15 / 41
第15話
しおりを挟む
「最初に言っておきますけど、私は[松下村]さんとは、何も無いですよ。何もしてません。その…変な男と女…みたいなこと。」
「?ごめんなさい、[松下村]って?」
「ああ、柳井田さんて言った方がいいですよね。
横川さんて、柳井田さんの奥さんなんですよね?[松下村]って、柳井田さんのゲームの時に使ってた名前です。そのゲームのオフ会では、皆ゲームの時に使う名前で参加してたんです。でも柳井田さんはフツーに自己紹介的に会社とか奥さんとか家族とか、写真見せて自慢してました。
なので、あなたのことは写真見てたので、思い出しました。」
「でも、すごい記憶力…。」
「ふぅ、…全部正直に話します。
私、柳井田さんに会いにあのオフ会に参加したんです。なので、柳井田さんが話したこととか、すごく覚えてます。」
⁉︎
私はびっくりしたし、さっぱり分からなかった。
大高さんの娘さんは話を続ける。
「元々あのゲームは好きでやってたんです。柳井田さんとは全然関係なくて。
で、知り合いに山口でゲームのオフ会やるっていうので誘われて…。
山口かーと思って、募集かけてる人と参加メンバーのことネットで検索かけてたら、たまたま[オカジ]くんの勤先が“柳井田運送”っていうことが分かって、運命だと思いました。
少しでも柳井田さんに近付けるかと思って参加することにしたんです。
まさか本人が参加するなんて思ってもなかったですけど…。」
「な、何で、柳井田のこと…?」
「だって私、柳井田さんの娘なんですよね?」
え⁉︎
私は何て言っていいか分からず、フリーズしてしまった。
「あ、奥さんはもしかして知らなかったですか?」
寒さなのか何かよく分からないが、体中が震える。
「ぜ、全部知ってて夫に近付いたっていうこと?」
「全部かどうかは分かりませんけど。いえ、やっぱりほとんど知りません。母も私にハッキリと言ったわけではありませんし。」
「そう、あの、お母さんと話したいんだけど、今どこに…?」
「…母は、今入院してます。ちょっと具合悪くして。
今ちょっと微妙で、刺激与えたくないし、会うのはしばらく待ってもらえますか?
母が会うって言うかも分からないですし。」
「そんなに悪いの?」
「まだ分かりません。検査とか、そういう段階で…。」
「そうなのね…。大変な時に、なんかごめんなさい。」
「いえ、そんなこと分からないでしょうし。」
「あの、ちょっと聞きにくいことなんだけど、ついでに一つだけ確認しておきたいんだけど…。」
「何ですか?」
「夫の、その…、財布からお金盗ったりした?」
「え⁉︎そんなこと!
私そんな泥棒みたいなこと、絶対してない!
お金って…ひどい!私じゃないです!
絶対違う!」
大高さんの娘さんは全力で否定する。
私は夫から聞いた経緯をなるべくそのまま伝え、大高さんの娘である[みけりす]しかお金を盗る状況になりえないと話す。
「この話の流れで、お金を返してとは言わないけど、そういうことはよくないと思うの。
今後の、将来のために…。」
「私じゃありませんよ!
どんなに貧乏でもそんな…人から盗むなんて絶対しません!何かの間違いじゃないんですか⁉︎」
そう言った後、ハッと何か思い出した顔をする。
「私じゃなかったら[まいうい]ちゃんかも…?」
「[まいうい]ちゃんて?」
「私と同じで東京から参加した人なんですけど、行きの新幹線もホテルも一緒で。
あの日、柳井田さんが私の部屋で寝てしまったので、私はホテルのロビーに行ったんです。
この後どうしようかと思ってしばらくロビーで携帯ゲームしてたら、[まいうい]ちゃんがホテルに帰ってきて、事情を説明したら“一緒に私の部屋で寝ていいよ”って言ってくれたんです。[まいうい]ちゃんは他に部屋が空いてなかったからツインルームにしてたので。
ホテルのフロントに言ってオッケーもらったので、私が荷物を全部取りに行ったんですが、よくよく考えたら私、自分の部屋の分も払わなきゃいけないって言ったら、そっちは柳井田さんに払ってもらえばいいって[まいうい]ちゃんが。
で、“この部屋の分払ってください”ってメモ書いて置きに行ってくれたんです。
その間、私はシャワーさせてもらって。
もしかして、その時に…かも?」
「じゃあ、その[まいうい]って子が?」
「私じゃなければ…。いえ、そんな事しないとは思いますが。
やっぱり柳井田さんがどこかで使ったか、落としたとかないですか?」
「…分かった。
お金の話は無かったことにしましょう。あなたじゃないと信じます。それにこれ以上のことは分からないだろうし。」
私と大高さんの娘さん『大高 光莉』ちゃんと連絡先を交換して、この日は別れた。
私はまた田原の家に戻り、この話をする。
「そんな都合がいい話ってあるかな?」
「うーん、嘘には聞こえなかったけど、確かに都合がいいかな?」
「まあでも、歌欄ちゃんが犯人っていう方が、私的にはしっくりくるかな。」
第三者の田原でも、そうだろうというなら、光莉ちゃんを信じようと思った。
少しして光莉ちゃんから連絡が入る。
『[まいうい]ちゃんですが、連絡が取れて今月の最終の日曜日に会えることになりました。
お金のことをうやむやにして、私も…彼女も疑われるのは嫌なので、直接会って確認してはどうかと思い連絡しました。』
もちろん私はオッケーして、1月の最終の日曜日、18時に待ち合わせの公園へ向かう。
「?ごめんなさい、[松下村]って?」
「ああ、柳井田さんて言った方がいいですよね。
横川さんて、柳井田さんの奥さんなんですよね?[松下村]って、柳井田さんのゲームの時に使ってた名前です。そのゲームのオフ会では、皆ゲームの時に使う名前で参加してたんです。でも柳井田さんはフツーに自己紹介的に会社とか奥さんとか家族とか、写真見せて自慢してました。
なので、あなたのことは写真見てたので、思い出しました。」
「でも、すごい記憶力…。」
「ふぅ、…全部正直に話します。
私、柳井田さんに会いにあのオフ会に参加したんです。なので、柳井田さんが話したこととか、すごく覚えてます。」
⁉︎
私はびっくりしたし、さっぱり分からなかった。
大高さんの娘さんは話を続ける。
「元々あのゲームは好きでやってたんです。柳井田さんとは全然関係なくて。
で、知り合いに山口でゲームのオフ会やるっていうので誘われて…。
山口かーと思って、募集かけてる人と参加メンバーのことネットで検索かけてたら、たまたま[オカジ]くんの勤先が“柳井田運送”っていうことが分かって、運命だと思いました。
少しでも柳井田さんに近付けるかと思って参加することにしたんです。
まさか本人が参加するなんて思ってもなかったですけど…。」
「な、何で、柳井田のこと…?」
「だって私、柳井田さんの娘なんですよね?」
え⁉︎
私は何て言っていいか分からず、フリーズしてしまった。
「あ、奥さんはもしかして知らなかったですか?」
寒さなのか何かよく分からないが、体中が震える。
「ぜ、全部知ってて夫に近付いたっていうこと?」
「全部かどうかは分かりませんけど。いえ、やっぱりほとんど知りません。母も私にハッキリと言ったわけではありませんし。」
「そう、あの、お母さんと話したいんだけど、今どこに…?」
「…母は、今入院してます。ちょっと具合悪くして。
今ちょっと微妙で、刺激与えたくないし、会うのはしばらく待ってもらえますか?
母が会うって言うかも分からないですし。」
「そんなに悪いの?」
「まだ分かりません。検査とか、そういう段階で…。」
「そうなのね…。大変な時に、なんかごめんなさい。」
「いえ、そんなこと分からないでしょうし。」
「あの、ちょっと聞きにくいことなんだけど、ついでに一つだけ確認しておきたいんだけど…。」
「何ですか?」
「夫の、その…、財布からお金盗ったりした?」
「え⁉︎そんなこと!
私そんな泥棒みたいなこと、絶対してない!
お金って…ひどい!私じゃないです!
絶対違う!」
大高さんの娘さんは全力で否定する。
私は夫から聞いた経緯をなるべくそのまま伝え、大高さんの娘である[みけりす]しかお金を盗る状況になりえないと話す。
「この話の流れで、お金を返してとは言わないけど、そういうことはよくないと思うの。
今後の、将来のために…。」
「私じゃありませんよ!
どんなに貧乏でもそんな…人から盗むなんて絶対しません!何かの間違いじゃないんですか⁉︎」
そう言った後、ハッと何か思い出した顔をする。
「私じゃなかったら[まいうい]ちゃんかも…?」
「[まいうい]ちゃんて?」
「私と同じで東京から参加した人なんですけど、行きの新幹線もホテルも一緒で。
あの日、柳井田さんが私の部屋で寝てしまったので、私はホテルのロビーに行ったんです。
この後どうしようかと思ってしばらくロビーで携帯ゲームしてたら、[まいうい]ちゃんがホテルに帰ってきて、事情を説明したら“一緒に私の部屋で寝ていいよ”って言ってくれたんです。[まいうい]ちゃんは他に部屋が空いてなかったからツインルームにしてたので。
ホテルのフロントに言ってオッケーもらったので、私が荷物を全部取りに行ったんですが、よくよく考えたら私、自分の部屋の分も払わなきゃいけないって言ったら、そっちは柳井田さんに払ってもらえばいいって[まいうい]ちゃんが。
で、“この部屋の分払ってください”ってメモ書いて置きに行ってくれたんです。
その間、私はシャワーさせてもらって。
もしかして、その時に…かも?」
「じゃあ、その[まいうい]って子が?」
「私じゃなければ…。いえ、そんな事しないとは思いますが。
やっぱり柳井田さんがどこかで使ったか、落としたとかないですか?」
「…分かった。
お金の話は無かったことにしましょう。あなたじゃないと信じます。それにこれ以上のことは分からないだろうし。」
私と大高さんの娘さん『大高 光莉』ちゃんと連絡先を交換して、この日は別れた。
私はまた田原の家に戻り、この話をする。
「そんな都合がいい話ってあるかな?」
「うーん、嘘には聞こえなかったけど、確かに都合がいいかな?」
「まあでも、歌欄ちゃんが犯人っていう方が、私的にはしっくりくるかな。」
第三者の田原でも、そうだろうというなら、光莉ちゃんを信じようと思った。
少しして光莉ちゃんから連絡が入る。
『[まいうい]ちゃんですが、連絡が取れて今月の最終の日曜日に会えることになりました。
お金のことをうやむやにして、私も…彼女も疑われるのは嫌なので、直接会って確認してはどうかと思い連絡しました。』
もちろん私はオッケーして、1月の最終の日曜日、18時に待ち合わせの公園へ向かう。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
【キャラ文芸大賞 奨励賞】壊れたアンドロイドの独り言
蒼衣ユイ/広瀬由衣
キャラ文芸
若手イケメンエンジニア漆原朔也を目当てにインターンを始めた美咲。
目論見通り漆原に出会うも性格の悪さに愕然とする。
そんなある日、壊れたアンドロイドを拾い漆原と持ち主探しをすることになった。
これが美咲の家族に大きな変化をもたらすことになる。
壊れたアンドロイドが家族を繋ぐSFミステリー。
illust 匣乃シュリ様(Twitter @hakonoshuri)
もしもしお時間いいですか?
ベアりんぐ
ライト文芸
日常の中に漠然とした不安を抱えていた中学1年の智樹は、誰か知らない人との繋がりを求めて、深夜に知らない番号へと電話をしていた……そんな中、繋がった同い年の少女ハルと毎日通話をしていると、ハルがある提案をした……。
2人の繋がりの中にある感情を、1人の視点から紡いでいく物語の果てに、一体彼らは何をみるのか。彼らの想いはどこへ向かっていくのか。彼の数年間を、見えないレールに乗せて——。
※こちらカクヨム、小説家になろう、Nola、PageMekuでも掲載しています。
Rotkäppchen und Wolf
しんぐぅじ
ライト文芸
世界から消えようとした少女はお人好しなイケメン達出会った。
人は簡単には変われない…
でもあなた達がいれば変われるかな…
根暗赤ずきんを変えるイケメン狼達とちょっと不思議な物語。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
狗神巡礼ものがたり
唄うたい
ライト文芸
「早苗さん、これだけは信じていて。
俺達は“何があっても貴女を護る”。」
ーーー
「犬居家」は先祖代々続く風習として
守り神である「狗神様」に
十年に一度、生贄を献げてきました。
犬居家の血を引きながら
女中として冷遇されていた娘・早苗は、
本家の娘の身代わりとして
狗神様への生贄に選ばれます。
早苗の前に現れた山犬の神使・仁雷と義嵐は、
生贄の試練として、
三つの聖地を巡礼するよう命じます。
早苗は神使達に導かれるまま、
狗神様の守る広い山々を巡る
旅に出ることとなりました。
●他サイトでも公開しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/essay.png?id=5ada788558fa89228aea)
かあさん、東京は怖いところです。
木村
ライト文芸
桜川朱莉(さくらがわ あかり)は高校入学のために単身上京し、今まで一度も会ったことのないおじさん、五言時絶海(ごごんじ ぜっかい)の家に居候することになる。しかしそこで彼が五言時組の組長だったことや、桜川家は警察一族(影では桜川組と呼ばれるほどの武闘派揃い)と知る。
「知らないわよ、そんなの!」
東京を舞台に佐渡島出身の女子高生があれやこれやする青春コメディー。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる