42 / 82
42
しおりを挟む
あれから、父オーヴァンとの関係は少しづつ改善していった。朝晩の食事を共にするぐらいで、喋るのも上の兄シリルとばかりだが、それでもその時間がカロクには心地よく感じた。
ある晩のこと。
そういえば、とカロクは口を開く。
「シリル兄さま。僕にはもう1人、兄上がいらっしゃいますよね?」
「あぁ、クラウスの事か。」
「クラウス、兄さま。」
カロクが復唱する。
原作では、カロクは2人の兄から疎まれていた。1番カロクの事を嫌っていたのは、シリルだ。今は良好な関係を築けているが、クラウスも同じだとは限らない。
さらに、クラウスはシリルと違いどちらかと言えば激情型だ。好き嫌いもはっきりしており、原作ではカロクを視界に入れるだけで不愉快に顔を歪めていた。
「クラウスは今、寮に入っているからな。ちょうど明日、帰省日ではなかったか。」
オーヴァンが言う。
シリルもクラウスも、寮が完備されてる一貫性の学校に通っている。いつかカロクも通うことになるであろう学校だ。そこには寮も完備されており、希望者は入寮する事が許されている。
シリルも入寮していたのだが、カロクと交流するようになってから直ぐに、退寮の手続きをとったのだと聞いた。
「虐められたら、私に言うといい。私が助けてあげよう。」
「シリル兄さま‥」
そう言って頭を撫でてくれるシリルに、カロクはふわりと控えめな笑みを浮かべた。瞬間、オーヴァンとシリルの喉がグッと鳴ったが、カロクは気づかなかった。
クラウスの帰省日。
カロクは自室から出ないようにしていた。仲良くなれるかもしれない。だが、話も聞かずに罵られる可能性もある。ならば、傷つく前に避けるに限るのだ。
ローレンスにシリル。サイラスにオーヴァン。僅かだが、カロクにも大切な人が出来た。これ以上望むことは無い。
それに。
「みんな大きくなったね‥?」
ふわりとカロクは笑みを浮かべる。
カロクの傍には、7体の獣が侍っていた。そのうちの一体である子猫の姿をした獣にカロクは頬を寄せる。
「ありがとう、竜胆。それに月白に黒鳶も。助けてくれたんでしょう?」
そう問いかければ、それぞれが控えめに鳴いてカロクへと甘えるように身を寄せた。
オーヴァンが言うには、キースは精神喪失の状態で、聴取も何も出来ない状態らしい。だが調べたところ、余罪がゴロゴロ出てきて、そのまま処刑されるのだと言う。
オーヴァン曰く、精神を黒鳶に食われたのだろうと。
キースを退ける雷は竜胆が。カロクを逃がす転移は月白が。そしてキースが反撃出来ぬよう黒鳶が、その精神を食らったのだと推測された。
オーヴァンには、改めて魔族達を紹介していた。7体揃ったその姿に、オーヴァンは険しい顔をしていたが、それでも「息子を守ってくれてありがとう。」と伝えた。
1番初めに進化した蘇芳は、既にカロクの腕くらいにまで大きくなっていた。他の魔族達も、今は普通の獣の子程に成長している。さらに最後に進化した3体も、幼体時での大きさが考慮されたのか先に進化した魔族達と変わらない大きさでの進化を果たしていた。
「ふふ、くすぐったいよ黒鳶。」
その時、首に緩く巻きついた黒鳶がじゃれるようにカロクの頬をチロリと舐めた。
魔族のことは、未だに多くは分かっていない。性質や能力、戦闘力などは伝わっているのだが、その生態に関しては未だに謎に包まれたままだ。
オーヴァンにも、どうすれば進化をするのか聞かれのだが、カロク自身が試した事を話しただけで確証は無いと付け足した。ただ、幼体時の事は知らなかったようで酷く驚かれた。
「王さまにはもう話したのかなぁ‥」
ポツリとカロクがこぼす。
カロク自身、魔王に堕ちるつもりは無いし、国を害するつもりもない。だが危険だと判断されれば、このまま暮らし続ける事は出来ないだろう。
そんなカロクの心を感じたのか、蘇芳がスリとカロクの頬に頭を擦り付ける。
「ふふ、ありがとう。大丈夫。いざとなればみんなで逃げちゃおう。」
そう言って笑っていると、急に廊下が騒がしくなる。
バタバタと廊下をかける音が響き、ローレンスが焦る声が聞こえる。
一体何が起きているのかと、カロクが首を傾げて扉を伺っていると、バァンと大きな音を立てて開かれた。
「ッ!!」
ビクリとカロクは肩を震わせる。
「‥‥‥お前が、カロクか。」
そこには青藤色の髪にハシバミ色の瞳を持つ、オーヴァンそっくりな男の子の姿があった。
ある晩のこと。
そういえば、とカロクは口を開く。
「シリル兄さま。僕にはもう1人、兄上がいらっしゃいますよね?」
「あぁ、クラウスの事か。」
「クラウス、兄さま。」
カロクが復唱する。
原作では、カロクは2人の兄から疎まれていた。1番カロクの事を嫌っていたのは、シリルだ。今は良好な関係を築けているが、クラウスも同じだとは限らない。
さらに、クラウスはシリルと違いどちらかと言えば激情型だ。好き嫌いもはっきりしており、原作ではカロクを視界に入れるだけで不愉快に顔を歪めていた。
「クラウスは今、寮に入っているからな。ちょうど明日、帰省日ではなかったか。」
オーヴァンが言う。
シリルもクラウスも、寮が完備されてる一貫性の学校に通っている。いつかカロクも通うことになるであろう学校だ。そこには寮も完備されており、希望者は入寮する事が許されている。
シリルも入寮していたのだが、カロクと交流するようになってから直ぐに、退寮の手続きをとったのだと聞いた。
「虐められたら、私に言うといい。私が助けてあげよう。」
「シリル兄さま‥」
そう言って頭を撫でてくれるシリルに、カロクはふわりと控えめな笑みを浮かべた。瞬間、オーヴァンとシリルの喉がグッと鳴ったが、カロクは気づかなかった。
クラウスの帰省日。
カロクは自室から出ないようにしていた。仲良くなれるかもしれない。だが、話も聞かずに罵られる可能性もある。ならば、傷つく前に避けるに限るのだ。
ローレンスにシリル。サイラスにオーヴァン。僅かだが、カロクにも大切な人が出来た。これ以上望むことは無い。
それに。
「みんな大きくなったね‥?」
ふわりとカロクは笑みを浮かべる。
カロクの傍には、7体の獣が侍っていた。そのうちの一体である子猫の姿をした獣にカロクは頬を寄せる。
「ありがとう、竜胆。それに月白に黒鳶も。助けてくれたんでしょう?」
そう問いかければ、それぞれが控えめに鳴いてカロクへと甘えるように身を寄せた。
オーヴァンが言うには、キースは精神喪失の状態で、聴取も何も出来ない状態らしい。だが調べたところ、余罪がゴロゴロ出てきて、そのまま処刑されるのだと言う。
オーヴァン曰く、精神を黒鳶に食われたのだろうと。
キースを退ける雷は竜胆が。カロクを逃がす転移は月白が。そしてキースが反撃出来ぬよう黒鳶が、その精神を食らったのだと推測された。
オーヴァンには、改めて魔族達を紹介していた。7体揃ったその姿に、オーヴァンは険しい顔をしていたが、それでも「息子を守ってくれてありがとう。」と伝えた。
1番初めに進化した蘇芳は、既にカロクの腕くらいにまで大きくなっていた。他の魔族達も、今は普通の獣の子程に成長している。さらに最後に進化した3体も、幼体時での大きさが考慮されたのか先に進化した魔族達と変わらない大きさでの進化を果たしていた。
「ふふ、くすぐったいよ黒鳶。」
その時、首に緩く巻きついた黒鳶がじゃれるようにカロクの頬をチロリと舐めた。
魔族のことは、未だに多くは分かっていない。性質や能力、戦闘力などは伝わっているのだが、その生態に関しては未だに謎に包まれたままだ。
オーヴァンにも、どうすれば進化をするのか聞かれのだが、カロク自身が試した事を話しただけで確証は無いと付け足した。ただ、幼体時の事は知らなかったようで酷く驚かれた。
「王さまにはもう話したのかなぁ‥」
ポツリとカロクがこぼす。
カロク自身、魔王に堕ちるつもりは無いし、国を害するつもりもない。だが危険だと判断されれば、このまま暮らし続ける事は出来ないだろう。
そんなカロクの心を感じたのか、蘇芳がスリとカロクの頬に頭を擦り付ける。
「ふふ、ありがとう。大丈夫。いざとなればみんなで逃げちゃおう。」
そう言って笑っていると、急に廊下が騒がしくなる。
バタバタと廊下をかける音が響き、ローレンスが焦る声が聞こえる。
一体何が起きているのかと、カロクが首を傾げて扉を伺っていると、バァンと大きな音を立てて開かれた。
「ッ!!」
ビクリとカロクは肩を震わせる。
「‥‥‥お前が、カロクか。」
そこには青藤色の髪にハシバミ色の瞳を持つ、オーヴァンそっくりな男の子の姿があった。
12
お気に入りに追加
194
あなたにおすすめの小説
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
主人公の兄になったなんて知らない
さつき
BL
レインは知らない弟があるゲームの主人公だったという事を
レインは知らないゲームでは自分が登場しなかった事を
レインは知らない自分が神に愛されている事を
表紙イラストは マサキさんの「キミの世界メーカー」で作成してお借りしています⬇ https://picrew.me/image_maker/54346
悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
▼毎日18時投稿予定
私の事を調べないで!
さつき
BL
生徒会の副会長としての姿と
桜華の白龍としての姿をもつ
咲夜 バレないように過ごすが
転校生が来てから騒がしくなり
みんなが私の事を調べだして…
表紙イラストは みそかさんの「みそかのメーカー2」で作成してお借りしています↓
https://picrew.me/image_maker/625951
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。
突然異世界転移させられたと思ったら騎士に拾われて執事にされて愛されています
ブラフ
BL
学校からの帰宅中、突然マンホールが光って知らない場所にいた神田伊織は森の中を彷徨っていた
魔獣に襲われ通りかかった騎士に助けてもらったところ、なぜだか騎士にいたく気に入られて屋敷に連れて帰られて執事となった。
そこまではよかったがなぜだか騎士に別の意味で気に入られていたのだった。
だがその騎士にも秘密があった―――。
その秘密を知り、伊織はどう決断していくのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる