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一章 終わりから始まりへ

オリビアが無実だと思っていますか?

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 ドワーフ族の長が一番欲しいもの。

 それは、

「長、貴方に手土産があるのですが、必要ないでしょうか?」

 ドワーフ族の長に荷物から取り出したアイテムを見せる。

 それは、ドラゴンの鱗と牙。しかもかなり珍しいドラゴンのやつだ。

 鱗と牙は私が死刑の日、瞬間移動する直前になんとか取れた品物。

 私を喰おうとしたあのドラゴンのもの。

 処刑としてドラゴンに喰われる直前に黒い穴とドラゴンに当たった物体はアルベイルの魔法。

 ドワーフ族の長が処刑に使われるドラゴンの鱗と牙を欲しがっているのを知っていたから、事前にアルベイルに頼んでいた。

 それを見るなりドワーフ族のわ長は目の色を変えた。

「こ、これは……どうやって!!!?」
「詮索は無しです。それよりもオリビア・ペレスに頼まれていたことがありますよね」
「あ、あんた……あの子の知り合いか? あんな良い子、滅多に居ないのに死刑にするなんて、王族は酷いことするもんだ」

 ピクっとつい反応してしまったが、苦笑いを浮かべ頷いた。


 ーーーーーーーー

 場所を移し、くつろぎスペースのような部屋で待つこと三十分。

 ドワーフ族の長が部屋に入ってきて「どうぞ」と言ってテーブルの上に物を置いた。

 それは、スライムに似たゴーレムのようだ。

「こ、これは!!!」

『スライムに似た』ということはクリムが反応しそうだなと思ったら案の定、すぐに反応した。

 まさに、期待を裏切らないということはこの事なのかな。

 クリムが興味津々に『スライムに似た物』を見つめている。

 私は咳払いをした。クリムに一々突っ込んでいたら日が暮れそうだと思ったから。

「オリビアちゃんに言われた物だ。使い方は簡単。この魔導具と連動してある。起動すれば、勝手に動いてくれる」

 取り出したのは手のひらサイズで水色のキューブの見た目をしていた。

 ドワーフ族の長は手を動かしながらも説明してくれた。

 このスライムに似た物は日本でいうカメラのようなもの。そのキューブはカメラの映像を映し出し、更には人感センサーの機能もあり、人を感知すると追うように作られている。

 後は街中等にその映像を流すのだが……。

「……その他にも頼んだものがあるはずなのですが」
「大丈夫。なんとか完成した! ワシは天才だからな。なにせ、ドワーフ族の長だ。このぐらいの無茶ぶりに応えられなくて、長など名乗れん」

 鼻息を荒くして、乱暴にテーブルに置いた。

「ウサギ……?」

 これも造り物だろう。

 テーブルに置いた音がドカッっと、重いものでも置いたような鈍い音だった。

 ウサギはピコピコっと髭を動かしてキョロキョロと周りを見渡す。

「オリビアちゃんに頼まれていた『人が見ても絶対に怪しまれない』物だ。ウサギの赤い瞳から映像を映し出すことが出来るし、声も届かせることが出来る」
「この短期間で凄いです! これならなんとか」
「あんたは、オリビアちゃんの変わりに無念を晴らすつもりか?」

 私は手を胸の前で合わせて関心しているとドワーフ族の長が心配そうに聞いてきた。

「長は、わた……オリビアが無実だと思ってますか?」
「当然だ。あの子は人殺しなんか出来ない。優しい子だよ。ワシも出来ることなら協力する。いつでも頼ってくれ」
「……ありがとうございます」

 フードを深く被り、顔を見られないようにして、声も若干低めにした。

 そのおかげもあり、長は私がオリビア本人だと思っていない。

死を偽装したのに生きてるなんて知られたら、大変なことになるからね。

 ドワーフ村は魔王城と離れてるし、万が一、外部に漏れたら計画が台無しになる。

 だからこそ、味方だろうが生きてることを悟られないように気をつけなくちゃ。

 それならば何故、ドワーフ族の長にオリビアの話題を振ったのか。

 くれてるかどうかの確認だ。

 アイテムを渡したのは口止め料。

 ドラゴンの弁償の代わりにと渡したアイテムだけどドワーフ族の長はドラゴンの鱗と牙は珍しいので口止め料にもなるだろう。

 と、考えていたけど……、思っていた通りね。ドラゴンの鱗と牙を見せたら目の色を変えた。

 死んだはずのオリビアからの頼まれ事だと聞けば、感が働くと思ったのよ。

ハッキリと言葉にしなくても伝わってくれて良かった。

 



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