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カロクは授業の合間に、いつもの丘の上へと訪れていた。今日も双子の侍従は連れていない。彼らも彼らで、侍従としての教育を受けているのだとローレンスが話してくれた。
それなら邪魔は出来ない。それに、彼らがいない方が、魔族たちとの時間が取れることもまた事実だった。
キースのことは気がかりだけど、彼は確かに優秀で、教え方も上手い。それにせっかくローレンスが見つけてきてくれた教師だ。こんなことで音を上げたくはない。もう少し向き合ってみよう、とカロクは心に決めていた。
「みんな。」
カロクが声をかけると、ふわりと魔族たちが集まってきた。
実態を持つ蘇芳は、カロクの肩の上が定位置だ。ぐっと伸びあがって、カロクの頬へその顔を寄せる。その体はほのかに温かく、カロクの心を癒してくれた。
「今ね、魔法を学んでいるんだ。」
カロクが言う。
そう言って覚えたばかりの風の魔法を行使しようと試みた。
「僕は魔力量が多いから、もし暴走仕掛けたらまた魔力を食べて抑えてくれる?」
カロクがそう問うと、魔族たちは心得たというように一度淡く点滅した。
彼らが魔力を食べるということは、ここ最近気づいたカロクだけの秘密だ。そのおかげで、みな随分と大きくなった。だが、いまだに進化を果たせていないのは、何か条件があるからなのだろう。
蘇芳は、みなよりだいぶ小さなときに進化した。だから、進化の条件は魔力を与えることではないのだろう。そんな蘇芳も、カロクの魔力を食らい、だいぶ大きくなってきていた。カロクの小さな掌からこぼれ出るほどの大きさでは、見つかるのも時間の問題か。
「うまくできるかな‥。」
そう言ってカロクは呪文を唱える。
簡単な初期魔法だ。
するとふわりと手の中に柔らかな風が舞い上がる。
つむじ風のように掌でくるくると渦を巻き、近くを漂っていた綿毛を巻き込んだ。
「ふふ、ほら成功した。」
そう言って魔法を維持したまま、白緑へと差し出す。
「ほら、風だよ。お前と同じ。」
ふふ、と柔らかな笑みを浮かべるとカロクはその風を消そうとその手を解いた。しかしその瞬間、ぐわりと大きくなったつむじ風が白緑を巻き込んで舞い上がる。
「‥白緑!!」
カロクは思わずその手を伸ばした。
白緑が飛ばされてしまう。
しかしそんなカロクの不安をよそに、大きく膨らんだ風は一度強い突風となって吹きすさび、パァンとはじけた。
「‥!!」
カロクは驚いてその目を閉じる。
ここで問題を起こせば、また双子の監視が強くなってしまう。せっかく魔族たちとの時間を取れるようになったのだ。できれば避けたい。
しかしカロクが恐れた暴走は、いつまでたっても起きることはなかった。
カロクは恐る恐る目を開ける。するとそこには、緑色の小さな小鳥がパタパタとカロクの目の前を浮遊していた。
もしかしてー‥
「白、緑‥?」
カロクが問えば、小鳥は肯定するようにぴぃと一声鳴いた。
それなら邪魔は出来ない。それに、彼らがいない方が、魔族たちとの時間が取れることもまた事実だった。
キースのことは気がかりだけど、彼は確かに優秀で、教え方も上手い。それにせっかくローレンスが見つけてきてくれた教師だ。こんなことで音を上げたくはない。もう少し向き合ってみよう、とカロクは心に決めていた。
「みんな。」
カロクが声をかけると、ふわりと魔族たちが集まってきた。
実態を持つ蘇芳は、カロクの肩の上が定位置だ。ぐっと伸びあがって、カロクの頬へその顔を寄せる。その体はほのかに温かく、カロクの心を癒してくれた。
「今ね、魔法を学んでいるんだ。」
カロクが言う。
そう言って覚えたばかりの風の魔法を行使しようと試みた。
「僕は魔力量が多いから、もし暴走仕掛けたらまた魔力を食べて抑えてくれる?」
カロクがそう問うと、魔族たちは心得たというように一度淡く点滅した。
彼らが魔力を食べるということは、ここ最近気づいたカロクだけの秘密だ。そのおかげで、みな随分と大きくなった。だが、いまだに進化を果たせていないのは、何か条件があるからなのだろう。
蘇芳は、みなよりだいぶ小さなときに進化した。だから、進化の条件は魔力を与えることではないのだろう。そんな蘇芳も、カロクの魔力を食らい、だいぶ大きくなってきていた。カロクの小さな掌からこぼれ出るほどの大きさでは、見つかるのも時間の問題か。
「うまくできるかな‥。」
そう言ってカロクは呪文を唱える。
簡単な初期魔法だ。
するとふわりと手の中に柔らかな風が舞い上がる。
つむじ風のように掌でくるくると渦を巻き、近くを漂っていた綿毛を巻き込んだ。
「ふふ、ほら成功した。」
そう言って魔法を維持したまま、白緑へと差し出す。
「ほら、風だよ。お前と同じ。」
ふふ、と柔らかな笑みを浮かべるとカロクはその風を消そうとその手を解いた。しかしその瞬間、ぐわりと大きくなったつむじ風が白緑を巻き込んで舞い上がる。
「‥白緑!!」
カロクは思わずその手を伸ばした。
白緑が飛ばされてしまう。
しかしそんなカロクの不安をよそに、大きく膨らんだ風は一度強い突風となって吹きすさび、パァンとはじけた。
「‥!!」
カロクは驚いてその目を閉じる。
ここで問題を起こせば、また双子の監視が強くなってしまう。せっかく魔族たちとの時間を取れるようになったのだ。できれば避けたい。
しかしカロクが恐れた暴走は、いつまでたっても起きることはなかった。
カロクは恐る恐る目を開ける。するとそこには、緑色の小さな小鳥がパタパタとカロクの目の前を浮遊していた。
もしかしてー‥
「白、緑‥?」
カロクが問えば、小鳥は肯定するようにぴぃと一声鳴いた。
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