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一章 終わりから始まりへ
それは、かなり変わってるでしょうね
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ドワーフの村は、魔王城からはそこそこ離れており、徒歩だと10日はかかる距離だ。
そこで瞬間魔法を使う。
そう、私を死刑場から一瞬で魔王城まで瞬間移動させたあの魔法だ。
だが、ここで一つ問題がある。
「これは流石に……」
「なぜだ? 可愛いではないか!!!」
それはクリムの格好だった。
スライムをイメージしたフード。スライム好きなのは魔族全員が知っているとはいえ、流石にこれは無いだろうと呆れてしまう。
本人曰く、オリビアが着ないのならという理由で自分が着ていこうとしてる……らしい。
ちらりと、周りにいる五匹のゴブリンに視線を向けると、身体を強ばらせて焦りだしたかと思ったら慌てて説得をしだした。
私、そんなに怖いのかな……。普通だと思うんだけど、と内心複雑な気持ちになる。
ちなみに今居る場所は私が処刑場から瞬間移動してきた部屋。
この部屋だけ少し特別らしい。
瞬間移動は瞬時に移動するため、肉体が持たず、死亡してしまう確率が大きい。
肉体のダメージを極限まで抑えるために造られた部屋だそうだ。
どういう仕組みかは企業秘密とか言われて教えてくれなかったけど。
クリムはゴブリンの必死の説得により、渋々とフードを脱ぐ。
仮にも魔王があんな格好してるのを想像してみてください。可愛いし目が引くと思う。
そして好意を寄せた女性が言い寄って……って、違う!!!
私が言いたいのはそうじゃなくて、魔王様のイメージが崩れて不信感を抱く人がいるんじゃないかと思うのよ。
確かに魔族全員が知ってること。だけど、ここまで抜けてると分かったら絶対に何かしら思う人も増えるはずよ。
そのうち人間にも伝わるなんてことになったら、それを使い、追い込まれて魔族が全滅……なんてことも有り得る。
私の復讐前にそんなことになってしまったら何の為に死に戻りしたのか分からない。
フードを脱ぎ、丁寧に畳んでソファーに置いたクリムは私の方へと向いた。
真剣な眼差しを向けられてドキッと胸が高鳴る。
私は首を左右に振って、胸の高鳴りを誤魔化した。
ーー辛い恋になるのに、なんでクリムに恋をしてしまったんだろう。
クリムは私の髪の毛を溺愛している。それがほんの一時でも私自身に向けられれば良いのにと変な期待を抱いてしまう。
今は恋愛よりも復讐を確実なものにしたい。だから、この気持ちを必死に抑えてる。
告白しても振られるのはわかってるから、尚更ね。
「行くぞ」
「はい」
クリムが私の手を握ったのと同時に私とクリムがいる床に魔法陣が現れ、瞬きをした瞬間には別の場所にいた。
店内に入っていないというのにこのドワーフの村は油と水と鉄のにおいがし、汗ばむような熱を感じる。
背丈が低いドワーフたちは滅多に来ない来客の私とクリムを見るなり、怪訝そうな顔をして距離を置く。
ドワーフは魔族なのだが、他の魔族とはあまり交流を持たない。ましてや人間なら尚更だろう。
ドワーフの村に行くのは、冒険者と商工人ぐらいじゃないかしら。
私も初めてドワーフに依頼した時はかなり大変だった。
今は、ドワーフ族の長とは良い関係でいる。
「久しぶりに来たドワーフ村は随分と雰囲気が変わったな」
「そうなんですか?」
歩きながら、ぼそっと小声で話すクリムの声を私は聞き逃さない。
「五百年以上前に来て以来だ」
「あ……はい。それは、かなり変わってるでしょうね」
真剣に話しているクリムに私は苦笑した。
五百年も前なら変わっていて当然でしょうに。と、内心でツッコミを入れつつも歩みを進める。
「確か……あっ、ここね」
ドワーフの村は、同じ造りの建物が並び、ドワーフも見分けがつかない程にみんな同じ顔と服装や歩き方なので、目当ての建物を探すのに一苦労だ。
目当ての長の家は村の奥にあるので少しだけわかりやすい。
奥に向かえば向かうほど、建物の数が減っていくから。
そこで瞬間魔法を使う。
そう、私を死刑場から一瞬で魔王城まで瞬間移動させたあの魔法だ。
だが、ここで一つ問題がある。
「これは流石に……」
「なぜだ? 可愛いではないか!!!」
それはクリムの格好だった。
スライムをイメージしたフード。スライム好きなのは魔族全員が知っているとはいえ、流石にこれは無いだろうと呆れてしまう。
本人曰く、オリビアが着ないのならという理由で自分が着ていこうとしてる……らしい。
ちらりと、周りにいる五匹のゴブリンに視線を向けると、身体を強ばらせて焦りだしたかと思ったら慌てて説得をしだした。
私、そんなに怖いのかな……。普通だと思うんだけど、と内心複雑な気持ちになる。
ちなみに今居る場所は私が処刑場から瞬間移動してきた部屋。
この部屋だけ少し特別らしい。
瞬間移動は瞬時に移動するため、肉体が持たず、死亡してしまう確率が大きい。
肉体のダメージを極限まで抑えるために造られた部屋だそうだ。
どういう仕組みかは企業秘密とか言われて教えてくれなかったけど。
クリムはゴブリンの必死の説得により、渋々とフードを脱ぐ。
仮にも魔王があんな格好してるのを想像してみてください。可愛いし目が引くと思う。
そして好意を寄せた女性が言い寄って……って、違う!!!
私が言いたいのはそうじゃなくて、魔王様のイメージが崩れて不信感を抱く人がいるんじゃないかと思うのよ。
確かに魔族全員が知ってること。だけど、ここまで抜けてると分かったら絶対に何かしら思う人も増えるはずよ。
そのうち人間にも伝わるなんてことになったら、それを使い、追い込まれて魔族が全滅……なんてことも有り得る。
私の復讐前にそんなことになってしまったら何の為に死に戻りしたのか分からない。
フードを脱ぎ、丁寧に畳んでソファーに置いたクリムは私の方へと向いた。
真剣な眼差しを向けられてドキッと胸が高鳴る。
私は首を左右に振って、胸の高鳴りを誤魔化した。
ーー辛い恋になるのに、なんでクリムに恋をしてしまったんだろう。
クリムは私の髪の毛を溺愛している。それがほんの一時でも私自身に向けられれば良いのにと変な期待を抱いてしまう。
今は恋愛よりも復讐を確実なものにしたい。だから、この気持ちを必死に抑えてる。
告白しても振られるのはわかってるから、尚更ね。
「行くぞ」
「はい」
クリムが私の手を握ったのと同時に私とクリムがいる床に魔法陣が現れ、瞬きをした瞬間には別の場所にいた。
店内に入っていないというのにこのドワーフの村は油と水と鉄のにおいがし、汗ばむような熱を感じる。
背丈が低いドワーフたちは滅多に来ない来客の私とクリムを見るなり、怪訝そうな顔をして距離を置く。
ドワーフは魔族なのだが、他の魔族とはあまり交流を持たない。ましてや人間なら尚更だろう。
ドワーフの村に行くのは、冒険者と商工人ぐらいじゃないかしら。
私も初めてドワーフに依頼した時はかなり大変だった。
今は、ドワーフ族の長とは良い関係でいる。
「久しぶりに来たドワーフ村は随分と雰囲気が変わったな」
「そうなんですか?」
歩きながら、ぼそっと小声で話すクリムの声を私は聞き逃さない。
「五百年以上前に来て以来だ」
「あ……はい。それは、かなり変わってるでしょうね」
真剣に話しているクリムに私は苦笑した。
五百年も前なら変わっていて当然でしょうに。と、内心でツッコミを入れつつも歩みを進める。
「確か……あっ、ここね」
ドワーフの村は、同じ造りの建物が並び、ドワーフも見分けがつかない程にみんな同じ顔と服装や歩き方なので、目当ての建物を探すのに一苦労だ。
目当ての長の家は村の奥にあるので少しだけわかりやすい。
奥に向かえば向かうほど、建物の数が減っていくから。
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