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第一章
28、アルシードたちの家族
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裁判が終わってジャックスはカルディナとエンデリックを連れて実家であり、領主となったクレメント家に戻った。家臣たちに裁判の結果を報告するとともにカルディナとエンデリックの旅支度および同行人を選抜するためだ。
思いがけずも忙しくなってしまったジャックスだが幸せそうなカルディナとエンデリックを見て仕方ないと苦笑して一緒に向かったのをアリシアやルドワードたちは見ていた。
ルドワードはスカルディアとシリウス、ルークと共に今後の話をするために執務室の方に向かった。
残ったアルシードはアリシアの護衛となった。
そして、アリシアはリンたちをさっそく自分の部屋に呼んだ。ルイは用があるので後から来るということだ。
アリシアの部屋にいたのはマリアやリリアたちだ。リンが顔を見せるとリリアたちは喜び駆け寄った。マリアに至ってはリン飛びつく始末だ。リンはそんなマリアをよろめきながらも抱き留めた。
「リン!」
「マ、マリア!危ない!!」
「よかった、よかったよぉ~」
「リン、心配したよ」
「リリア」
「本当に心配したんだからね!リンまで急に消えちゃうから」
「ごめんなさい……エレナ」
「リンとアリシア様が無事に戻ってきた、それで十分よ」
「ごめんなさい、ありがとう」
リンは侍女仲間である五人に囲まれながら嬉しく涙を流した、感情のままに。そんなリンの姿を見てカイは微笑んでいた。大好きな姉の仲間に慕われた姿は嬉しくないはずがない。
アリシアはそんなカイのそばに来て話しかけた。
「ふふ、あんなリン今まで見たことないですね」
「はい、ありがとうございます、アリシア様」
「ん?」
「姉やルイを守ってくださり」
「私は自分の大切な人たちに傍にいて欲しいだけですよ。もちろん、その中にはカイくんもいますからね」
「あ、ありが、とう」
「ふふ」
アリシアは照れ隠しにそっぽ向くカイのことが微笑ましい。そんな話をしているとアルシードが近くにやってきた。
「アリシア様、リンの弟二人は近衛隊で預かるんですよね?」
「はい、そうなりました」
「なら、俺とジャックス隊長のいる第一近衛隊で引き取ろうと思いますがよろしいでしょうか?」
「はい、その方がいいと思います。他の近衛隊では色々大変でしょう。守ってあげてください」
「了解しました」
アリシアは自分たちの一部を知ってカイやルイをいじめるような人が出ないように知っている人物の目の届くところに置くのがいいと思った。それはアルシードも同じなのですぐに了承した。
アリシアはリンの方を見ながら含みのある言い方でアルシードに話した。
「それに副隊長さんがそばにいる方がカイくんもルイくんもいいでしょう。人となりが見えて」
「え?」
「あ、そうですね。その方が安心します」
「何が?」
「姉さんを任せられる人か見極めないと」
「おい?!」
「これからよろしくお願いします、副隊長殿」
「んん~~~、なんだか釈然としないが、まぁ、いい。よろしくな」
二人がそんな挨拶をしていると何も知らないルイが戻ってきた。その手にはある袋があった。
「ただいま」
「お帰りなさい、どこに行ってたのですか?」
「これを取りに」
「これは!」
「アリシア様の落とし物でしょ、中を見てすぐにわかったよ」
「はい、ありがとうございます」
ルイが持ってきたのはアリシアが連れ去らわれる時に落とした雑貨屋の袋だ。その中身はみんなへの贈り物だ。
アリシアはその袋を大事に受け取り微笑んだ。ルイはアリシアの笑顔が見られたのでつられて笑った。
それでもアルシードには不思議だった。最初にルイと会った時は何も持っていなかった。それにすぐに投獄されたのだ、どこに置いていたのか。
「最初会った時持ってなかったよな?」
「うん、最初に会った屋根の上に置いてたんだ。濡れないように上着で包んで」
「なるほど」
アルシードは納得した。屋根の上に登る者はほとんどいない。それはドラグーンの屋根が登れるようになっていないのだ。だが隠れるのには適している。
それは雪よけように角度を急にしているのだ。なるべく雪が落ちやすいように。だが、それでは雪下ろしの際に人が落ちてしまうので最後の少しの所だけ斜度を変えている。そこが人が入れる場所になっている。それがこのドラグーン大国の一般的な建物のつくりになっている。
だから荷物を隠すこともできるのだ。
「ふふ、無くならなくてよかったです」
「大事そうですね」
「はい!大事です。皆さんが来たらのお楽しみです」
「そうだね」
「???」
アリシアとルイだけが頷き合い、その他の面々は首を傾げている。二人が話す様子がないので仕方なく全員は他のメンバーが集まるまで雑談をすることにした。
「もうすぐですね、結婚式」
「そうですね、そのために裁判をすぐにしたのですから」
「そうだな、おかげで何の憂いもなく式を迎えられる」
「はい、これでルドワード様もアリシア様も安心ですね」
「ふふ、これもみんなのおかげです」
アリシアが嬉しそうには礼を言うとリンたち三姉弟は顔を暗くした。本人たちには自分たちがやってしまったという思いが強いのだ。
「いえ、私はむしろ」
「リンたちは仕方なかった。それは裁判で判明したんだ、気にするな」
「そうだよ。むしろ今後何かしでかしそうな人たちがいなくなったんだから、いいことだよ」
「いや、それは……」
「俺も違う気がする」
「なんで?!!」
マリアがリンたちを元気づけようとして言った言葉はみんなの苦笑を買うことになった。暗くなっていった雰囲気はそれで吹っ飛んだがマリアとしては予想と違う反応が返ってきたことに不満げだ。そんな妹を見てアルシードは内心微笑ましかった。
「あ~~、こんな妹ですまない」
「何でお兄ちゃんまで謝るの?!!」
「私はマリアのこと言えませんね、同じように考えてしまいそうです」
「アリシア様~」
「アリシア様はマリアを甘やかしすぎです。もっと厳しくしてください」
「ええ~~~」
アリシアが庇うもアルシードはそれを制した。これ以上はマリアが付け上がってしまう気がしたからだ。だが、ことは思うようにはいかないもので沈んでしまいそうな気持ちを上げてくれたマリアを思ってリンがフォローしたのだ。
「まぁまぁ、アルシード様も本気ではないはずですよ、マリア」
「いや、そこはフォローしなくていい。付け上がる」
「ウフフフ、そうなんだ、お兄ちゃん」
「ほら、付け上がった。お前は大人しくできないのか!!」
「わ~、リン、お兄ちゃんが怖い~」
「そんな可愛げのあるヤツじゃないだろ、お前は!」
「ひっど~い」
アリシアはリンを挟んで言い争いをしているアルシードとマリアを微笑ましく見ていた。それはリリアたちも同じだ。
間に挟まれたリンは困り顔でアリシアたちに助けを求めた。カイとルイも苦笑してアリシアの方を見た。この場をどうにかできるのはアリシアだけだと思ったからだ。
アリシアは三人の視線に苦笑したが止めることにした。
「ふふ、仲のいい兄弟ですね」
「あ、すみません、アリシア様」
「いいですよ、微笑ましいので」
「いや、そう言われると、なんだか」
「てれる?」
「てれはしない、マリアは一度ジルの所に連れていくしかないな」
「いっや~~~!ジル兄はいや~~!!」
アルシードの言葉にその場にいた全員が首を傾げた。
「ジル?」
「ああ、ジルっていうのはうちの次男です。ジルフォードって言います、王立図書館の司書長をしているんです」
「王立図書館ってここに併設されている図書室ですか?」
「はい、門近くにある図書室が王立図書館です。最初の時にスカルディア様と一緒に行かれた場所です」
「なるほど。ですが、見かけたことがないと思います」
「そうですね、基本的に図書館の司書長室に籠っているので。忙しいのは分かるんですがほっとくと籠りっぱなしになる、ある意味問題児です」
アルシードは苦笑しながら答えた。アリシアたちは一つの疑問が浮かんだ。ジルと言う人物が次男でマリアが末っ子。なら、この場にいるアルシードはどの立ち位置にいるのか。クレアもいる。
「クレアさんや副隊長さんは?」
「クレアは長女ですよ、俺はこれでも長男です。と言ってもうちは三男のガイが後を継ぐことになっているんです」
「え?何でですか?」
「俺がまず家を継ぐのに不向きだからです。近衛隊でいる方が性に合っていますし、ジルはさっきも言いましたが職場に引き籠ってばかりでこれもまた後を継ぐのに合わないんです」
「ガイ兄以外は女ばかりなんです」
「なので、うちは三男が継ぎます。ガイもそれを納得しています。まぁ、何かしたいんなら別でしょうけど」
マリアとアルシードの言葉に頷いた。どうやらこれはグレイ家では決まったことのようだ。
それでも気になってしまうのでアリシアは尋ねた。もちろんと言うべきかその場にいた全員が続きを気にしている。そんな状況にアルシードとマリアは苦笑した。それでも家のことは好きではないのか二人ともが嫌そうな顔をしている。
「と言うのは?」
「ガイが他にやりたいことが見つかったらという事です。そうなったら規定通り俺が継ぎます。まぁ、近衛隊継続が条件ですけど」
「複雑ですね」
「無駄に歴史ばかり長い家系なのでね、困ったもんですよ」
「副隊長さんは家が嫌いですか?」
「いや、親と合わないだけです。長男だから、後継ぎだからといろいろ無理やりさせられてきたのでね。傍から見たら場違いな考えなのかもしれませんがもっと自由にしたかったんですよ」
アルシードの表情からそれ以上のこともあったのは予測できたがアルシードが何も言わないのをこれ以上深堀するべきではないと全員が判断した。
「……羨ましいです、私たちには」
「うん」
「そんなこと言えなかったもんね」
それでもリンたちには羨ましかった。家族全員が一緒にいられる環境が。そんな思いをそのままぽつりと言った。だがその言葉は全員の耳に入っていた。
アルシードは頭を掻きながらリンに頭を下げた。
急にアルシードが頭を下げたことにリンはびっくりした。
「ああ~、すまん」
「い、いえ、アルシード様が悪いわけでは」
「いや、今のは軽率な発言だった」
「そ、そんな、ことは」
お互いの顔を見つめ合うような形になり、リンとアルシードは顔を赤く染めて固まってしまった。
そんな二人を見てアリシアたちは微笑ましく思った。当事者の兄妹であるマリアは面白くなさそうに、カイとルイは苦笑している。
「ふふ、二人とも顔が真っ赤ですよ」
「そうね」
「何か、面白くない」
「いや、面白いとかじゃなくて」
「うん」
「ん?どうかしたのか?」
そんな話をしているとルドワードたちがやってきた。ルドワードの気配に気づいていたリリアが扉を開けたのでそのまま入ってきたのだ。
だが、入ってみれば苦笑している者、面白くなさそうにしている者、微笑ましそうに見ている者、そのすべての視線の先には顔を赤く染めた二人がいる。
そんな不思議な光景に首を傾げているルドワードにアリシアが気付いて側に来た。
「ルド様、もう終わったのですか?」
「ああ、終わった」
「お疲れ様です」
「それで、なんの話をしてたんだ?」
「副隊長さんの家の話です」
「アルの?」
「アル?」
「アルシードのことだ、普段はそう呼んでいる」
「そうでしたか、仲がいいですね」
「ああ」
スカルディアのつい口に出た言葉にアリシアが反応した、親しそうに呼ぶので。
スカルディアもアリシアの前で呼んだことがないのに気づいて説明した。それにアリシアは微笑ましそうに見ている。それはアリシアの横にいるルドワードも同じだ。
急にルドワードとアリシアからそんな目で見られる事になったスカルディアは話題を変えるためにいまだに顔が赤いアルシードに声をかけた。
「それで何でお前とリンが顔を赤くしてるんだ?」
「そこに触れるな」
「……まぁ、いいけど。アルの家族と言えばジルの奴がさっきついに運ばれたぞ、医務室に」
「はぁ?!」
「ジル兄が?!」
アルシードは急に出た名前に驚いた。それはさっきまで話していた弟の名前であり、医務室に運ばれたとなれば一大事だ。
だが、いつものことなのでスカルディアは驚きもなく説明を続けた。それには一緒に来ていたディスタも頷く事しかできない。
「ああ、最近忙しかっただろ。司書たちも動き回っていたらしくてな」
「ジルフォードの様子を見れる者がいなかったようだ」
「やっと落ち着いた今になって発見されました」
「いや、今発見って?!ジルの容体は?」
「まぁ、いつもの通り、栄養失調と睡眠不足です。過労まではいかなかったのはその手前で倒れたからでしょうね」
「いやいや、それは……」
「報告は今ですが、昨日の昼に発見されて、すでに回復しています」
「あ、回復済みですか」
「ええ、このまま引き込まれてもあれですし、アリシア様との面会も含めて連れてきています。クレアと一緒に」
アルシードの様子にディスタやルドワードは苦笑していた。スカルディアはよくあることなので呆れていた。それはマリアもそうだ。
何も知らないアリシアたちはほっとした様子だ。
そしてディスタの後ろからクレアと一緒に猫の亜人の男性が姿を現した。アルシードより赤みが増したくせっ毛の髪をしている。耳や尻尾は手入れ不足の為か短毛と長毛の中間のような感じになっている。
瞳は兄妹同様の琥珀色をしている。その瞳は少し垂れており、右側にモノクルをかけている。
知的な印象はあまりなく、白い肌が不健康を物語っている。
回復したばかりだからなのか、もともとこんな感じなのかアリシアたちには判断がつかない。
アルシードの前に行くと少しばつが悪そうにしている。
「やぁ、兄さん。久しぶり、相変わらず素晴らしい筋肉で」
「何でそんな挨拶になるんだ。ジル!あれほど、一日一回は部屋を出て食事をするように昔っから言ってるだろ!!何でいまだにできないんだ?!!!」
「いや、時間の経過を忘れて」
「忘れるな!と言うより、あの部屋には時間を音で知らせる時計を置いておいただろ?」
「うるさいって取り外された」
「どこの馬鹿だ。言え、今すぐ血祭りにあげてやる」
地を這うような声でそう言ったアルシードの目は座っている。グレイ兄妹たちの毛は逆立った。こうなっては手に負えないのだ。まぁ、こうなるのは姉弟や親しい人物に何かがあった時だけなのだが。
ジルフォードはアルシードから視線を離してとぼけた。さすがに同僚を今の状態のアルシードに合わせるのは死を意味しかねないからだ。
「………………………忘れた」
「ジル、ジルフォード。兄ちゃんの目を見て言いなさい」
「……言えません、さすがに」
ジルフォードは冷や汗をかいた。第一近衛隊の副隊長を担うアルシードの力をよく理解しているからだ。時計を外すことに容認してしまったジルフォードにも責任があると思っているから余計に。
そんな兄二人のことを見てクレアはため息をつきながら進言した。
「アル兄、それぐらいにしなよ。さすがにジルだって同じ司書仲間売れないよ、アル兄は本当に血祭りにあげるから」
「そうなの?」
「うん、昔ガイ兄をいじめていた子たちが大怪我して病院送りになっていた」
「まぁ!」
「ジルやガイとマリアに何かあると見境ないのよ、この馬鹿兄は」
「馬鹿とはなんだ、馬鹿とは。言っとくがクレアやスカルに何かあっても俺は許すつもりはないぞ」
「……知ってるわよ」
「まさかの飛び火だ」
急に名前の挙がったスカルディアは困ったような顔をしつつもその頬は少し赤くなっていた。それを見たルドワードとアリシアは微笑んでいた。その光景にスカルディアはさらにいたたまれなかった。
「スカルに良い友がいて、俺は嬉しい」
「そうですね、ルド様」
「……そうかよ」
スカルディアは二人から顔をそむけた。
いまだに詰め寄っているアルシードにアリシアは苦笑しながら声をかけた。アリシアの声にアルシードははっとしてバツが悪そうに謝った。
「すみません、アリシア様」
「落ち着いて何よりです」
「本当にすみません。こいつがさっき話していたうちの次男です」
「初めまして、花嫁様。王立図書館で司書長をしています、ジルフォード・グレイです」
「初めまして、アリシアと申します」
アリシアを見てジルフォードは顔をそむけた。ジルフォードは基本引きこもりなのでこのように異性と接する機会が少ないのだ、兄妹以外で。
顔をそむけられたアリシアやリリアたちは首をかしげた。それを見たグレイ家兄妹やスカルディアにルドワードは苦笑していた。それでもジルフォードは声をかけた。
「マリアやクレア姉さんがいつも迷惑かけています」
「ちょっと、ジル。それはどういう意味?」
「そうだよ!アル兄だって側にいるのに!!」
「アル兄は頼りになるから…該当しない。でも、二人は迷惑かける方が多い」
「失礼しちゃうわ!」
「本当だよ!!」
ジルフォードに言われてクレアやマリアはむくれた。それを見て全員が笑った。
思いがけずも忙しくなってしまったジャックスだが幸せそうなカルディナとエンデリックを見て仕方ないと苦笑して一緒に向かったのをアリシアやルドワードたちは見ていた。
ルドワードはスカルディアとシリウス、ルークと共に今後の話をするために執務室の方に向かった。
残ったアルシードはアリシアの護衛となった。
そして、アリシアはリンたちをさっそく自分の部屋に呼んだ。ルイは用があるので後から来るということだ。
アリシアの部屋にいたのはマリアやリリアたちだ。リンが顔を見せるとリリアたちは喜び駆け寄った。マリアに至ってはリン飛びつく始末だ。リンはそんなマリアをよろめきながらも抱き留めた。
「リン!」
「マ、マリア!危ない!!」
「よかった、よかったよぉ~」
「リン、心配したよ」
「リリア」
「本当に心配したんだからね!リンまで急に消えちゃうから」
「ごめんなさい……エレナ」
「リンとアリシア様が無事に戻ってきた、それで十分よ」
「ごめんなさい、ありがとう」
リンは侍女仲間である五人に囲まれながら嬉しく涙を流した、感情のままに。そんなリンの姿を見てカイは微笑んでいた。大好きな姉の仲間に慕われた姿は嬉しくないはずがない。
アリシアはそんなカイのそばに来て話しかけた。
「ふふ、あんなリン今まで見たことないですね」
「はい、ありがとうございます、アリシア様」
「ん?」
「姉やルイを守ってくださり」
「私は自分の大切な人たちに傍にいて欲しいだけですよ。もちろん、その中にはカイくんもいますからね」
「あ、ありが、とう」
「ふふ」
アリシアは照れ隠しにそっぽ向くカイのことが微笑ましい。そんな話をしているとアルシードが近くにやってきた。
「アリシア様、リンの弟二人は近衛隊で預かるんですよね?」
「はい、そうなりました」
「なら、俺とジャックス隊長のいる第一近衛隊で引き取ろうと思いますがよろしいでしょうか?」
「はい、その方がいいと思います。他の近衛隊では色々大変でしょう。守ってあげてください」
「了解しました」
アリシアは自分たちの一部を知ってカイやルイをいじめるような人が出ないように知っている人物の目の届くところに置くのがいいと思った。それはアルシードも同じなのですぐに了承した。
アリシアはリンの方を見ながら含みのある言い方でアルシードに話した。
「それに副隊長さんがそばにいる方がカイくんもルイくんもいいでしょう。人となりが見えて」
「え?」
「あ、そうですね。その方が安心します」
「何が?」
「姉さんを任せられる人か見極めないと」
「おい?!」
「これからよろしくお願いします、副隊長殿」
「んん~~~、なんだか釈然としないが、まぁ、いい。よろしくな」
二人がそんな挨拶をしていると何も知らないルイが戻ってきた。その手にはある袋があった。
「ただいま」
「お帰りなさい、どこに行ってたのですか?」
「これを取りに」
「これは!」
「アリシア様の落とし物でしょ、中を見てすぐにわかったよ」
「はい、ありがとうございます」
ルイが持ってきたのはアリシアが連れ去らわれる時に落とした雑貨屋の袋だ。その中身はみんなへの贈り物だ。
アリシアはその袋を大事に受け取り微笑んだ。ルイはアリシアの笑顔が見られたのでつられて笑った。
それでもアルシードには不思議だった。最初にルイと会った時は何も持っていなかった。それにすぐに投獄されたのだ、どこに置いていたのか。
「最初会った時持ってなかったよな?」
「うん、最初に会った屋根の上に置いてたんだ。濡れないように上着で包んで」
「なるほど」
アルシードは納得した。屋根の上に登る者はほとんどいない。それはドラグーンの屋根が登れるようになっていないのだ。だが隠れるのには適している。
それは雪よけように角度を急にしているのだ。なるべく雪が落ちやすいように。だが、それでは雪下ろしの際に人が落ちてしまうので最後の少しの所だけ斜度を変えている。そこが人が入れる場所になっている。それがこのドラグーン大国の一般的な建物のつくりになっている。
だから荷物を隠すこともできるのだ。
「ふふ、無くならなくてよかったです」
「大事そうですね」
「はい!大事です。皆さんが来たらのお楽しみです」
「そうだね」
「???」
アリシアとルイだけが頷き合い、その他の面々は首を傾げている。二人が話す様子がないので仕方なく全員は他のメンバーが集まるまで雑談をすることにした。
「もうすぐですね、結婚式」
「そうですね、そのために裁判をすぐにしたのですから」
「そうだな、おかげで何の憂いもなく式を迎えられる」
「はい、これでルドワード様もアリシア様も安心ですね」
「ふふ、これもみんなのおかげです」
アリシアが嬉しそうには礼を言うとリンたち三姉弟は顔を暗くした。本人たちには自分たちがやってしまったという思いが強いのだ。
「いえ、私はむしろ」
「リンたちは仕方なかった。それは裁判で判明したんだ、気にするな」
「そうだよ。むしろ今後何かしでかしそうな人たちがいなくなったんだから、いいことだよ」
「いや、それは……」
「俺も違う気がする」
「なんで?!!」
マリアがリンたちを元気づけようとして言った言葉はみんなの苦笑を買うことになった。暗くなっていった雰囲気はそれで吹っ飛んだがマリアとしては予想と違う反応が返ってきたことに不満げだ。そんな妹を見てアルシードは内心微笑ましかった。
「あ~~、こんな妹ですまない」
「何でお兄ちゃんまで謝るの?!!」
「私はマリアのこと言えませんね、同じように考えてしまいそうです」
「アリシア様~」
「アリシア様はマリアを甘やかしすぎです。もっと厳しくしてください」
「ええ~~~」
アリシアが庇うもアルシードはそれを制した。これ以上はマリアが付け上がってしまう気がしたからだ。だが、ことは思うようにはいかないもので沈んでしまいそうな気持ちを上げてくれたマリアを思ってリンがフォローしたのだ。
「まぁまぁ、アルシード様も本気ではないはずですよ、マリア」
「いや、そこはフォローしなくていい。付け上がる」
「ウフフフ、そうなんだ、お兄ちゃん」
「ほら、付け上がった。お前は大人しくできないのか!!」
「わ~、リン、お兄ちゃんが怖い~」
「そんな可愛げのあるヤツじゃないだろ、お前は!」
「ひっど~い」
アリシアはリンを挟んで言い争いをしているアルシードとマリアを微笑ましく見ていた。それはリリアたちも同じだ。
間に挟まれたリンは困り顔でアリシアたちに助けを求めた。カイとルイも苦笑してアリシアの方を見た。この場をどうにかできるのはアリシアだけだと思ったからだ。
アリシアは三人の視線に苦笑したが止めることにした。
「ふふ、仲のいい兄弟ですね」
「あ、すみません、アリシア様」
「いいですよ、微笑ましいので」
「いや、そう言われると、なんだか」
「てれる?」
「てれはしない、マリアは一度ジルの所に連れていくしかないな」
「いっや~~~!ジル兄はいや~~!!」
アルシードの言葉にその場にいた全員が首を傾げた。
「ジル?」
「ああ、ジルっていうのはうちの次男です。ジルフォードって言います、王立図書館の司書長をしているんです」
「王立図書館ってここに併設されている図書室ですか?」
「はい、門近くにある図書室が王立図書館です。最初の時にスカルディア様と一緒に行かれた場所です」
「なるほど。ですが、見かけたことがないと思います」
「そうですね、基本的に図書館の司書長室に籠っているので。忙しいのは分かるんですがほっとくと籠りっぱなしになる、ある意味問題児です」
アルシードは苦笑しながら答えた。アリシアたちは一つの疑問が浮かんだ。ジルと言う人物が次男でマリアが末っ子。なら、この場にいるアルシードはどの立ち位置にいるのか。クレアもいる。
「クレアさんや副隊長さんは?」
「クレアは長女ですよ、俺はこれでも長男です。と言ってもうちは三男のガイが後を継ぐことになっているんです」
「え?何でですか?」
「俺がまず家を継ぐのに不向きだからです。近衛隊でいる方が性に合っていますし、ジルはさっきも言いましたが職場に引き籠ってばかりでこれもまた後を継ぐのに合わないんです」
「ガイ兄以外は女ばかりなんです」
「なので、うちは三男が継ぎます。ガイもそれを納得しています。まぁ、何かしたいんなら別でしょうけど」
マリアとアルシードの言葉に頷いた。どうやらこれはグレイ家では決まったことのようだ。
それでも気になってしまうのでアリシアは尋ねた。もちろんと言うべきかその場にいた全員が続きを気にしている。そんな状況にアルシードとマリアは苦笑した。それでも家のことは好きではないのか二人ともが嫌そうな顔をしている。
「と言うのは?」
「ガイが他にやりたいことが見つかったらという事です。そうなったら規定通り俺が継ぎます。まぁ、近衛隊継続が条件ですけど」
「複雑ですね」
「無駄に歴史ばかり長い家系なのでね、困ったもんですよ」
「副隊長さんは家が嫌いですか?」
「いや、親と合わないだけです。長男だから、後継ぎだからといろいろ無理やりさせられてきたのでね。傍から見たら場違いな考えなのかもしれませんがもっと自由にしたかったんですよ」
アルシードの表情からそれ以上のこともあったのは予測できたがアルシードが何も言わないのをこれ以上深堀するべきではないと全員が判断した。
「……羨ましいです、私たちには」
「うん」
「そんなこと言えなかったもんね」
それでもリンたちには羨ましかった。家族全員が一緒にいられる環境が。そんな思いをそのままぽつりと言った。だがその言葉は全員の耳に入っていた。
アルシードは頭を掻きながらリンに頭を下げた。
急にアルシードが頭を下げたことにリンはびっくりした。
「ああ~、すまん」
「い、いえ、アルシード様が悪いわけでは」
「いや、今のは軽率な発言だった」
「そ、そんな、ことは」
お互いの顔を見つめ合うような形になり、リンとアルシードは顔を赤く染めて固まってしまった。
そんな二人を見てアリシアたちは微笑ましく思った。当事者の兄妹であるマリアは面白くなさそうに、カイとルイは苦笑している。
「ふふ、二人とも顔が真っ赤ですよ」
「そうね」
「何か、面白くない」
「いや、面白いとかじゃなくて」
「うん」
「ん?どうかしたのか?」
そんな話をしているとルドワードたちがやってきた。ルドワードの気配に気づいていたリリアが扉を開けたのでそのまま入ってきたのだ。
だが、入ってみれば苦笑している者、面白くなさそうにしている者、微笑ましそうに見ている者、そのすべての視線の先には顔を赤く染めた二人がいる。
そんな不思議な光景に首を傾げているルドワードにアリシアが気付いて側に来た。
「ルド様、もう終わったのですか?」
「ああ、終わった」
「お疲れ様です」
「それで、なんの話をしてたんだ?」
「副隊長さんの家の話です」
「アルの?」
「アル?」
「アルシードのことだ、普段はそう呼んでいる」
「そうでしたか、仲がいいですね」
「ああ」
スカルディアのつい口に出た言葉にアリシアが反応した、親しそうに呼ぶので。
スカルディアもアリシアの前で呼んだことがないのに気づいて説明した。それにアリシアは微笑ましそうに見ている。それはアリシアの横にいるルドワードも同じだ。
急にルドワードとアリシアからそんな目で見られる事になったスカルディアは話題を変えるためにいまだに顔が赤いアルシードに声をかけた。
「それで何でお前とリンが顔を赤くしてるんだ?」
「そこに触れるな」
「……まぁ、いいけど。アルの家族と言えばジルの奴がさっきついに運ばれたぞ、医務室に」
「はぁ?!」
「ジル兄が?!」
アルシードは急に出た名前に驚いた。それはさっきまで話していた弟の名前であり、医務室に運ばれたとなれば一大事だ。
だが、いつものことなのでスカルディアは驚きもなく説明を続けた。それには一緒に来ていたディスタも頷く事しかできない。
「ああ、最近忙しかっただろ。司書たちも動き回っていたらしくてな」
「ジルフォードの様子を見れる者がいなかったようだ」
「やっと落ち着いた今になって発見されました」
「いや、今発見って?!ジルの容体は?」
「まぁ、いつもの通り、栄養失調と睡眠不足です。過労まではいかなかったのはその手前で倒れたからでしょうね」
「いやいや、それは……」
「報告は今ですが、昨日の昼に発見されて、すでに回復しています」
「あ、回復済みですか」
「ええ、このまま引き込まれてもあれですし、アリシア様との面会も含めて連れてきています。クレアと一緒に」
アルシードの様子にディスタやルドワードは苦笑していた。スカルディアはよくあることなので呆れていた。それはマリアもそうだ。
何も知らないアリシアたちはほっとした様子だ。
そしてディスタの後ろからクレアと一緒に猫の亜人の男性が姿を現した。アルシードより赤みが増したくせっ毛の髪をしている。耳や尻尾は手入れ不足の為か短毛と長毛の中間のような感じになっている。
瞳は兄妹同様の琥珀色をしている。その瞳は少し垂れており、右側にモノクルをかけている。
知的な印象はあまりなく、白い肌が不健康を物語っている。
回復したばかりだからなのか、もともとこんな感じなのかアリシアたちには判断がつかない。
アルシードの前に行くと少しばつが悪そうにしている。
「やぁ、兄さん。久しぶり、相変わらず素晴らしい筋肉で」
「何でそんな挨拶になるんだ。ジル!あれほど、一日一回は部屋を出て食事をするように昔っから言ってるだろ!!何でいまだにできないんだ?!!!」
「いや、時間の経過を忘れて」
「忘れるな!と言うより、あの部屋には時間を音で知らせる時計を置いておいただろ?」
「うるさいって取り外された」
「どこの馬鹿だ。言え、今すぐ血祭りにあげてやる」
地を這うような声でそう言ったアルシードの目は座っている。グレイ兄妹たちの毛は逆立った。こうなっては手に負えないのだ。まぁ、こうなるのは姉弟や親しい人物に何かがあった時だけなのだが。
ジルフォードはアルシードから視線を離してとぼけた。さすがに同僚を今の状態のアルシードに合わせるのは死を意味しかねないからだ。
「………………………忘れた」
「ジル、ジルフォード。兄ちゃんの目を見て言いなさい」
「……言えません、さすがに」
ジルフォードは冷や汗をかいた。第一近衛隊の副隊長を担うアルシードの力をよく理解しているからだ。時計を外すことに容認してしまったジルフォードにも責任があると思っているから余計に。
そんな兄二人のことを見てクレアはため息をつきながら進言した。
「アル兄、それぐらいにしなよ。さすがにジルだって同じ司書仲間売れないよ、アル兄は本当に血祭りにあげるから」
「そうなの?」
「うん、昔ガイ兄をいじめていた子たちが大怪我して病院送りになっていた」
「まぁ!」
「ジルやガイとマリアに何かあると見境ないのよ、この馬鹿兄は」
「馬鹿とはなんだ、馬鹿とは。言っとくがクレアやスカルに何かあっても俺は許すつもりはないぞ」
「……知ってるわよ」
「まさかの飛び火だ」
急に名前の挙がったスカルディアは困ったような顔をしつつもその頬は少し赤くなっていた。それを見たルドワードとアリシアは微笑んでいた。その光景にスカルディアはさらにいたたまれなかった。
「スカルに良い友がいて、俺は嬉しい」
「そうですね、ルド様」
「……そうかよ」
スカルディアは二人から顔をそむけた。
いまだに詰め寄っているアルシードにアリシアは苦笑しながら声をかけた。アリシアの声にアルシードははっとしてバツが悪そうに謝った。
「すみません、アリシア様」
「落ち着いて何よりです」
「本当にすみません。こいつがさっき話していたうちの次男です」
「初めまして、花嫁様。王立図書館で司書長をしています、ジルフォード・グレイです」
「初めまして、アリシアと申します」
アリシアを見てジルフォードは顔をそむけた。ジルフォードは基本引きこもりなのでこのように異性と接する機会が少ないのだ、兄妹以外で。
顔をそむけられたアリシアやリリアたちは首をかしげた。それを見たグレイ家兄妹やスカルディアにルドワードは苦笑していた。それでもジルフォードは声をかけた。
「マリアやクレア姉さんがいつも迷惑かけています」
「ちょっと、ジル。それはどういう意味?」
「そうだよ!アル兄だって側にいるのに!!」
「アル兄は頼りになるから…該当しない。でも、二人は迷惑かける方が多い」
「失礼しちゃうわ!」
「本当だよ!!」
ジルフォードに言われてクレアやマリアはむくれた。それを見て全員が笑った。
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