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「“だけどね。”」
魔神が言う。
「“頭のいかれた戦闘狂は、この世界にもいるんだよ。”」
「だが、弱いのだろう?」
フィオニスが返す。
「“あぁ、弱いとも。彼本人は。”」
含ませるような言葉に、フィオニスは片眉を上げる。
「“この世界の人間はずる賢い。自分で戦わなくてもいい方法を編み出したんだ。”」
「兵器か。」
「“ご名答。”」
フィオニスは深くため息を吐いた。
「その威力は?」
「“そうだねぇ‥”」
魔神はフィオニス、ディルムッド、マリアと舐めるようにカメラを流す。
「“マリアでは厳しい。ディルムッドならば、同時に3体までは相手にできよう。”」
「ニコラスやミシェルは?」
「“1体を2人がかりならば。何せ、兵器は殆どがドワーフ製。しかも遥か昔、彼らがまだ確かな技術と腕を持っていた時代の代物だ。”」
魔神が言うには、いまだ力を持つ国々は古代兵器と呼ばれるドワーフ製の武器を所持しているのだという。まだドワーフ族が堕落せず、確かな腕と技術を持っていた時代。この世界がもっとも繁栄していて、もっとも争いの絶えない時代の代物だと魔神は語った。
多くは無理な稼働を繰り返した所為で壊れてしまったが、その中でも耐久性の高いものがいまだに世界のあちこちに眠っているのだという。
「戦闘狂とは名ばかりのただの殺戮者ではないか。」
フィオニスが呆れたようにそう落とせば、魔神は肩をすくめるようにゆらりと揺れた。
「ならば、私がここに残ろう。ディルムッドとジークフリード。それとミシェルかマリアを狩猟組に加えるといい。」
「よろしいので?」
ディルムッドが問う。
「あぁ。この辺りの散策など、いつでもできる。私は魔族の補充と軍備の強化でも行っていよう。」
「“帝国の勇者はどうするんだい?”」
魔神が問う。
「ひとまずは放置だ。というか、なぜ魔王であるこの私が勇者を助けねばならんのだ。」
その言葉に、ビクリとシリウスの肩が震えた。その姿を目の端に捉えてフィオニスはため息をつく。
「今更だがな。」
そう言ってフィオニスはぐしゃりと少々乱暴にシリウスの髪をかきまぜた。
「‥‥彼の勇者は、耐えられそうか?」
フィオニスは魔神へと問う。
すると魔神は、クスリと意味ありげに笑みをこぼしてみせた。
「“あぁ。今はまだ、ね。”」
魔神が答える。
今はまだ耐えている。が、魔神の様子を見るに、時間はあまり多くはなさそうだ。フィオニスは幾度めかのため息をはいた。
魔族たちが狩りに出ている間に、フィオニスは街の防衛を強化した。
城から街。開拓予定地の森。その森から少し行ったその先の湖までを巨大な城壁でぐるりと囲む。丸く囲んだ城壁には複数の小規模な砦を築き上げた。それぞれの対角線上にある4つの巨大な入口は、鋼鉄製の門で塞ぐ。城壁内のレバーで開閉する仕組みだ。またその門とは別に、人が簡単に出入り出来るよう、小さな扉も忘れずに備え付けておく。ここには見張りのゴーレムでも配置するつもりだ。
「“見事なものだ。”」
魔神が言う。
「まぁ、これくらいはな。」
「“この周辺に君と渡り合える国はない。十分ではないかな?”」
魔神のお墨付きをもらい、フィオニスは苦笑する。さらにこの街は、強大な魔物が闊歩する魔の森の奥深くに築かれている。
たどり着くだけでも、至難の業だ。逆に言えば、ここにたどり着けるというだけで、かなりの実力者ということでもあるのだが。
魔族は新たに15名増やした。
戦闘に長けた者を10名。その他特殊な技能に優れたものを5名。これで魔族は計21名となる。これで半端な輩は手を出す事は出来ないだろう。
また人数を増やしたおかげで、シフト制を導入することが出来る。魔族と言えど、疲労は溜まる。もちろんストレスも。
娯楽など皆無だが、休息ぐらいは必要だろう。
また木っ端の配下として、魂のない魔物を召喚した。ウルフ型の魔物に、鳥類型の魔物。ゴーレムやデュラハンといった、物質系の魔物など全部で数百体に及ぶ。
彼らはフィオニス、及び魔族の命令に絶対服従だ。その身が砕けようとも、与えられた命令を遂行しようとするだろう。
命を雑に扱っている気がして忌避感を感じたが、魔神曰く所詮は人形。魂を持たない以上、フィオニスの一部にすぎないのだという。
それに今はまだそういった事態が起こる事は到底ない。ならば良き隣人として、街を守って貰うとしよう。
魔神が言う。
「“頭のいかれた戦闘狂は、この世界にもいるんだよ。”」
「だが、弱いのだろう?」
フィオニスが返す。
「“あぁ、弱いとも。彼本人は。”」
含ませるような言葉に、フィオニスは片眉を上げる。
「“この世界の人間はずる賢い。自分で戦わなくてもいい方法を編み出したんだ。”」
「兵器か。」
「“ご名答。”」
フィオニスは深くため息を吐いた。
「その威力は?」
「“そうだねぇ‥”」
魔神はフィオニス、ディルムッド、マリアと舐めるようにカメラを流す。
「“マリアでは厳しい。ディルムッドならば、同時に3体までは相手にできよう。”」
「ニコラスやミシェルは?」
「“1体を2人がかりならば。何せ、兵器は殆どがドワーフ製。しかも遥か昔、彼らがまだ確かな技術と腕を持っていた時代の代物だ。”」
魔神が言うには、いまだ力を持つ国々は古代兵器と呼ばれるドワーフ製の武器を所持しているのだという。まだドワーフ族が堕落せず、確かな腕と技術を持っていた時代。この世界がもっとも繁栄していて、もっとも争いの絶えない時代の代物だと魔神は語った。
多くは無理な稼働を繰り返した所為で壊れてしまったが、その中でも耐久性の高いものがいまだに世界のあちこちに眠っているのだという。
「戦闘狂とは名ばかりのただの殺戮者ではないか。」
フィオニスが呆れたようにそう落とせば、魔神は肩をすくめるようにゆらりと揺れた。
「ならば、私がここに残ろう。ディルムッドとジークフリード。それとミシェルかマリアを狩猟組に加えるといい。」
「よろしいので?」
ディルムッドが問う。
「あぁ。この辺りの散策など、いつでもできる。私は魔族の補充と軍備の強化でも行っていよう。」
「“帝国の勇者はどうするんだい?”」
魔神が問う。
「ひとまずは放置だ。というか、なぜ魔王であるこの私が勇者を助けねばならんのだ。」
その言葉に、ビクリとシリウスの肩が震えた。その姿を目の端に捉えてフィオニスはため息をつく。
「今更だがな。」
そう言ってフィオニスはぐしゃりと少々乱暴にシリウスの髪をかきまぜた。
「‥‥彼の勇者は、耐えられそうか?」
フィオニスは魔神へと問う。
すると魔神は、クスリと意味ありげに笑みをこぼしてみせた。
「“あぁ。今はまだ、ね。”」
魔神が答える。
今はまだ耐えている。が、魔神の様子を見るに、時間はあまり多くはなさそうだ。フィオニスは幾度めかのため息をはいた。
魔族たちが狩りに出ている間に、フィオニスは街の防衛を強化した。
城から街。開拓予定地の森。その森から少し行ったその先の湖までを巨大な城壁でぐるりと囲む。丸く囲んだ城壁には複数の小規模な砦を築き上げた。それぞれの対角線上にある4つの巨大な入口は、鋼鉄製の門で塞ぐ。城壁内のレバーで開閉する仕組みだ。またその門とは別に、人が簡単に出入り出来るよう、小さな扉も忘れずに備え付けておく。ここには見張りのゴーレムでも配置するつもりだ。
「“見事なものだ。”」
魔神が言う。
「まぁ、これくらいはな。」
「“この周辺に君と渡り合える国はない。十分ではないかな?”」
魔神のお墨付きをもらい、フィオニスは苦笑する。さらにこの街は、強大な魔物が闊歩する魔の森の奥深くに築かれている。
たどり着くだけでも、至難の業だ。逆に言えば、ここにたどり着けるというだけで、かなりの実力者ということでもあるのだが。
魔族は新たに15名増やした。
戦闘に長けた者を10名。その他特殊な技能に優れたものを5名。これで魔族は計21名となる。これで半端な輩は手を出す事は出来ないだろう。
また人数を増やしたおかげで、シフト制を導入することが出来る。魔族と言えど、疲労は溜まる。もちろんストレスも。
娯楽など皆無だが、休息ぐらいは必要だろう。
また木っ端の配下として、魂のない魔物を召喚した。ウルフ型の魔物に、鳥類型の魔物。ゴーレムやデュラハンといった、物質系の魔物など全部で数百体に及ぶ。
彼らはフィオニス、及び魔族の命令に絶対服従だ。その身が砕けようとも、与えられた命令を遂行しようとするだろう。
命を雑に扱っている気がして忌避感を感じたが、魔神曰く所詮は人形。魂を持たない以上、フィオニスの一部にすぎないのだという。
それに今はまだそういった事態が起こる事は到底ない。ならば良き隣人として、街を守って貰うとしよう。
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