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あれから、父オーヴァンとの関係は少しづつ改善していった。朝晩の食事を共にするぐらいで、喋るのも上の兄シリルとばかりだが、それでもその時間がカロクには心地よく感じた。

ある晩のこと。
そういえば、とカロクは口を開く。

「シリル兄さま。僕にはもう1人、兄上がいらっしゃいますよね?」
「あぁ、クラウスの事か。」
「クラウス、兄さま。」

カロクが復唱する。
原作では、カロクは2人の兄から疎まれていた。1番カロクの事を嫌っていたのは、シリルだ。今は良好な関係を築けているが、クラウスも同じだとは限らない。
さらに、クラウスはシリルと違いどちらかと言えば激情型だ。好き嫌いもはっきりしており、原作ではカロクを視界に入れるだけで不愉快に顔を歪めていた。

「クラウスは今、寮に入っているからな。ちょうど明日、帰省日ではなかったか。」

オーヴァンが言う。
シリルもクラウスも、寮が完備されてる一貫性の学校に通っている。いつかカロクも通うことになるであろう学校だ。そこには寮も完備されており、希望者は入寮する事が許されている。
シリルも入寮していたのだが、カロクと交流するようになってから直ぐに、退寮の手続きをとったのだと聞いた。

「虐められたら、私に言うといい。私が助けてあげよう。」
「シリル兄さま‥」

そう言って頭を撫でてくれるシリルに、カロクはふわりと控えめな笑みを浮かべた。瞬間、オーヴァンとシリルの喉がグッと鳴ったが、カロクは気づかなかった。


クラウスの帰省日。
カロクは自室から出ないようにしていた。仲良くなれるかもしれない。だが、話も聞かずに罵られる可能性もある。ならば、傷つく前に避けるに限るのだ。
ローレンスにシリル。サイラスにオーヴァン。僅かだが、カロクにも大切な人が出来た。これ以上望むことは無い。
それに。

「みんな大きくなったね‥?」

ふわりとカロクは笑みを浮かべる。
カロクの傍には、7体の獣が侍っていた。そのうちの一体である子猫の姿をした獣にカロクは頬を寄せる。

「ありがとう、竜胆。それに月白に黒鳶も。助けてくれたんでしょう?」

そう問いかければ、それぞれが控えめに鳴いてカロクへと甘えるように身を寄せた。
オーヴァンが言うには、キースは精神喪失の状態で、聴取も何も出来ない状態らしい。だが調べたところ、余罪がゴロゴロ出てきて、そのまま処刑されるのだと言う。
オーヴァン曰く、精神を黒鳶に食われたのだろうと。
キースを退ける雷は竜胆が。カロクを逃がす転移は月白が。そしてキースが反撃出来ぬよう黒鳶が、その精神を食らったのだと推測された。

オーヴァンには、改めて魔族達を紹介していた。7体揃ったその姿に、オーヴァンは険しい顔をしていたが、それでも「息子を守ってくれてありがとう。」と伝えた。

1番初めに進化した蘇芳は、既にカロクの腕くらいにまで大きくなっていた。他の魔族達も、今は普通の獣の子程に成長している。さらに最後に進化した3体も、幼体時での大きさが考慮されたのか先に進化した魔族達と変わらない大きさでの進化を果たしていた。

「ふふ、くすぐったいよ黒鳶。」

その時、首に緩く巻きついた黒鳶がじゃれるようにカロクの頬をチロリと舐めた。
魔族のことは、未だに多くは分かっていない。性質や能力、戦闘力などは伝わっているのだが、その生態に関しては未だに謎に包まれたままだ。
オーヴァンにも、どうすれば進化をするのか聞かれのだが、カロク自身が試した事を話しただけで確証は無いと付け足した。ただ、幼体時の事は知らなかったようで酷く驚かれた。

「王さまにはもう話したのかなぁ‥」

ポツリとカロクがこぼす。
カロク自身、魔王に堕ちるつもりは無いし、国を害するつもりもない。だが危険だと判断されれば、このまま暮らし続ける事は出来ないだろう。

そんなカロクの心を感じたのか、蘇芳がスリとカロクの頬に頭を擦り付ける。

「ふふ、ありがとう。大丈夫。いざとなればみんなで逃げちゃおう。」

そう言って笑っていると、急に廊下が騒がしくなる。
バタバタと廊下をかける音が響き、ローレンスが焦る声が聞こえる。

一体何が起きているのかと、カロクが首を傾げて扉を伺っていると、バァンと大きな音を立てて開かれた。

「ッ!!」

ビクリとカロクは肩を震わせる。

「‥‥‥お前が、カロクか。」

そこには青藤色の髪にハシバミ色の瞳を持つ、オーヴァンそっくりな男の子の姿があった。
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