竜王の花嫁

桜月雪兎

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第二章

1、ルドワードの悩み①

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 結婚式から数日が過ぎた。
 結婚してすぐの夜はルドワードとアリシアは二人でアリシアの部屋で眠った。
 そう、眠ったのだ。何事もなく、それは仕方ないことでもあった。
 アリシアは良くも悪くも貴族の令嬢であった。そういう知識が全くないのだ。そんなアリシアにルドワードが手を出せるわけもなく、一緒に寝るだけの日々が続いた。
 アリシアの可愛い寝顔を見ながらそれで留まるのは限界があったがアリシアを怖がらせるわけにはいかないので結局、我慢の日々だ。
 そんな話をいまだに滞在しているシリウスやルークにルドワードがするとシリウスは大爆笑をし、ルークも笑いを抑えきれないようで口元を抑えながら下を向いているが声も漏れているし、何よりその肩が震えている。
「わははははは!」
「くっくっくっ!」
「シル!ルー!笑うな!!」
 ルドワードにしてみれば笑いごとではないので怒鳴った!
「いや、いや、これは傑作だろ」
「すみません。ですが、そうですか」
「こっち真剣に悩んでいるというのに」
 ルドワードは友人二人の対応にむくれた。
 そんなルドワードを見て二人もいつまでも笑っていることではないと思った。
 何せルドワードとアリシアはこのドラグーン大国の竜王と竜王妃だ。つまり絶対に世継ぎをつくる必要があるのだ。それに愛し合っている者の子供が欲しいと普通に思うことだろう。
 だからこそ、シリウスもルークも一緒に考えることにした。
「まぁ、そうだな」
「彼女は困らない程度に教育を受けていたようですが……というよりそれ以外することがなかったようで本などで学べることは何でも学んだようですが」
「まぁ、そんなもの、いくら何でも渡せないわな」
「それに彼女は貞操の危険を感じたことがあります。怖がる可能性もありますし」
「それなんだよ、俺が気にしているのわ」
 三人がそんな話をしているこの場所にはアリシアたちはいない。
 現在アリシアはスカルディアたちと一緒に城下に出掛けている。アリシアが一度の外出で城下に出るのが楽しみになり、複数の護衛付きでルドワードは許可した。反竜王勢がいなくなり、危険が少なくなったからだ。
 だからこそこんな話をしているのだが。
「まぁ、手っ取り早いのはそういう教育を受けることですが」
「そうなるか。だが、誰にだ?」
「経験のある同性が無難じゃないか?急にルドワードとなっても身構えるだけだろうし」
「となると……」
「残念ですがユーザリアからの侍女三人は未婚です。知識はあるとは思いますが、それなりの年齢ですし」
「リンはともかくマリアは無理だろう。あとはクレアか?」
「その辺が無難か。ディスタもまだ独身だしなぁ」
「あの人まだ独身でしたか」
 ルドワードの言葉にルークは意外そうな顔をした。
 ちょうどその時、呼ばれて部屋にやって来たディスタに聞こえ、ディスタはルークを睨むような眼をした。
 だが、そこは戦場でも、執務でも冷静に物事を行うルークなのでどこ吹く風のように気にもしていない。むしろ、傍にいたシリウスの方がその眼に一瞬、ビクッとなった。
「独身で悪いですか?」
「いいえ。ただ意外だっただけです」
「今は業務に専念したいだけです」
 どこか腑に落ちず不満そうな顔をしてディスタがぼやいた。
 ルドワードはそれに肩をすくめた。ディスタに言い寄る女性も少なくはないのだが本人がこのように頑なでなかなか良縁に恵まれないでいた。
 いくらドラクーン大国の国民が長寿の種でも早く身を固めて欲しいのは誰でも一緒なのだ。
「それで何の話をしていたのですか?」
「ああ、シアとのことだ」
 ルドワードはディスタにもう一度同じ説明をした。
 ディスタは笑うことはなかったが眉間にしわを寄せて考え込んでしまった。
「それはなかなか由々しき問題では?」
「ただ、経験と知識がない上に俺の腕の中で安心して眠っているのでなぁ」
「ただの惚気のように思うのですが?」
「俺もだ」
「いや、俺はシアとの子供が早く欲しい」
「私どもも早く御子ができる方が喜ばしいのですが」
「やはり知識を付けてそういうことをする必要があるということを教えるしかないだろう」
「そうなりますが、誰を教えに就かすかですよ。下手な者は就けれません」
 四人は候補となりそうな相手を考えていった。
 そう悩んでいると今回は護衛についていなかったジャックスがルドワードたちがいる部屋に来たことでディスタが思いついた。
「竜王、近衛隊の業務が終わったのでアリシア様の護衛に合流しようと思うのですが」
「あ、ああ。そうだな」
「そうです。いましたよ、経験があって、口も堅く、害意のない方が」
「ディスタ?」
「あの方に頼みましょう。そうすれば解決です」
「おい、いったい誰のことだ?」
「むしろ、何の話だ?」
 来て早々、首を傾げているルドワード・シリウス・ルークに対して満面の笑みのディスタを見てしまったジャックスは何かよからぬことが起こるのではないかと眉を顰めた。
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