上 下
178 / 198
第十七章 三作品目のヒロインの想い人

僕は最低な人間です【ノエル視点】

しおりを挟む
 僕は、人としてやっていはいけないことをしてしまいました。

 一人、自室のベッドで仰向けになり、手の甲を目元に当て深いため息をつく。

 怒りたくはなかった。寧ろ、悲しくてとても寂しかった。

 僕はいつもそうだ。姉上を守りたいと思うのに、見守ることしか出来ない自分がとても惨めで情けない。

 姉上は言葉にしなくても影で色々な葛藤をしてるのをなんとなく理解している。

 僕は頼りないから姉上は話してくれないんだと、か弱い姉上が自分で決断しているのに、僕はどうなんだろうってずっと思ってた。

 でも姉上が言わないなら、僕は見守ろうと……。でも、本当はわかってたはずなんです。

 姉上はか弱くなんてないことを。頼ってほしいと願っているのに、心の奥底では見守りたい自分がいる。

 第三者からすれば『優しさ』からだと思う人達が多いと思う。

 違うんです。僕は……『守りたい』という決意が無いんです。言葉だけなんです。

 見守ると決めたのは僕ですが、それでも不満はありますし、だからといって、相談されてもちゃんと姉上の力になれるか分からない。

 姉上の周りには助けてくれる人達がいます。それを考えてしまうと、自分なんて……居なくても良いんじゃないかなって不安になるんです。

 姉上のために家を離れ、剣術を教えて貰うためにクリスタ家に行ったというのに。それも全部無駄だったんじゃないかって……そう思うととても悲しい。

 それを言ってしまえば姉上はきっと困った顔をする。僕は姉上の困った顔を見たいわけじゃない。ずっと笑顔でいてほしいんです。

 だからずっと、黒い感情をしまいこんでいたんです。

 それなのに、感情が上手くコントロール出来なくなって子供みたいに怒ってしまった。

 僕は最低な人間です。

 コンコンっと扉を叩く音が聞こえる。姉上の声も聞こえてきたけど、今は会いたくないし、話したくもないから無視した。

 しばらくしてから、静かになったので諦めてくれたんだと思っていたら、扉からガタッと音がした。

 その後、「……あっ」と、姉上の苦しそうだけど気持ち良さそうに言葉を発している声が聞こえ、僕は飛び起きた。

 何が起こってるんでしょうと、考えを巡らせると途端に恥ずかしくなった。

 令嬢と騎士で、身分差がありすぎる。……姉上、押しに弱そうだし、もし押し負けして流されてしまったら……。

 そう考えると恐怖した。止めないと!!! と、勢いよく扉を開ける。

 僕は扉の近くにいる姉上の肩を抱き、自分の方に引き寄せたた。

「何をやっているんですか!?」

 怒り任せに僕は護衛騎士のキースさんを睨む。

 キースさんはこれ以上手を出さないとでも言うように手を前に出した。

「何って、肩もみ」
「わかり易い嘘つかないでください。そんなわけ」
「ノエル、それ……本当なの」

 あまりにもふてぶてしい態度にさらに腹を立てたのだが、姉上が『肩もみ』に同意したので、本当のことなんだなと理解した。

 僕の考えは間違っていた訳で……。恥ずかしくなって口元を抑えた。





しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【1/1取り下げ予定】妹なのに氷属性のお義兄様からなぜか溺愛されてます(旧題 本当の妹だと言われても、お義兄様は渡したくありません!)

gacchi
恋愛
事情があって公爵家に養女として引き取られたシルフィーネ。生まれが子爵家ということで見下されることも多いが、公爵家には優しく迎え入れられている。特に義兄のジルバードがいるから公爵令嬢にふさわしくなろうと頑張ってこれた。学園に入学する日、お義兄様と一緒に馬車から降りると、実の妹だというミーナがあらわれた。「初めまして!お兄様!」その日からジルバードに大事にされるのは本当の妹の私のはずだ、どうして私の邪魔をするのと、何もしていないのにミーナに責められることになるのだが…。電子書籍化のため、1/1取り下げ予定です。1/2エンジェライト文庫より電子書籍化します。

義母ですが、若返って15歳から人生やり直したらなぜか溺愛されてます

富士とまと
恋愛
25歳で行き遅れとして実家の伯爵家を追い出されるように、父親より3つ年上の辺境伯に後妻として嫁がされました。 5歳の義息子と3歳の義娘の面倒を見て12年が過ぎ、二人の子供も成人して義母としての役割も終わったときに、亡き夫の形見として「若返りの薬」を渡されました。 15歳からの人生やり直し?義娘と同級生として王立学園へ通うことに。 初めての学校、はじめての社交界、はじめての……。 よし、学園で義娘と義息子のよきパートナー探しのお手伝いをしますよ!お義母様に任せてください!

婚約破棄されたので王子様を憎むけど息子が可愛すぎて何がいけない?

tartan321
恋愛
「君との婚約を破棄する!!!!」 「ええ、どうぞ。そのかわり、私の大切な子供は引き取りますので……」 子供を溺愛する母親令嬢の物語です。明日に完結します。

ヒロインのシスコンお兄様は、悪役令嬢を溺愛してはいけません!

あきのみどり
恋愛
【ヒロイン溺愛のシスコンお兄様(予定)×悪役令嬢(予定)】 小説の悪役令嬢に転生した令嬢グステルは、自分がいずれヒロインを陥れ、失敗し、獄死する運命であることを知っていた。 その運命から逃れるべく、九つの時に家出して平穏に生きていたが。 ある日彼女のもとへ、その運命に引き戻そうとする青年がやってきた。 その青年が、ヒロインを溺愛する彼女の兄、自分の天敵たる男だと知りグステルは怯えるが、彼はなぜかグステルにぜんぜん冷たくない。それどころか彼女のもとへ日参し、大事なはずの妹も蔑ろにしはじめて──。 優しいはずのヒロインにもひがまれ、さらに実家にはグステルの偽者も現れて物語は次第に思ってもみなかった方向へ。 運命を変えようとした悪役令嬢予定者グステルと、そんな彼女にうっかりシスコンの運命を変えられてしまった次期侯爵の想定外ラブコメ。 ※話数は多いですが、1話1話は短め。ちょこちょこ更新中です! ●3月9日19時 37の続きのエピソードを一つ飛ばしてしまっていたので、38話目を追加し、38話として投稿していた『ラーラ・ハンナバルト①』を『39』として投稿し直しましたm(_ _)m なろうさんにも同作品を投稿中です。

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~

あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。 「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?

【完結】僻地の修道院に入りたいので、断罪の場にしれーっと混ざってみました。

櫻野くるみ
恋愛
王太子による独裁で、貴族が息を潜めながら生きているある日。 夜会で王太子が勝手な言いがかりだけで3人の令嬢達に断罪を始めた。 ひっそりと空気になっていたテレサだったが、ふと気付く。 あれ?これって修道院に入れるチャンスなんじゃ? 子爵令嬢のテレサは、神父をしている初恋の相手の元へ行ける絶好の機会だととっさに考え、しれーっと断罪の列に加わり叫んだ。 「わたくしが代表して修道院へ参ります!」 野次馬から急に現れたテレサに、その場の全員が思った。 この娘、誰!? 王太子による恐怖政治の中、地味に生きてきた子爵令嬢のテレサが、初恋の元伯爵令息に会いたい一心で断罪劇に飛び込むお話。 主人公は猫を被っているだけでお転婆です。 完結しました。 小説家になろう様にも投稿しています。

ざまぁはハッピーエンドのエンディング後に

ララ
恋愛
私は由緒正しい公爵家に生まれたシルビア。 幼い頃に結ばれた婚約により時期王妃になることが確定している。 だからこそ王妃教育も精一杯受け、王妃にふさわしい振る舞いと能力を身につけた。 特に婚約者である王太子は少し?いやかなり頭が足りないのだ。 余計に私が頑張らなければならない。 王妃となり国を支える。 そんな確定した未来であったはずなのにある日突然破られた。 学園にピンク色の髪を持つ少女が現れたからだ。 なんとその子は自身をヒロイン?だとか言って婚約者のいるしかも王族である王太子に馴れ馴れしく接してきた。 何度かそれを諌めるも聞く耳を持たず挙句の果てには私がいじめてくるだなんだ言って王太子に泣きついた。 なんと王太子は彼女の言葉を全て鵜呑みにして私を悪女に仕立て上げ国外追放をいい渡す。 はぁ〜、一体誰の悪知恵なんだか? まぁいいわ。 国外追放喜んでお受けいたします。 けれどどうかお忘れにならないでくださいな? 全ての責はあなたにあると言うことを。 後悔しても知りませんわよ。 そう言い残して私は毅然とした態度で、内心ルンルンとこの国を去る。 ふふっ、これからが楽しみだわ。

処理中です...