた。

 この年で泣いてしまうなんて…とも思った。

 俺はとりあえず、中級コースの6番目のポストを目指す。

 6番目のポストまでちよっと距離があるが、ほとんど曲がらずに歩いて来たので難しくはない。
 割とすぐに到着する。

 そこから順番に来た道を辿り戻っていく。途中で見つけてた看板などを目印に、地図を頼りに少し迷いながらもなんとかスタート地点に辿り着く。

 40分ほどかかったと思う。

 人気ひとけのある場所まで来たときにはホッとした。

 ゲームの受付管理棟に行き、中に入るとアユタと佑がいる。
 受付の人は時間的にお昼休憩なのかな?見当たらない。

 アユタ:「すっげー遅かったな!携帯かけても繋がらないし、心配したよ。
 ここの受付の人もいないし。」
 佑:「ほんと、無事で良かった。で、どうだった?クリアした?」
 俺:「ごめん、クリアできなかった。携帯はなんか電波届いてなくて。それと2人共あの自然の家で待ってるのかと思った。」

 アユタ:「ああ、ゲームからの指示で、ここに戻れって。まあすぐそこだし、大聖もゲーム終わったら指示あるんだろうと思ってさ。」

 俺:「え?すぐそこだった?」

 佑:「うん。多分2~3分、建物の横の方の道をまっすぐ歩いて着いた。」

 アユタ:「オレ達がゲームオーバーした時、確かあと15分ほどで終わるはずで、遅くても30分くらいで戻ってくるかと思ってたけど全然来ないし。」

 佑:「心配でさっき自然の家に戻って探したんだ。でも大聖どこにもいなくて、建物の中探そうと思ったけど鍵かかってて。」

 アユタ:「自然の家戻る時すれ違わなかったし、建物に続く道はちょっと分かりにくかったから、もしかして大聖が道に迷ったのかと思ってさ。
 確か端末にGPS付いてるって言ってたから、受付の人に相談しようとまたここに戻ってきたんだけど、まだ受付の人はいなくて。
 そしたらちょうど大聖が帰って来たから、すげーホッとした。」

 佑:「山の中で行方不明になったら大変になるとこだったよ。良かった!」

 俺:「オレの端末さ、外に出てすぐ充電切れたんだ。
 2人が管理棟に戻ってるっていうのまでは表示出たけど、その後分かんなくて、中級コースに戻ってそこから来た道戻ってきたんだ。
 すぐそこなら、こんなに苦労しなかったのに!」

 佑:「あーそうだったんだ!でも良かった、帰って来れて!」

 そこへやっと受付の人がやってきた。朝の人とは違う人だ。
 受付:「すみません、だいぶ待ちましたよね?こちらの都合で急に交代になったもので、急いで来たんですけど…。」

 俺:「あのー、聞きたいことがあるんですが、いいですか?」
 受付:「はい、何でしょう?」
 俺:「カケルくんて知ってますか?このゲームと何か関係あるんでしょうか?」

 受付:「カケルくん?あ、お客さん、カケルさんとお知り合いですか?」
 俺:「ご存知なんですか?」

 受付:「さっき、えっとー朝から受付してた人ですよね?カケルさん。
 本当はアメリカの大学生なんですけど、このオリエンテーリングゲームの開発に関わってる人らしく、今夏休みでこっちに来てゲームの様子を知りたいって何日かここで受付してたんです。
 それが、さっき急に会社へ戻らなきゃいけないからって私が代わりにと呼び出されて、大変でした。」

 俺はガーンとハンマーで頭を殴られたほどの衝撃を受けた。

 まさか。あの受付の人がカケルくんだったのか⁉︎全然気付かなかった!

 俺:「カケルくんはここにまた来ますか?会いたいんですけど!」

 受付:「あー、すみません、彼はここの人じゃないので、次いつ来るか分からないんですよね。本当はあと何回か来る予定ではあったんですけど、今後の予定は未定です。」

 俺:「じゃあ、連絡って取れないですか?連絡先教えてもらうとか?」

 受付:「すみません、それはお教えできかねます。いる間に本人に聞いてもらえればよかったんですけどね。
 一応お伝えはしておきます。」

 俺は、全然気付かなかった自分を悔やんだ。
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