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第28話

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 俺が小学5年生の6月の終わり頃、宿泊学習というものがあり、2泊3日の予定で青少年自然の家に行った。

 そして2日目の午前中にオリエンテーリングの予定があった。

 ちょっと雲行きが怪しかったけど、降り出すのは夕方くらいだろうし、小雨程度なら大丈夫とのことで、予定通り実施した。

 俺の班は7人で、男子が4人と女子が3人という構成だ。
 そして俺は班長に抜擢された。
 
 小学生のコースはもちろん簡単なもので、1時間くらいでゴールできるものだが、初めての地図とコンパスで、今どこにいるのかすら読み切れず、悪戦苦闘した。

 それでも俺はリーダーシップを発揮しなきゃと張り切る。

 移動する時やポストに着いた時、その都度、班の皆がちゃんといるかどうかを確認していた。

 いくつかポストを周って、順調に行っていたのだが、次のポストへ向かう途中、突然雷が鳴って土砂降りの雨が降ってきた。
 皆慌ててリュックの中に入ってるカッパを取り出して着たのだが、要所要所に見張りでいたうちの1人の先生に会い、「皆揃ってるか?すぐ自然の家へ戻れ!」と指示を受けた。

 この時、ちゃんと7人数えたはずだったが、雨と雷が酷くて適当になっていたのかもしれない。
 
 俺達は先生が指し示す方向へ全力で走っていく。

 何ヵ所か曲がるところがあったが、他の班の人と出会ったりして、割とすんなり戻ることができた。

 戻ってからすぐ人数を確認したら、1人足りない。
 6人しかいないのだ。男子が3人、女子が3人、いないのは“カケルくん”だった。

 俺はすぐに先生に報告した。
 先生たちは皆忙しそうだったが、先生の何人か“カケルくん”を探しに出た。

 俺はすごく責任を感じていた。“カケルくん”に何かあったらどうしようと、不安だった。

 先生からは待機命令が出ていたので少し待ったが、その後同じ班の友達に「すぐそこまで、ちょっと様子見てくる。」と言って、俺1人で外に出た。
 
 雷は遠くから聞こえる程度で、さっきよりは全然音も小さい。
 雨も少し収まって、降ってはいるが土砂降りではなくなったので、分かるところまで行ってみようと、山道に入った。

 俺は帰ってきた道を覚えていると思っていたが、迷ってしまった。
 探しに行くにも行けず、戻るに戻れず、15分ほどウロウロした時、大したこともないような段差で滑り落ちて、怪我はしなかったものの動けなくなってしまった。
 それでもその後10分くらい経っただろうか、先生に運良く見つけてもらって自然の家に戻ることができた。

 “カケルくん”はすぐに見つかっていたのだが、1mほどの崖から転がり落ちていて酷く怪我をしたそうで、俺が余計なことをしてる間に救急車を呼ぶ大騒ぎになっていたみたいだ。
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