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その時、サイラスはカロクのその耳が真っ赤に染まっている事に気がついた。どうやら途中で目を覚ましたらしい。
サイラスはふむ、と少し考えてから、再度チュッと軽くカロクの唇を奪った。するとビクリとその肩が震える。
しかしそれでも瞳を開かぬ様子に、サイラスはニヤリと笑みを歪めた。
「‥いいのか?抵抗しないで。」
フッとカロクの耳に息を吹き込む。
そのまま外耳を弄ぶように歯を立てれば、フルリとカロクの肌が震えた。
「食っちまうぞ‥?」
「‥‥っ!!」
そう落としながら耳の形をなぞるようにべロリと舌を這わせれば、ビクンッと大きく体を跳ねさせたカロクが慌ててサイラスの唇を両手で塞いだ。
「な、なん‥‥っ!!」
頬を真っ赤に紅潮させて狼狽えるカロクに、サイラスは意地悪く笑みを広げる。
「誰かさんが狸寝入りなんかしているからだ。」
クックッとサイラスは喉の奥で笑った。
「で‥? 何処から聞いていた?」
サイラスが問う。
するとカロクは逃げるように視線を流しながら、おずおずとその手を引いた。そのままサイラスから離れようと体を引くも、それ以上に詰められ、とうとうソファーの端へと追い詰められてしまう。
「ぇ、と‥‥」
躊躇うカロクに、サイラスがん?と小首を傾げながらその顔を覗き込む。追い詰められた先でさらにジリジリと距離を詰められれば、ますますカロクの頬が赤く染った。
答えるまで引かないといったサイラスの様子に、カロクは観念したように口を開いた。
「その‥‥、俺が、貰っても‥‥の、所‥から‥‥?」
「‥上出来だ。」
そう言って、フッとサイラスは満足したように微笑んだ。
「それで‥?」
サイラスが問う。
続く言葉に、カロクは首を傾げた。
「返事は貰えないのか?」
分かっていないカロクに、ククッと喉の奥で笑いながら再度問うと、一拍置いてからビャッとカロクは赤く染った。
「そ、れは‥‥その‥っ」
「嫌ってはいないよな?」
サイラスが追い打ちをかければ、カロクはおずおずと頷いた。
だがカロクが返事を躊躇うのには理由があった。前世の乙女ゲームの記憶だ。
まだ起きていない未来。もちろんカロクは回避するつもりだが、強制力が働かないとも限らない。
それにもし、主人公がサイラスを攻略しようとしたら。そう考えるだけで、カロクの心はソワソワと落ち着かなくなる。
サイラスは本編では攻略対象ではない。だが、追加ディスクにその姿絵が載っていたはずだ。
心を通わせた上で奪われてしまえば、今度こそ魔王へ堕ちる自信がカロクにはあった。
そんなカロクの様子に、フゥとサイラスは一息つくとそのまま頭を撫でた。
「悩ませたな。忘れてくれてもいいぞ。」
そう言ってサイラスがいつもの笑みを浮かべれば、カロクはシュンと眉尻を下げた。
このまま何も言わなければ、サイラスはいつもの距離感に戻ってしまうのだろう。必要以上に連絡せず、顔も合わせない。それを考えると、カロクの胸はキュッと狭くなった。
「サイラス、様‥。」
おずおずとカロクが口を開く。
するとサイラスはその視線だけで先を促してくれた。
「その、嫌では‥‥ないんです‥。でも‥」
「でも‥?」
カロクは躊躇いがちに、騎士服の袖口を握った。
「サイラス様、モテるじゃないですか‥。僕なんかよりいい人がー‥」
「ははっ!!」
カロクの言葉を最後まで聞く前に、サイラスが声をあげて笑った。
「誰もそばに置く気がなかったから、独身だったんだぞ? 今更お前以上の存在に出会える気などしないな。」
「でも‥‥」
「それにな、カロク。お前は俺に最後を願っただろう? 当然俺はそれを叶える気でいる。」
続く言葉に、パチリとカロクはまつ毛をはためかせた。最初に出会った時に、確かにカロクはそう願った。サイラスも、それを承諾した。だがそれは、その場限りの約束ではなかったのだろうか。
そもそもその約束を覚えてくれていた事に、カロクの胸が震えた。
「なら、共にいる方が何かと都合がいいだろう? それが恋人や夫婦と言った形でも、問題はないと思わないか?」
「サイラス様‥」
「でもまぁ、お前がどうしても嫌だと言うのなら手放してやるが。」
「そんな事‥っ」
思わず返した言葉に、サイラスはニヤリと笑みを拡げた。
「観念しろ、カロク。オーヴァンには上手く言ってやるから。」
その言葉に、カロクの胸がじわりと暖かくなった。そのままサイラスの胸にポスッと頭を埋めれば、大きな手が背中へと回った。
「サイラス様‥」
カロクが同じようにサイラスの背に手を回しながら口を開く。
「その、そばに‥‥いて、下さい‥」
「‥あぁ、もちろんだ。」
そう言ってサイラスは、カロクの唇を塞いだ。
サイラスはふむ、と少し考えてから、再度チュッと軽くカロクの唇を奪った。するとビクリとその肩が震える。
しかしそれでも瞳を開かぬ様子に、サイラスはニヤリと笑みを歪めた。
「‥いいのか?抵抗しないで。」
フッとカロクの耳に息を吹き込む。
そのまま外耳を弄ぶように歯を立てれば、フルリとカロクの肌が震えた。
「食っちまうぞ‥?」
「‥‥っ!!」
そう落としながら耳の形をなぞるようにべロリと舌を這わせれば、ビクンッと大きく体を跳ねさせたカロクが慌ててサイラスの唇を両手で塞いだ。
「な、なん‥‥っ!!」
頬を真っ赤に紅潮させて狼狽えるカロクに、サイラスは意地悪く笑みを広げる。
「誰かさんが狸寝入りなんかしているからだ。」
クックッとサイラスは喉の奥で笑った。
「で‥? 何処から聞いていた?」
サイラスが問う。
するとカロクは逃げるように視線を流しながら、おずおずとその手を引いた。そのままサイラスから離れようと体を引くも、それ以上に詰められ、とうとうソファーの端へと追い詰められてしまう。
「ぇ、と‥‥」
躊躇うカロクに、サイラスがん?と小首を傾げながらその顔を覗き込む。追い詰められた先でさらにジリジリと距離を詰められれば、ますますカロクの頬が赤く染った。
答えるまで引かないといったサイラスの様子に、カロクは観念したように口を開いた。
「その‥‥、俺が、貰っても‥‥の、所‥から‥‥?」
「‥上出来だ。」
そう言って、フッとサイラスは満足したように微笑んだ。
「それで‥?」
サイラスが問う。
続く言葉に、カロクは首を傾げた。
「返事は貰えないのか?」
分かっていないカロクに、ククッと喉の奥で笑いながら再度問うと、一拍置いてからビャッとカロクは赤く染った。
「そ、れは‥‥その‥っ」
「嫌ってはいないよな?」
サイラスが追い打ちをかければ、カロクはおずおずと頷いた。
だがカロクが返事を躊躇うのには理由があった。前世の乙女ゲームの記憶だ。
まだ起きていない未来。もちろんカロクは回避するつもりだが、強制力が働かないとも限らない。
それにもし、主人公がサイラスを攻略しようとしたら。そう考えるだけで、カロクの心はソワソワと落ち着かなくなる。
サイラスは本編では攻略対象ではない。だが、追加ディスクにその姿絵が載っていたはずだ。
心を通わせた上で奪われてしまえば、今度こそ魔王へ堕ちる自信がカロクにはあった。
そんなカロクの様子に、フゥとサイラスは一息つくとそのまま頭を撫でた。
「悩ませたな。忘れてくれてもいいぞ。」
そう言ってサイラスがいつもの笑みを浮かべれば、カロクはシュンと眉尻を下げた。
このまま何も言わなければ、サイラスはいつもの距離感に戻ってしまうのだろう。必要以上に連絡せず、顔も合わせない。それを考えると、カロクの胸はキュッと狭くなった。
「サイラス、様‥。」
おずおずとカロクが口を開く。
するとサイラスはその視線だけで先を促してくれた。
「その、嫌では‥‥ないんです‥。でも‥」
「でも‥?」
カロクは躊躇いがちに、騎士服の袖口を握った。
「サイラス様、モテるじゃないですか‥。僕なんかよりいい人がー‥」
「ははっ!!」
カロクの言葉を最後まで聞く前に、サイラスが声をあげて笑った。
「誰もそばに置く気がなかったから、独身だったんだぞ? 今更お前以上の存在に出会える気などしないな。」
「でも‥‥」
「それにな、カロク。お前は俺に最後を願っただろう? 当然俺はそれを叶える気でいる。」
続く言葉に、パチリとカロクはまつ毛をはためかせた。最初に出会った時に、確かにカロクはそう願った。サイラスも、それを承諾した。だがそれは、その場限りの約束ではなかったのだろうか。
そもそもその約束を覚えてくれていた事に、カロクの胸が震えた。
「なら、共にいる方が何かと都合がいいだろう? それが恋人や夫婦と言った形でも、問題はないと思わないか?」
「サイラス様‥」
「でもまぁ、お前がどうしても嫌だと言うのなら手放してやるが。」
「そんな事‥っ」
思わず返した言葉に、サイラスはニヤリと笑みを拡げた。
「観念しろ、カロク。オーヴァンには上手く言ってやるから。」
その言葉に、カロクの胸がじわりと暖かくなった。そのままサイラスの胸にポスッと頭を埋めれば、大きな手が背中へと回った。
「サイラス様‥」
カロクが同じようにサイラスの背に手を回しながら口を開く。
「その、そばに‥‥いて、下さい‥」
「‥あぁ、もちろんだ。」
そう言ってサイラスは、カロクの唇を塞いだ。
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