44 / 82
44
しおりを挟む
それからクラウスは事あるごとにカロクを構いに来た。
シリルとの茶会に乱入したかと思えば、授業を受けるカロクの部屋に突撃し、教師陣へとガンを飛ばす。かと思えば、カロクの双子の侍従を相手取り模擬戦をおこない、カロクにも簡単に剣術を教えてくれた。
曰く、
「お前は弱いからな。」
とのことである。
クラウスにはカロクが非常に弱々しく見えているようだ。
クラウスとシリルは対照的で、魔法が得意なシリルとは違い、クラウスは非常に剣の腕がたつという。もちろん2人とも、剣も魔法も常人以上には扱えるのだけれど。
双子の侍従はそんなクラウスに教えを乞うように何度も模擬戦を申し込んでいた。カロクを守れなかった事が相当悔しかったらしい。何度も何度も謝られ、罰して欲しいと暗器を渡された時はカロクもさすがに困惑した。そばに居てくれればそれでいいと伝えれば、2人の顔は泣きそうに歪んだ。
この時初めて、カロクは双子の妹リンの声を聞いた。
ある夕方の晩餐時のこと。
「父上。」
クラウスが言う。
「俺も、退寮して家から通います。」
その言葉に、オーヴァンはフッと顔を上げてクラウスを見据えた。最近気づいた事だがこの家族、会話が非常に少ない。オーヴァンもシリルも、必要以上の会話をしない主義であるらしく、カロクがいなければ晩餐を共にする事もないという。激情型であるクラウスもその傾向があるようだ。
「お前がそう決めたのなら構わないが、朝の稽古はどうする。」
オーヴァンが言う。
クラウスは毎朝早くに起きて、学校で剣の稽古をしているのだと言う。そのため寮に入り、そこから学校へと通っていた。
「剣の稽古は家でも出来ます。今はカロクのそばに居てやらなければ。」
そう言って、ハシバミ色の瞳がカロクを捉えた。鋭く、睨んでいるように見えていたその瞳は、ただ単に目付きが悪いだけなのだとカロクは最近気づいた。
今もカロクを睨んでいるように見えるが、その瞳にはカロクを心配する色が滲んでいる。
「ならばそのように手配しよう。」
「ありがとうございます。」
オーヴァンは基本子供の事には干渉しないらしく、クラウスが決めたのであればと退寮を承諾した。
カロクはおずおずと顔を上げ、クラウスを見つめる。
「クラウス兄さま、その‥いいのですか‥?」
カロクが問う。
シリルもクラウスも、寮や学校での生活もあるだろう。それでも、カロクのそばにいることを選んでくれた。
その事がカロクには申し訳なかった。
「気にする必要は無い。それに家の騎士相手の方が、剣の上達も早いだろう。」
そう言って、クラウスは微かに口角をあげた。カロクを気遣ってくれているようだ。
その事実が単純に嬉しく、カロクはふわりと笑みを浮かべた。
「ありがとうございます、クラウス兄さま。」
そのカロクの笑顔に、クラウスは軽く目を見張ったが、直ぐにふわりと柔らかく微笑んでくれた。
シリルとの茶会に乱入したかと思えば、授業を受けるカロクの部屋に突撃し、教師陣へとガンを飛ばす。かと思えば、カロクの双子の侍従を相手取り模擬戦をおこない、カロクにも簡単に剣術を教えてくれた。
曰く、
「お前は弱いからな。」
とのことである。
クラウスにはカロクが非常に弱々しく見えているようだ。
クラウスとシリルは対照的で、魔法が得意なシリルとは違い、クラウスは非常に剣の腕がたつという。もちろん2人とも、剣も魔法も常人以上には扱えるのだけれど。
双子の侍従はそんなクラウスに教えを乞うように何度も模擬戦を申し込んでいた。カロクを守れなかった事が相当悔しかったらしい。何度も何度も謝られ、罰して欲しいと暗器を渡された時はカロクもさすがに困惑した。そばに居てくれればそれでいいと伝えれば、2人の顔は泣きそうに歪んだ。
この時初めて、カロクは双子の妹リンの声を聞いた。
ある夕方の晩餐時のこと。
「父上。」
クラウスが言う。
「俺も、退寮して家から通います。」
その言葉に、オーヴァンはフッと顔を上げてクラウスを見据えた。最近気づいた事だがこの家族、会話が非常に少ない。オーヴァンもシリルも、必要以上の会話をしない主義であるらしく、カロクがいなければ晩餐を共にする事もないという。激情型であるクラウスもその傾向があるようだ。
「お前がそう決めたのなら構わないが、朝の稽古はどうする。」
オーヴァンが言う。
クラウスは毎朝早くに起きて、学校で剣の稽古をしているのだと言う。そのため寮に入り、そこから学校へと通っていた。
「剣の稽古は家でも出来ます。今はカロクのそばに居てやらなければ。」
そう言って、ハシバミ色の瞳がカロクを捉えた。鋭く、睨んでいるように見えていたその瞳は、ただ単に目付きが悪いだけなのだとカロクは最近気づいた。
今もカロクを睨んでいるように見えるが、その瞳にはカロクを心配する色が滲んでいる。
「ならばそのように手配しよう。」
「ありがとうございます。」
オーヴァンは基本子供の事には干渉しないらしく、クラウスが決めたのであればと退寮を承諾した。
カロクはおずおずと顔を上げ、クラウスを見つめる。
「クラウス兄さま、その‥いいのですか‥?」
カロクが問う。
シリルもクラウスも、寮や学校での生活もあるだろう。それでも、カロクのそばにいることを選んでくれた。
その事がカロクには申し訳なかった。
「気にする必要は無い。それに家の騎士相手の方が、剣の上達も早いだろう。」
そう言って、クラウスは微かに口角をあげた。カロクを気遣ってくれているようだ。
その事実が単純に嬉しく、カロクはふわりと笑みを浮かべた。
「ありがとうございます、クラウス兄さま。」
そのカロクの笑顔に、クラウスは軽く目を見張ったが、直ぐにふわりと柔らかく微笑んでくれた。
12
お気に入りに追加
194
あなたにおすすめの小説
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
▼毎日18時投稿予定
【完結】別れ……ますよね?
325号室の住人
BL
☆全3話、完結済
僕の恋人は、テレビドラマに数多く出演する俳優を生業としている。
ある朝、テレビから流れてきたニュースに、僕は恋人との別れを決意した。
主人公の兄になったなんて知らない
さつき
BL
レインは知らない弟があるゲームの主人公だったという事を
レインは知らないゲームでは自分が登場しなかった事を
レインは知らない自分が神に愛されている事を
表紙イラストは マサキさんの「キミの世界メーカー」で作成してお借りしています⬇ https://picrew.me/image_maker/54346
私の事を調べないで!
さつき
BL
生徒会の副会長としての姿と
桜華の白龍としての姿をもつ
咲夜 バレないように過ごすが
転校生が来てから騒がしくなり
みんなが私の事を調べだして…
表紙イラストは みそかさんの「みそかのメーカー2」で作成してお借りしています↓
https://picrew.me/image_maker/625951
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
この道を歩む~転生先で真剣に生きていたら、第二王子に真剣に愛された~
乃ぞみ
BL
※ムーンライトの方で500ブクマしたお礼で書いた物をこちらでも追加いたします。(全6話)BL要素少なめですが、よければよろしくお願いします。
【腹黒い他国の第二王子×負けず嫌いの転生者】
エドマンドは13歳の誕生日に日本人だったことを静かに思い出した。
転生先は【エドマンド・フィッツパトリック】で、二年後に死亡フラグが立っていた。
エドマンドに不満を持った隣国の第二王子である【ブライトル・ モルダー・ヴァルマ】と険悪な関係になるものの、いつの間にか友人や悪友のような関係に落ち着く二人。
死亡フラグを折ることで国が負けるのが怖いエドマンドと、必死に生かそうとするブライトル。
「僕は、生きなきゃ、いけないのか……?」
「当たり前だ。俺を残して逝く気だったのか? 恨むぞ」
全体的に結構シリアスですが、明確な死亡表現や主要キャラの退場は予定しておりません。
闘ったり、負傷したり、国同士の戦争描写があったります。
本編ド健全です。すみません。
※ 恋愛までが長いです。バトル小説にBLを添えて。
※ 攻めがまともに出てくるのは五話からです。
※ タイトル変更しております。旧【転生先がバトル漫画の死亡フラグが立っているライバルキャラだった件 ~本筋大幅改変なしでフラグを折りたいけど、何であんたがそこにいる~】
※ ムーンライトノベルズにも投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる