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私が大学から一人暮らしをしているマンションの玄関前に戻ると家の者がいた。
はて?なにか実家でイベントがあったかと思い出してみるも何も思いつかなかった。
家の者とはいわゆる家に仕えている者たちの事だ。
現在、ここに居るのは長年実家に仕えてくれている老執事の朝桐だ。
朝桐は私を見つけと深くお辞儀をした。
「おかえりなさいませ、お嬢様」
「朝桐。ここ、マンションの玄関なんだけど」
「申し訳ありません。至急、お嬢様にお戻りして頂きたく」
「何かあったの?」
朝桐が本当に申し訳なさそうにしているのには訳がある。
実は私は大学が実家から離れているのとちょっと(?)複雑な家庭事情により一人暮らしをしているからだ。
あ、自己紹介が遅れた。
私は西園寺沙織。現在、某国立大学二年生で日本でも指折りの財閥グループである西園寺家の長女にして次期当主なのだ。
さすがに一人暮らしと言っても身の回りのことを今まで使用人にされてきた上に次期当主と言うことも相まって普通の学生が一人暮らしなどできないほどのセキュリティーのしっかりしたマンションに住んでいるが。
申し訳ないと思いつつ、身の回りの事は私が大学に行っている間にしてもらっている。
なので、私の部屋の鍵は実家の使用人をまとめている使用人頭でもある朝桐が管理しているので、こんな風に帰宅待ちされるとは思わなかった。
朝桐は私の質問にもちょっと言い難そうにしているので私にとって良くない白瀬の可能性が高い。
私がまっすぐ見ていると意を決したように朝桐は答えた。
「太一様がご婚約されまして」
「婚約?」
「はい。相手は東城グループの百合様です」
「東城グループ」
「はい。ですので、家族合わせの為に」
「…………」
私は二の句を言えなかった。
太一というのは私の異母姉弟だ。
実母がなくなった時私が幼く母親が必要だと言い張り、父は自身の愛人を後妻に据えたのだ。
すでにその時には太一も生まれており、連れ子として西園寺家に籍を入れている。
その弟に婚約者が出来たとは何とも言い難い。
次期当主である私には婚約者などいないのに、別に欲しくはないが、順番が違うだろって話だ。
それに私だって財閥グループの令嬢であり、いつかは西園寺グループを支えて行かなければいけない身の上なので情報は仕入れている。
そんな中で相手があの東城グループとは。
まぁ、本人たちが選んだ道なのだから何も言うつもりはないが。
ここでじっとしていても他のマンションの住人の邪魔になるし、私を連れて帰るまで朝桐も引かないだろうから仕方なく私は実家に帰る事にした。
「はぁ~、分かったわ」
「恐れ入ります」
朝桐はそういうと素早くそばに停めていた車の後部座席の扉を開けた。
私が乗り込むと扉を閉め、朝桐は運転席に座った。
「朝桐、私お腹すいてるの」
「わかりました。お嬢様の支度が整う頃には食事の用意が出来ているようにいたします」
「お願いね。そう、今日はニオイの付きにくいものにしてくれる?人と会うのでしょ」
「かしこまりました」
私は朝桐にそれだけ注文をすると背もたれに体を預けた。
数か月ぶりの実家だが何の思いもなかった。
ただ学業で疲れた体と頭を休めるように私は瞳を閉じた。
はて?なにか実家でイベントがあったかと思い出してみるも何も思いつかなかった。
家の者とはいわゆる家に仕えている者たちの事だ。
現在、ここに居るのは長年実家に仕えてくれている老執事の朝桐だ。
朝桐は私を見つけと深くお辞儀をした。
「おかえりなさいませ、お嬢様」
「朝桐。ここ、マンションの玄関なんだけど」
「申し訳ありません。至急、お嬢様にお戻りして頂きたく」
「何かあったの?」
朝桐が本当に申し訳なさそうにしているのには訳がある。
実は私は大学が実家から離れているのとちょっと(?)複雑な家庭事情により一人暮らしをしているからだ。
あ、自己紹介が遅れた。
私は西園寺沙織。現在、某国立大学二年生で日本でも指折りの財閥グループである西園寺家の長女にして次期当主なのだ。
さすがに一人暮らしと言っても身の回りのことを今まで使用人にされてきた上に次期当主と言うことも相まって普通の学生が一人暮らしなどできないほどのセキュリティーのしっかりしたマンションに住んでいるが。
申し訳ないと思いつつ、身の回りの事は私が大学に行っている間にしてもらっている。
なので、私の部屋の鍵は実家の使用人をまとめている使用人頭でもある朝桐が管理しているので、こんな風に帰宅待ちされるとは思わなかった。
朝桐は私の質問にもちょっと言い難そうにしているので私にとって良くない白瀬の可能性が高い。
私がまっすぐ見ていると意を決したように朝桐は答えた。
「太一様がご婚約されまして」
「婚約?」
「はい。相手は東城グループの百合様です」
「東城グループ」
「はい。ですので、家族合わせの為に」
「…………」
私は二の句を言えなかった。
太一というのは私の異母姉弟だ。
実母がなくなった時私が幼く母親が必要だと言い張り、父は自身の愛人を後妻に据えたのだ。
すでにその時には太一も生まれており、連れ子として西園寺家に籍を入れている。
その弟に婚約者が出来たとは何とも言い難い。
次期当主である私には婚約者などいないのに、別に欲しくはないが、順番が違うだろって話だ。
それに私だって財閥グループの令嬢であり、いつかは西園寺グループを支えて行かなければいけない身の上なので情報は仕入れている。
そんな中で相手があの東城グループとは。
まぁ、本人たちが選んだ道なのだから何も言うつもりはないが。
ここでじっとしていても他のマンションの住人の邪魔になるし、私を連れて帰るまで朝桐も引かないだろうから仕方なく私は実家に帰る事にした。
「はぁ~、分かったわ」
「恐れ入ります」
朝桐はそういうと素早くそばに停めていた車の後部座席の扉を開けた。
私が乗り込むと扉を閉め、朝桐は運転席に座った。
「朝桐、私お腹すいてるの」
「わかりました。お嬢様の支度が整う頃には食事の用意が出来ているようにいたします」
「お願いね。そう、今日はニオイの付きにくいものにしてくれる?人と会うのでしょ」
「かしこまりました」
私は朝桐にそれだけ注文をすると背もたれに体を預けた。
数か月ぶりの実家だが何の思いもなかった。
ただ学業で疲れた体と頭を休めるように私は瞳を閉じた。
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