この世界と引き換えに愛を乞う

seto

文字の大きさ
上 下
7 / 82

7

しおりを挟む
その秘密とは、カロクが『魔王の器である。』という事。
魔王の器とは、文字通り魔王になり得る者の事を言う。7つの属性の魔族をその身に取り込み、魔を統べる王となるのだ。

しかし周囲はおろか、カロク自身もその事に気づかず物語は進んでいく。
物語が進むにつれ、カロクは主人公ヒロインに執着に近い恋心を抱く事になる。それも全てのルートで。
それがカロクルートならば、魔王堕ちを阻止してハッピーエンド。しかしそれ以外のルートでは、魔王と化したカロクを主人公と攻略対象とで討伐する事になるのだ。

その魔王堕ちの鍵となるのが、カロクの元に集う光達だ。ゲーム内のカロクはそれを妖精さんと呼んでいて、魔法を行使する際に手伝って貰うのだと言う。
妖精は7体いるらしいのだが、ゲーム内にそれと思しき描写はなく、ただカロクの口からのみ伝えられる。
それが実は妖精なんかではなく、魔族の幼体なのだと分かるのは、カロクが魔王に堕ちてからだ。


魔族とは、この世界に稀に現れる魔物の上位種の事だ。それぞれ7つの属性に別れており、火・水・風・雷・土・闇・光となっている。

魔素の濃い場所に自然発生し、進化を繰り返して成長していく。
幼体・下位・中位・上位・王と階級が分けられており、下位の魔族でも、一体で小さな町1つを滅ぼすとされている。中位にもなると国を上げて対処しなければ、国自体が滅びかねないとされる人類の脅威だ。

そんな魔族だが、幼体期は通常、人の目では見ることができないとされている。その幼体が下位魔族へと進化をして、初めて討伐する事が出来るのだ。

魔王の器とは、そんな魔族に愛される者の事を言う。また実際に魔王になる資格があるのは、7つの属性全てに愛された者だけ。7つのうち1つでも欠ければ、魔王へとは到れない。

また魔族に愛された者は、その証として、その者を愛した魔族の属性が瞳の色に現れる。火であれば赤、水であれば青、といった具合に。
しかし光の加減で微かに色が滲む程度なので、ほとんどの者がその事実に気づかず一生を終えるという。


そして今。
カロクの瞳は、7つの光を弾いている。
鮮やかなコバルトブルーの瞳のせいで、一見すると分かりにくくはなってはいるが、光の差し込む角度によってモルフォ蝶の羽のように鮮やかな光を弾く。

一瞬で色を変えてしまうそれは、普段生活しているくらいでは容易に気付くことは出来ないだろう。実際、同じ屋敷に住んでいるというのにカロクの家族はそれに気がつくことはなかった。無関心であった、ということも要因のひとつではあるが。

しかしだからこそ、カロクは来るべきその日まで魔王の器だとは気づかれなかった。世界を憎み、その身を魔へと堕とすまで。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました

taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件 『穢らわしい娼婦の子供』 『ロクに魔法も使えない出来損ない』 『皇帝になれない無能皇子』 皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。 だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。 毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき…… 『なんだあの威力の魔法は…?』 『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』 『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』 『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』 そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。

貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する

美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」 御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。 ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。 ✳︎不定期更新です。 21/12/17 1巻発売! 22/05/25 2巻発売! コミカライズ決定! 20/11/19 HOTランキング1位 ありがとうございます!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

巻き戻りした悪役令息は最愛の人から離れて生きていく

藍沢真啓/庚あき
BL
婚約者ユリウスから断罪をされたアリステルは、ボロボロになった状態で廃教会で命を終えた……はずだった。 目覚めた時はユリウスと婚約したばかりの頃で、それならばとアリステルは自らユリウスと距離を置くことに決める。だが、なぜかユリウスはアリステルに構うようになり…… 巻き戻りから人生をやり直す悪役令息の物語。 【感想のお返事について】 感想をくださりありがとうございます。 執筆を最優先させていただきますので、お返事についてはご容赦願います。 大切に読ませていただいてます。執筆の活力になっていますので、今後も感想いただければ幸いです。 他サイトでも公開中

悪役令息の七日間

リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。 気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

転生当て馬召喚士が攻め度MAXの白銀騎士に抗えません

雪平@冷淡騎士2nd連載中
BL
不幸体質大学生の青年が転生したのは魔術師ファンタジーBLゲームの世界だった。 当て馬として生まれたからには攻略キャラの恋の後押しをする事にした。 しかし、この世界…何処か可笑しい。 受け主人公が攻めに、攻め攻略キャラが受けになっていた世界だった。 童顔だった主人公は立派な攻めに育っていた。 受け達に愛されている主人公は何故か当て馬に執着している。 傍観者で良かったのに、攻めポジも危ぶまれていく。 究極の鉄壁一途な白銀騎士×転生当て馬召喚士 ゲームを忠実にするためには、絶対に受けとしてときめいてはいけない。 「君といられるなら、俺は邪魔する奴を排除する」 「俺はただの当て馬でいい!」 ※脇CP、リバキャラはいません、メインCPのみです。

処理中です...