三度目の人生、魔王様の協力の元に死を偽装&逃亡しましたが、私自身ではなく、私の『髪』を溺愛していて困ってます

藤原 柚月

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二章 いよいよ、復讐生実況配信開始します。

エルドの災難

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「あっ!!」

 急いで向かっていると丁度飛竜に乗って帰ってきた。

 赤い髪の橙色の瞳。切れ長でつり目。男性なのもあり、筋肉質。

 見た目は四十~五十歳。綺麗系というよりもスポーツマンって感じな彼はエルド。

 飛竜の背に乗っているエルドは、手綱を引く。

 すると飛竜は翼を広げ、着地する。翼により風が勢いよく吹き、私は目を開けてられずにギュッと閉じて腕を顔の前に出す。

 少しでも風の抵抗を無くそうとしてるのだが、それでも衝撃は凄かった。

 突風により、息が出来なくなる。土埃が無いだけまだマシかも。
 床が石作りになっててくれて良かった。

「ん? え、お前……オリビアか?? スライムのかぶりものを被ってるから一瞬魔王様かと……いや、そんなことよりもこんな所にいると飛竜の下敷きになるぜ」
「エル……ド」

 風が弱くなり、やっと目を開けられるようになる。

 私は飛竜に飛び降りたエルドに駆け寄った。

「エルド、あのね」

 グッと顔を近付かせ、真剣な表情を見せるとエルドも真剣な表情になる。

 エルドの肩に手を置く。足と手に力を込め、地を蹴り、飛ぶ。

 手を離し、空中で一回転すると飛竜の背に華麗に着地した。

「エルド、悪いわね。飛竜を借りるわ!!」
「お、おい、待て!! オリビアそいつは……」

 エルドが何かを言っているが、今は悠長に聞いてられるほど時間に余裕はない。

 エルドには申し訳ないけど。

 私は手綱を引いた。すると飛竜は低く唸り声を上げる。

 これ……もしかして。

 勢いよくエルドを見ると、エルドは呆れながらも眉間に皺を寄せていた。

 運が悪いことに、暴れん坊で有名(魔王城の中では)な飛竜に乗ってしまったらしい。

 降りることは難しいだろう。翼を広げて飛んでるんだから。

「ひゃあ!!」

 勢いよく飛び、ワザとなのか安定しない動きをされる。振り下ろされないようにしがみつくのがやっとだ。

 このままじゃ、私……死ぬ。

 ものすごいスピードなのもあり、息がなかなか出来ない。

 必死に私の肩にしがみついているルーナが飛ばされそうになり、手を伸ばして捕らえる。

 それと引き換えにスライムのかぶりものが飛んでしまったが、今はそれどころでは無い。

 私は胸の前で、ルーナを優しく支えた。飛ばされないように。

 興奮気味な飛竜は咆哮を上げている。

 以前、私がまだ冒険者だった頃にテイマーから動物の扱い方を教わった事がある。

 興奮気味な動物には優しく撫でてあげるそうだが、モンスターの場合は少し違う。

 私は、手に魔力を若干込める。

 上手くいくか分からないけど……。

 ルーナを支えてる手とは反対側。手網を握っている手に集中する。

 マッサージするように撫でてあげると落ち着く……はず。





 息が出来なくて、意識が飛びそうになりながらも我を保つ。

 手綱を握っているからやりづらいけど、マッサージに集中していると飛竜のスピードが段々と弱くなっていた。

「いきなりで驚かせてごめんね。寄ってほしい場所があるの。そこまで行ってくれないかしら?」

 飛竜は私を横目で見た後、すぐに前を向いた。応えるような咆哮をした飛竜に私はホッと胸を撫で下ろした。


 ーーーーーーーーーーー

【エルド視点】

「やっべぇ……。魔王様に怒られる」

 飛竜に乗って飛んでいったオリビアを呆然と見ていると背後から声をかけられた。

「ほぉ。怒られるとは、一体どういう要件か?」
「そりゃあまぁ。オリビアが一人で飛竜に乗ってどっかに飛んでいっ……」

 俺は青ざめた。背後から背筋が凍るような殺気を出していたのだから。

「その話、詳しく聞こうか」

 恐る恐る振り向くと般若の如く怒り狂っている魔王様が立っていた。

 これは殺されるのでは、と思いながらも話す。

 聞き終えた魔王様は頷いた。フッと笑った魔王様はとても美しいのだが、とても怖かった。

 俺のいる地面から魔法陣が現れ、地面に引きづり込まれたのだが、顔だけ残される。

「しばらく反省していろ」

 と、魔王様は言い放ち、瞬間魔法を使った。

 取り残された俺は一人虚しく空を見上げた。

「虚しい……」

 ボソッと呟いた。

 殺されなかっただけマシだ。本当に、オリビアが大好きなんだから。

 お互いに両想いなのに未だに通じ合えてないのが不思議だな。

 オリビアが魔王様に黙って城を離れたことへの苛立ちにエルドに当たっていたということには気付かずに『自分が止めてさえいれば……』と、ものすごく責めていた。

 その五分後、近くを通りかかった魔族に腹を抱えて笑われたのは言うまでもない。










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