竜王の花嫁

桜月雪兎

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番外

ジルフォードの恋⑧

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 しばらくしてスカルディアの言うようにアルジャスが罠にかかった。
 それはリリアとリンが二人でいる時に起こった。
 もちろん、この二人を二人っきりにはしなかった。前々より仕組まれていたのだ。なかなか尻尾を出さない相手を引っ張り出すには無謀と見せかけるのが有効的だ。
 女性陣を除き、アルシードやジャックスたちは当事者なので唯一ねじ伏せる力を持ち、一歩引いて考えられるとしてスカルディアが隠れて二人を護衛していた。
 リリアとリンが二人で休憩をしている時にアルジャスが自身の私兵を数人伴ってやってきた。そして、二人を誘拐ようとしたところでスカルディアが全員をねじ伏せた。
 一対複数になったがスカルディアには問題にもならない相手だった。そこには当事者であるアルジャスも一緒に捕まった。
 終幕はあっけなかった。
 リンは震えるリリアをぎゅっと抱きしめた。事前に説明があっても怖いものは怖い。
 リリアはリンの温もりで少しずつ落ち着いていった。
 それを視界の端で確認したスカルディアはほっとした。
 スカルディアの耳には物音で居ても立ってもいられなかった面々が駆けてくる足音が聞こえていた。
「リン!無事か?!」
「二人とも大丈夫?!」
「アルシード様」
「アリシア様」
 リリアは自身の主を見て安堵のため息をついた。リンも最愛のアルシードの姿を見て力が抜けたようだ。
 リンも知らず知らず緊張と恐怖を感じていたようだ。
そうしているとこの作戦を教えてなかったジルフォードが偶然物音を聞いてやってきた。
「何の音…リリアさん」
「ジルフォード様」
「いったい何が……こいつ」
 リリアはジルフォードの姿を見て駆け寄り、抱きついた。そんなリリアをジルフォードはしっかりと抱きしめた。お互い無意識にそうしていた。
 それでもジルフォードにはアルシードやアリシアたちがいるこの状況がよく分からなかったがスカルディアが捕まえているアルジャスを見つけると怒りをあらわにしながら睨みつけていた。
 リリアがいなければ殴りかかってきそうな感じだ。
 それに気づいたスカルディアは声をかけた。
「ジルフォード」
「…はい」
「こいつはこっちで確保した。これ以上はお前の出る幕じゃない」
「っっ!!」
「こいつのことはもうこっちの管轄だ」
「……はい」
「お前にはそれ以上にしなければならないことがあるだろう。その腕の中にいる相手にな」
「っっ!」
 ジルフォードはスカルディアが何を言いたいのかすぐに理解して顔を真っ赤にした。
 それに満足したスカルディアは一人で捕えたアルジャスを始めとした面々を連れて行った。
「リリアさん、大丈夫ですか?」
「はい」
「貴方を傷つけた者たちは全て裁かれます。もうあなたの前に現れることはありません」
「はい」
「……もし、もしですが」
「???」
「もし、あなたが落ち着かれたら……俺と一緒になってくれませんか?」
「「「「っ!」」」」
 リリアはジルフォードからのプロポーズに顔を真っ赤にした。
 そう、プロポーズなのだ。お付き合いの告白をすっ飛ばした。ジルフォードも顔が真っ赤だが、こっちは自身が緊張のあまり告白ではなく、プロポーズをしている自覚はない。
 その場にいたアルシードは弟の間違いにずっこけ、リンとアリシアたちは楽しそうに成り行きを見守っている。
「い、今はまだ、色々あって落ち着かれないと思いますが…あなたのことが……好きです。この気持ちは変わりません」
「……わ、私でよければ……不束者ですが、お願いします」
「は、はい」
 二人は顔を真っ赤にしながら抱きしめあった。
 すでにリリアが男性恐怖症気味になっていたのが嘘のように。
 女性陣は嬉しそうに、楽しそうにしているが、唯一の男で兄弟のアルシードは呆然としていた。
「おいおい、付き合いすっ飛ばしてるぞ」
「いいじゃないですか」
「それにジル限定だろうが落ち着いているし、抱きしめあってるぞ」
「お互い気付いてないのが可愛いですね」
「……いいのか?」
 アルシードは一人首を傾げることになった。
 しばらくして落ち着いた全員でアリシアの部屋に戻った。

 後日、アルジャスは明確な計画のもとリリアを襲わせたことにより、爵位剥奪に加え、辺境収容所・ガリアスに終身刑として収容された。
 辺境収容所・ガリアスは反逆罪で送られた国境周辺監獄・ディメンティスと対となる程厳しい場所だ。すでにリリアを襲った現行犯たちも送られている。それほど重い罪とされているのだ、婦女子暴行は。
 そして、緊張のあまり先走ってプロポーズをしてしまったジルフォードだが、アルシードが結婚したばかりであり、周りがまた騒ぎ出したので本当にリリアとその周りが落ち着いてから、交際から始めることになった。
 本人たちが納得しているので非公式で婚約関係にはなった。
 せっかく、ジルフォードが勇気を振り絞ってプロポーズをしたのでこういう形にしたのだ。周りとリリアが落ち着けば婚約関係を公にすることになっている。
 こうして、ジルフォードの恋は実ったのだ。

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