この世界と引き換えに愛を乞う

seto

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授業が終わり、カロクがいつもの様に帰り支度をしていると、エルネストから声をかけられた。

「カロク、ちょっといいかな?」

その言葉にカロクがツイっと視線をあげると、エルネストはいつものメンバーの他に1人の女子生徒を連れていた。
ミルクティベージュの髪に若草色の瞳をした可愛らしい女子生徒で、その女子生徒はカロクを目にした瞬間あっ、と驚きの声をあげた。

「あなたはあの時の!!」
「おや、知り合いかい?」

エルネストが問う。
しかしそんな女子生徒の姿にカロクは、コトリと首を傾げた。

「どこかで会った事があったかな‥?」

そう言って、覚えていない振りをする。
だがカロクはその女子生徒をよく覚えていた。ロジーナ=ドレヴェスモブ。この間カロクにぶつかってきた女子生徒だ。

「あの時廊下でぶつかってしまったドレヴェスモブです!! 良かった、あの後心配していたんです!!」

そう言ってロジーナは朗らかに笑った。
たかが廊下でぶつかった程度でよく覚えているな、とカロクは内心毒づいた。チラリと視線をカーナへと流せば、カーナは顔色を悪くしながらこちらを伺っているようだ。

「あぁ、あの時の。別に構わないよ。」

カロクは淡々と返す。
しかしそんなカロクの言葉に動じることなく、ロジーナはホッとしたように微笑んだ。

「それなら良かった。でもまさかエルネスト様と同じクラスだなんて。道理であまり会わないはずね。」

そう言ってロジーナは笑う。
するとその会話を聞いていたクラスメイトが、僅かにざわめいた。カロクも思わず目尻をすがめながらエルネストへと視線を流す。

「‥‥エルネスト殿下?」
「あぁ、大丈夫だよ。ロジーナにはその名を許している。」

エルネストがそういうと、ロジーナは嬉しそうに笑った。逆にそれを聞いていたカーナは、可哀想なくらい顔色を真っ青に染めていた。

「改めまして、私はロジーナ。ロジーナ=ドレヴェスモブよ。気軽にロジーナと呼んで欲しいわ。」
「‥‥私はカロク=エインズワース。よろしく、ドレヴェスモブ嬢。」

カロクはあくまでも家名でロジーナを呼んだ。内心よろしくしたくない気持ちでいっぱいだが、今はエルネストの手前もある。そのため仕方なくそう自己紹介をすると、ロジーナはパッと明るく笑ってカロクの手をなかば強引に取った。

「えぇよろしくね、カロク様。」

本当は名前で呼んで欲しかったけど、と少し口を尖らせながらロジーナは、握手というには少し違和感のある握り方でカロクの指先に自らの指先を絡めて笑った。
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