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それから戦争が集結するまで、数年もかからなかった。最後まで公族は抵抗したが、魔獣にやられて疲弊した中、無傷の帝国軍を退ける力など残っていなかった。
ゲームの通り、武功をあげたのはサイラスで、騎士団長に昇格する事が決まっている。
また戦争が終結すると同時に、魔王の器について各国の上層部に公表された。公国の被害状況もあり、器の存在は実在するものとして認知されたが、その処遇については未だに議論が交わされていると言う。もちろんカロクの名を伏せての公表だったが、時間の問題だとオーヴァンは語った。
双子の侍従は目を覚ました次の日に屋敷を出た。己の力不足を痛感し、自ら王宮の暗部へと志願したと言う。オーヴァンもそれを許可し、今は王都の何処かで任務に当たっているだろうとの事だった。
そしてカロクはというと、ローレンスの死から、より人を遠ざけるようになってしまっていた。
またあの日のカロクを目にしてしまった使用人や騎士達も、積極的にカロクに近づこうとはしない。もちろん箝口令は敷いたが、まるで腫れ物に触るかのごとき扱いだ。
家庭教師は再開したが、8歳から入学が認められている小学部には入学する事はなかった。これはオーヴァンとアシュクロフトの間で取り決められた事だったが、今のカロクにはありがたかった。
戦後もサイラスからの接触はなく、またカロクからも連絡を取ろうとはしなかった。距離を置い方がいいと、互いに理解していたようだ。
そうして月日がたち、カロクは15歳になった。
来年、カロクは王立の高等学部に入学する事が決まっている。ゲームの中と同じように。
それに向け、まずは社交界へお披露目をしなければならなかった。
本来社交界デビューは12歳前後で行われる事が多い。だがカロクは、魔王の器という事、またローレンスの死から塞ぎ込むことも多かった為、見送られたのだ。
カロクとしてはこのままデビューしなくても構わないと考えていたが、さすがに高等部へ入学するにあたり、顔見せ程度はしておかなくてはならないらしい。
今日はその初めての日だ。王宮主催のガーデンパーティーらしい。
付き添いには2人の兄がついてきてくれている。
「いいか、カロク。もし何か嫌味を言われたり、無理に言い寄られたりしたらすぐに私かクラウスに言うんだぞ。」
シリルが言う。
2人の兄との仲は未だ良好だ。ローレンスの一件以来、深まったと言ってもいい。
「ありがとう、シリル兄さん。」
フッとカロクが笑みを浮かべると、横からワシッと頭を掴まれる。
「気に入らないやつがいれば、殴り倒してもいい。むしろ俺が殴ってやるから教えろ。」
そう言ってクラウスは大きな手で軽くカロクの髪をかき混ぜる。そのぶっきらぼうないい方に、フッとカロクは頬を緩める。
「ふふ、クラウス兄さんも。大丈夫、上手くやるよ。」
カロクはそう言って穏やかに笑う。
貴族の子供は社交デビューを果たすと同時にその家の名を背負う事になる。故にそこまで好き勝手振る舞う者は少ない。あくまでも少ないのであって、全くいないという訳ではないのだが。
カロクはゲームと同じように、見目麗しい青年へと成長を遂げた。冷たく見えるシリルや、勝気な印象を与えるクラウスとは違う柔らかな雰囲気を持つ美青年へと。
ゲームの中ではもう少しナンパな雰囲気を醸し出していたが、今のカロクには当てはまらない。またゲームとは違い、体も程々に鍛えていたので、線が細すぎるということも無く均整のとれた体つきをしている。
少しでもゲームの中のカロクとは別のものになろうとした結果だ。
ガーデンパーティーは、入場の際のコールがない。自由に出入りできる、緩めのティーパーティーだ。
「準備はいいか?」
シリルが問う。
「うん、大丈夫。」
そう言ってカロクがよそ行きの笑みを浮かべると、シリルが前に立ち、クラウスが横に寄り添ってくれた。
2人の兄が盾になってくれるようだ。
そうしてカロクは、シリルの後についてパーティー会場へと向かった。
ゲームの通り、武功をあげたのはサイラスで、騎士団長に昇格する事が決まっている。
また戦争が終結すると同時に、魔王の器について各国の上層部に公表された。公国の被害状況もあり、器の存在は実在するものとして認知されたが、その処遇については未だに議論が交わされていると言う。もちろんカロクの名を伏せての公表だったが、時間の問題だとオーヴァンは語った。
双子の侍従は目を覚ました次の日に屋敷を出た。己の力不足を痛感し、自ら王宮の暗部へと志願したと言う。オーヴァンもそれを許可し、今は王都の何処かで任務に当たっているだろうとの事だった。
そしてカロクはというと、ローレンスの死から、より人を遠ざけるようになってしまっていた。
またあの日のカロクを目にしてしまった使用人や騎士達も、積極的にカロクに近づこうとはしない。もちろん箝口令は敷いたが、まるで腫れ物に触るかのごとき扱いだ。
家庭教師は再開したが、8歳から入学が認められている小学部には入学する事はなかった。これはオーヴァンとアシュクロフトの間で取り決められた事だったが、今のカロクにはありがたかった。
戦後もサイラスからの接触はなく、またカロクからも連絡を取ろうとはしなかった。距離を置い方がいいと、互いに理解していたようだ。
そうして月日がたち、カロクは15歳になった。
来年、カロクは王立の高等学部に入学する事が決まっている。ゲームの中と同じように。
それに向け、まずは社交界へお披露目をしなければならなかった。
本来社交界デビューは12歳前後で行われる事が多い。だがカロクは、魔王の器という事、またローレンスの死から塞ぎ込むことも多かった為、見送られたのだ。
カロクとしてはこのままデビューしなくても構わないと考えていたが、さすがに高等部へ入学するにあたり、顔見せ程度はしておかなくてはならないらしい。
今日はその初めての日だ。王宮主催のガーデンパーティーらしい。
付き添いには2人の兄がついてきてくれている。
「いいか、カロク。もし何か嫌味を言われたり、無理に言い寄られたりしたらすぐに私かクラウスに言うんだぞ。」
シリルが言う。
2人の兄との仲は未だ良好だ。ローレンスの一件以来、深まったと言ってもいい。
「ありがとう、シリル兄さん。」
フッとカロクが笑みを浮かべると、横からワシッと頭を掴まれる。
「気に入らないやつがいれば、殴り倒してもいい。むしろ俺が殴ってやるから教えろ。」
そう言ってクラウスは大きな手で軽くカロクの髪をかき混ぜる。そのぶっきらぼうないい方に、フッとカロクは頬を緩める。
「ふふ、クラウス兄さんも。大丈夫、上手くやるよ。」
カロクはそう言って穏やかに笑う。
貴族の子供は社交デビューを果たすと同時にその家の名を背負う事になる。故にそこまで好き勝手振る舞う者は少ない。あくまでも少ないのであって、全くいないという訳ではないのだが。
カロクはゲームと同じように、見目麗しい青年へと成長を遂げた。冷たく見えるシリルや、勝気な印象を与えるクラウスとは違う柔らかな雰囲気を持つ美青年へと。
ゲームの中ではもう少しナンパな雰囲気を醸し出していたが、今のカロクには当てはまらない。またゲームとは違い、体も程々に鍛えていたので、線が細すぎるということも無く均整のとれた体つきをしている。
少しでもゲームの中のカロクとは別のものになろうとした結果だ。
ガーデンパーティーは、入場の際のコールがない。自由に出入りできる、緩めのティーパーティーだ。
「準備はいいか?」
シリルが問う。
「うん、大丈夫。」
そう言ってカロクがよそ行きの笑みを浮かべると、シリルが前に立ち、クラウスが横に寄り添ってくれた。
2人の兄が盾になってくれるようだ。
そうしてカロクは、シリルの後についてパーティー会場へと向かった。
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