竜王の花嫁

桜月雪兎

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第一章

17、双子の

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 アリシアたちが楽しく話をしているのを影から見ている者がいた。その者はルドワードたちが気付く前にその場を離れた。
 ルドワードたちから離れ、ある部屋に入った。そこにはその者の帰りを持つ存在がいた。
「お帰り」
「ただいま」
「首尾は?」
 二人はその部屋に誰も来ないのを把握しているが念のため周りの気配に気をつけ、屋根裏にて小声で話をしている。
 見てきた方は思い出して苦笑していた。
 二人とも覆面をしているのでその表情は分かりにくいがお互いにはわかっていた。
「まぁ、仲は良さげだよ。あの・・スカルディアが懐いているぐらいだしね」
あの・・スカルディアが?」
「そう、花嫁さんの為に動いたみたいだし」
「あのブラコンが兄貴に反論するなんて今までなかったのに」
「意外と要注意人物だったりして」
 待っていた方は話を聞いて驚いた。
 ブラコンで有名なスカルディアは一部を除いて排他的ですべての中心が兄であるルドワードのため誰かに懐いたり、誰かのためにルドワードに反論することもない。
 だが今回初めて起きたのだ。関心が向かないわけがない。見てきた方はそのままの感想を呟いた。
「それはそうと主人にはどう報告する?」
「もう仲良しで甘々ですよって言っとく!」
「甘々って」
「いや、こっちが呆れるくらい雰囲気が甘いよ!スカルディアたちも呆れていたし」
「なら相違ないか。あー、俺あの主人嫌いなんだよな」
 彼らの主人に対して報告するのに相談した。
 見てきた方はありのまま報告することにしていた。それによって今後どうなるかわかっていたが彼らは主人に嘘をつけない様になっていた。
 だが思うところは二人ともあるようだ。
「僕もだけど、仕方ないじゃん。主人交代してしまったんだし」
「あ~あ、どうせ代わるんならもっといい主人が良かった」
「諦めよう、僕たちには主人を決める権利がないんだよ」
「わかってる」
 二人は自分たちの主人に対しての愚痴をこぼしながら自分たちの立場を再確認することになってしまった。
 二人は自分たちの主人に報告するためにその場を離れ、主人の屋敷に向かった。

 ***

 二人が主人の屋敷についてから主人の執務室の屋根裏に向かった。
 屋根裏につくと客人がいたため気配を消してその場で待機した。
 だが主人には二人が戻ったことが分かっていた。
「双子か、どうだった?」
「報告しても?」
「構わん、この方々は仲間だ」
「ああ、ぜひ聞かして欲しい」
「どうでしたの?」
「は!では報告させていただきます」
 二人もとい双子の見てきた方が報告を始めた。その間、待っていた方が現在いるメンバーを見ていた。それは確かに主人が仲間と言うわけだ。同じ考えを持った面々がその場に集っている。
「……と言う感じでした」
「そうか、どうやら我々が思っている以上に進展しそうですな」
「いくら盟約の証と言え人間の血を王族に入れるとは」
「本当ですわ。親密な仲となれば早めに対処しなくては」
「ああ、竜王にはわかっていただきたいものですな。人間たちが我々にしてきた行いを」
 双子は屋根裏におり覆面しているため周りにはわからないが顔に出さず、自分たち立場に嫌気がさしていた。選べなかったとはいえほの暗い場所での暗躍は本来の双子の性格には合っていない。
 面々の会話を聞いてこの後の命令に予測を立てた。
「さっきの報告によれば竜王と花嫁は街にでるのだな」
「その予定です。まだ日取りは決まっていませんが」
「花嫁が街に出た際は後をつけ、生け捕りしろ」
「生け捕りで?」
 双子は主人の命令に少し違和感を覚えた。この主人やメンバーならすぐにでも殺せというと思っていたからだ。だが、それ以上に姑息だと双子はすぐに理解した。
「そうだ。無暗に殺してしまえばユーザリア側からも何かしら来るだろう」
「生け捕りにしてその後はどういたします?」
「簡単なことだ。子供が出来ないようにすればいい」
「なるほど、子供ができなければ問題はありませんね。ですがそれだけでいいのですか?」
「いるのは仕方ない。それ以上はゆっくり時間をかけないと怪しまれるしな」
「確かに」
 何が楽しいかの分からないが笑っている面々を見て双子は腹の底が絞められるような感じがした。二人とも代わり交代でアリシアを見ていた。明るく人を微笑ましくさせるその言動に二人も癒されていた。そんな相手にひどいことをしようと考えているこの面々が正直腹立たしかった。だが主人を選べない二人にはどうすることもできないのだ。
「分かったな、街に出掛けた時花嫁を生け捕りにするのだ」
「……御意」
 二人は自分たちに割り振られた小屋に戻った。
 小屋も小屋、人が暮らすには適さないそれはただ雨風がしのげるだけのようなものだ。食料は冷えきった物が運ばれてくるのみ。それでいて必要以上の労働、悪条件もいいところだ。
 二人がこうなった生い立ちがそうさせる。
 小屋に戻り、誰にも聞かれる心配がないのをいいことに待っていた方が声を荒げた。
「何だよ!何でそうなるんだよ!!」
「ルイ、落ち着きなよ」
「カイはこれでいいのかよ!!」
「僕たちにはどうすることもできないよ……本当に嫌になるけど」
「カイ、花嫁様。どうなるのかな?」
「ルイ」
「俺、嫌だよ。あんなにいい人が傷つくなんて」
「ルイ、ルイはいい子だね」
「答えになってねぇよ、バカ兄貴」
「そうだね」
 カイは分かっていた。ここに連れてこられたらアリシアは妊娠できなくさせられる。それは女性にとってとても辛いことだ。それも思い合っている同士、互いの子供が欲しくないわけがない。それをできなくするのだ。それも非情な方法で。
 一方のルイはアリシアがどんな目にあうかまではわからない。
 ルイはカイが守ってきた分純粋なのだ。どんなにほの暗い場所にいても非情なものはすべてカイがやってきた。だからこそルイには何が起こるのかは分からないでいた。ただ傷つくことしかわからない。
 そんなルイをカイは抱きしめた。
 スカルディアやルドワードのことをカイは笑えないでいた。カイも大概ブラコンだが兄なのだから弟が傷ついて欲しくないと思うのは当たり前ともいえる。
 カイはこれ以上ルイを悲しませたくなくて話題を変えた。
「ルイ、食事をしたらもう寝なよ。また花嫁さんの監視に行かないといけないから」
「花嫁様の監視……そうだな、行こう。あの人、今度は何をするのかな?」
「さぁね。ほら、もうすぐ食事が来る時間だよ」
 二人は話し終わってしばらくすると食事が届いた。冷えきった残飯のような食事だ。だが食べ物がもらえるだけましなのだ。
 二人は食事が終わるとすぐに休んだ。監視と言う名の見守りをするために。

 二人は眠りについたころ、彼らの主人は静かに微笑んでいた。その微笑みも怪しい感じだ。
「ふふふ、楽しみだな、ルドワード。お前の苦しむ顔がやっと見られそうだ」
 双子の主人は黒い笑顔をして竜王城の方を見ていた。
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