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第15話

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「最初に言っておきますけど、私は[松下村しょうかそん]さんとは、何も無いですよ。何もしてません。その…変な男と女…みたいなこと。」

「?ごめんなさい、[松下村]って?」

「ああ、柳井田さんて言った方がいいですよね。
 横川さんて、柳井田さんの奥さんなんですよね?[松下村]って、柳井田さんのゲームの時に使ってた名前です。そのゲームのオフ会では、皆ゲームの時に使う名前で参加してたんです。でも柳井田さんはフツーに自己紹介的に会社とか奥さんとか家族とか、写真見せて自慢してました。
 なので、あなたのことは写真見てたので、思い出しました。」

「でも、すごい記憶力…。」

「ふぅ、…全部正直に話します。
 私、柳井田さんに会いにあのオフ会に参加したんです。なので、柳井田さんが話したこととか、すごく覚えてます。」

 ⁉︎
 私はびっくりしたし、さっぱり分からなかった。
 大高さんの娘さんは話を続ける。

「元々あのゲームは好きでやってたんです。柳井田さんとは全然関係なくて。
 で、知り合いに山口でゲームのオフ会やるっていうので誘われて…。
 山口かーと思って、募集かけてる人と参加メンバーのことネットで検索かけてたら、たまたま[オカジ]くんの勤先が“柳井田運送”っていうことが分かって、運命だと思いました。
 少しでも柳井田さんに近付けるかと思って参加することにしたんです。
 まさか本人が参加するなんて思ってもなかったですけど…。」

「な、何で、柳井田のこと…?」

「だって私、柳井田さんの娘なんですよね?」

 え⁉︎
 私は何て言っていいか分からず、フリーズしてしまった。

「あ、奥さんはもしかして知らなかったですか?」

 寒さなのか何かよく分からないが、体中が震える。

「ぜ、全部知ってて夫に近付いたっていうこと?」

「全部かどうかは分かりませんけど。いえ、やっぱりほとんど知りません。母も私にハッキリと言ったわけではありませんし。」

「そう、あの、お母さんと話したいんだけど、今どこに…?」

「…母は、今入院してます。ちょっと具合悪くして。
 今ちょっと微妙で、刺激与えたくないし、会うのはしばらく待ってもらえますか?
 母が会うって言うかも分からないですし。」

「そんなに悪いの?」

「まだ分かりません。検査とか、そういう段階で…。」

「そうなのね…。大変な時に、なんかごめんなさい。」

「いえ、そんなこと分からないでしょうし。」

「あの、ちょっと聞きにくいことなんだけど、ついでに一つだけ確認しておきたいんだけど…。」

「何ですか?」

「夫の、その…、財布からお金盗ったりした?」

「え⁉︎そんなこと!
 私そんな泥棒みたいなこと、絶対してない!
 お金って…ひどい!私じゃないです!
 絶対違う!」
 大高さんの娘さんは全力で否定する。

 私は夫から聞いた経緯をなるべくそのまま伝え、大高さんの娘である[みけりす]しかお金を盗る状況になりえないと話す。

「この話の流れで、お金を返してとは言わないけど、そういうことはよくないと思うの。
 今後の、将来のために…。」

「私じゃありませんよ!
 どんなに貧乏でもそんな…人から盗むなんて絶対しません!何かの間違いじゃないんですか⁉︎」
 そう言った後、ハッと何か思い出した顔をする。
「私じゃなかったら[まいうい]ちゃんかも…?」
「[まいうい]ちゃんて?」

「私と同じで東京から参加した人なんですけど、行きの新幹線もホテルも一緒で。
 あの日、柳井田さんが私の部屋で寝てしまったので、私はホテルのロビーに行ったんです。
 この後どうしようかと思ってしばらくロビーで携帯ゲームしてたら、[まいうい]ちゃんがホテルに帰ってきて、事情を説明したら“一緒に私の部屋で寝ていいよ”って言ってくれたんです。[まいうい]ちゃんは他に部屋が空いてなかったからツインルームにしてたので。
 ホテルのフロントに言ってオッケーもらったので、私が荷物を全部取りに行ったんですが、よくよく考えたら私、自分の部屋の分も払わなきゃいけないって言ったら、そっちは柳井田さんに払ってもらえばいいって[まいうい]ちゃんが。
 で、“この部屋の分払ってください”ってメモ書いて置きに行ってくれたんです。
 その間、私はシャワーさせてもらって。
 もしかして、その時に…かも?」

「じゃあ、その[まいうい]って子が?」

「私じゃなければ…。いえ、そんな事しないとは思いますが。
 やっぱり柳井田さんがどこかで使ったか、落としたとかないですか?」

「…分かった。
 お金の話は無かったことにしましょう。あなたじゃないと信じます。それにこれ以上のことは分からないだろうし。」

 私と大高さんの娘さん『大高 光莉ひかり』ちゃんと連絡先を交換して、この日は別れた。

 私はまた田原の家に戻り、この話をする。

「そんな都合がいい話ってあるかな?」

「うーん、嘘には聞こえなかったけど、確かに都合がいいかな?」

「まあでも、歌欄ちゃんが犯人っていう方が、私的にはしっくりくるかな。」

 第三者の田原でも、そうだろうというなら、光莉ちゃんを信じようと思った。

 少しして光莉ちゃんから連絡が入る。

 『[まいうい]ちゃんですが、連絡が取れて今月の最終の日曜日に会えることになりました。
 お金のことをうやむやにして、私も…彼女も疑われるのは嫌なので、直接会って確認してはどうかと思い連絡しました。』

 もちろん私はオッケーして、1月の最終の日曜日、18時に待ち合わせの公園へ向かう。
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