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サイラスは扉の横の壁に背を預け、カロクの授業風景を見守る。
今のところ、目立った変化はない。キースはカロクに対し、丁寧に接しているし、教え方も上手い。カロクも、そんなキースの授業を、興味深く聞いているようだ。
しかし、サイラスは時折カロクの体が強張る事に気付いた。注意深く見ていなければ分からない、些細な変化だ。キースが身を乗り出すと、ほんの微かにカロクの体に力が入る。よくできたと褒められている時ですら、カロクはその瞳に不安を滲ませていた。
(‥なるほどな。)
サイラスはひたとキースを見据える。
カロクはその身にキースが触れるたびに体を強張らせる。そしてその手が離れると、その瞳に安堵を滲ませる。そしてそれはサイラスといる時は見られない変化だ。サイラスがどんなにぞんざいにカロクの頭を撫でようが、その体が強張ったことはない。
さらに、キースがサイラスに向けるその瞳。
それは明らかに邪魔者を見る目だ。若くして副団長の地位についたサイラスは、そう言った敵意を含む視線に敏感だった。
(2人きりの部屋で一体何を教えているんだかな。)
聞けば、キースはそれなりに屋敷の人間に信用を得ているらしい。さらにその整った容姿のおかげで、メイド達の人気も高い。そのためカロクと2人きりで授業をすることも多いという。しかしそれはキースに限ったことではない。だが、カロクの口からキースとの授業内容だけが語られない。
カロクとの時間を設けるようになって数日。
サイラスはカロクのおかれた環境に変化がないか、雑談を通じて見守ってきた。カロクは今のところ、満たされた生活を送っているようだった。あてがわれた教師陣に対しても、特に文句もなく、興味深く勉学に取り組んでいるようだ。
だが、そんなカロクの口から魔法学に関する内容が語られたことはない。
てっきり魔族にも通じるものだから避けているのだと考えていたが、どうやら違ったらしい。
そしてサイラスは決定的な光景を目にする。
カロクが上手く光魔法を発動させたその時だった。
うれしかったのだろう。カロクは、パッと花が開くように笑みを浮かべた。それは普段表情の乏しいカロクでは滅多に見られない表情だ。
しかしその瞬間、キースのその瞳に確かに情欲が滲んだ。
カロクがそれに気づいた時には、すでに遅かったのかもしれない。よくできたと頭を撫でるキースのその反対の指先が、するりとカロクの内腿を撫でたのだ。サイラスからは見えぬ角度で、巧妙に。
肌をかけた感覚に、カロクはビクリと体を震わせる。
成功の歓喜は、すぐに不快と羞恥に塗りつぶされた。サイラスがいれば、大胆な行動はしないと思ったのに。
カロクの気分が落ちたのを確認すると、サイラスは大股で2人に近づいた。しかし今ここで問いただしても、上手く躱されてしまうだろう。それならば。
サイラスは、ガシッとカロクの頭を鷲掴んだ。
「‥!!」
カロクはびくりと大きく体を震わせ、大きな瞳をこれでもかと見開いてサイラスを見上げる。サイラスは無表情のまま、グリグリと頭を撫でてくれた。
「成功したのだろう?」
サイラスが言う。
その言葉に、カロクはパッと笑みを浮かべた。
「‥はいっ!!」
「よくやったな。」
フッとサイラスは口角を上げた。
そんなサイラスを、キースは憎々しげに見つめていた。
今のところ、目立った変化はない。キースはカロクに対し、丁寧に接しているし、教え方も上手い。カロクも、そんなキースの授業を、興味深く聞いているようだ。
しかし、サイラスは時折カロクの体が強張る事に気付いた。注意深く見ていなければ分からない、些細な変化だ。キースが身を乗り出すと、ほんの微かにカロクの体に力が入る。よくできたと褒められている時ですら、カロクはその瞳に不安を滲ませていた。
(‥なるほどな。)
サイラスはひたとキースを見据える。
カロクはその身にキースが触れるたびに体を強張らせる。そしてその手が離れると、その瞳に安堵を滲ませる。そしてそれはサイラスといる時は見られない変化だ。サイラスがどんなにぞんざいにカロクの頭を撫でようが、その体が強張ったことはない。
さらに、キースがサイラスに向けるその瞳。
それは明らかに邪魔者を見る目だ。若くして副団長の地位についたサイラスは、そう言った敵意を含む視線に敏感だった。
(2人きりの部屋で一体何を教えているんだかな。)
聞けば、キースはそれなりに屋敷の人間に信用を得ているらしい。さらにその整った容姿のおかげで、メイド達の人気も高い。そのためカロクと2人きりで授業をすることも多いという。しかしそれはキースに限ったことではない。だが、カロクの口からキースとの授業内容だけが語られない。
カロクとの時間を設けるようになって数日。
サイラスはカロクのおかれた環境に変化がないか、雑談を通じて見守ってきた。カロクは今のところ、満たされた生活を送っているようだった。あてがわれた教師陣に対しても、特に文句もなく、興味深く勉学に取り組んでいるようだ。
だが、そんなカロクの口から魔法学に関する内容が語られたことはない。
てっきり魔族にも通じるものだから避けているのだと考えていたが、どうやら違ったらしい。
そしてサイラスは決定的な光景を目にする。
カロクが上手く光魔法を発動させたその時だった。
うれしかったのだろう。カロクは、パッと花が開くように笑みを浮かべた。それは普段表情の乏しいカロクでは滅多に見られない表情だ。
しかしその瞬間、キースのその瞳に確かに情欲が滲んだ。
カロクがそれに気づいた時には、すでに遅かったのかもしれない。よくできたと頭を撫でるキースのその反対の指先が、するりとカロクの内腿を撫でたのだ。サイラスからは見えぬ角度で、巧妙に。
肌をかけた感覚に、カロクはビクリと体を震わせる。
成功の歓喜は、すぐに不快と羞恥に塗りつぶされた。サイラスがいれば、大胆な行動はしないと思ったのに。
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サイラスは、ガシッとカロクの頭を鷲掴んだ。
「‥!!」
カロクはびくりと大きく体を震わせ、大きな瞳をこれでもかと見開いてサイラスを見上げる。サイラスは無表情のまま、グリグリと頭を撫でてくれた。
「成功したのだろう?」
サイラスが言う。
その言葉に、カロクはパッと笑みを浮かべた。
「‥はいっ!!」
「よくやったな。」
フッとサイラスは口角を上げた。
そんなサイラスを、キースは憎々しげに見つめていた。
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