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プロローグ
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クラーディルス王国では王が代替わりするとすぐに王妃を決めることになっている。
王子の時に婚約者をつけないのは昔あった事件からそう取り決められた。
***
昔、クラーディルス王国には3人の王子と2人の王位継承権のある血縁者がいた。
心優しい第一王子であるエドワード、
責任感の強い第二王子であるグラン、
愛嬌のある第三王子であるルイス、
お兄さん気質の第四王位継承権を持つイーサン、
落ち着きのある第五王位継承権を持つマイナン
5人は年齢も近く、よく一緒に過ごしたことや本人たちの性格もあってたいへん仲が良かった。
ほとんど喧嘩もなく、誰が国王になっても支えあっていこうと話をしていた。
当時の国王は体が弱く、床に伏せることが多かったのも理由の一つだ。
そんな5人にもそれぞれ婚約者がいた。
そして、5人の気持ちとは別に周りは誰を次期国王にするかで暗躍した。
ある方は婚約者の親族が自分たちの欲望ために、
ある方は婚約者自身の欲望のために、
ある方は婚約者自身とその親族双方の欲望のために、
王子や王位継承権のある血縁者たちを担ぎ上げた。
勿論、それを知った5人全員が拒んだが動き出していたうねりに5人は逆らえなかった。
マイナンは先走ったグランの婚約者に殺され、目の前でマイナンを殺されたグランは婚約者を自ら手を下し自らも自害した。
グランとマイナンを失ったことで怖くなったルイスは引きこもってしまった。
エドワードやイーサンはそれぞれの婚約者やその家族を説得していたが、聞き入れられることはなかった。
そんな時にエドワードが暗殺された。
残されたのはイーサンとルイスだった。
「ルイス」
「イー兄様。怖いよ。なんで、なんで…」
「ルイスのことは私が守るよ」
「イー兄様」
「必ず守るよ、それがみんなとの約束で、みんなの願いなんだから」
イーサンは決してルイスが一人にならないように気を付けた。
ルイスもイーサンから絶対に離れないとくっついていた。
そうしているとだんだん不穏な影はなりを潜めていった。
そう、潜めていっただけだった。
イーサンが用事がありルイスのもとを離れた。
そんな時にことは起きた。
自室で過ごしていたルイスだった。
そこに何の前触れもなく扉が開いた。
ルイスは驚いた。
第三とはいえ、王子の自室を勝手に開けて入ってくるとは思わなかったし、何より鍵をかけいたのだ。
そこに現れたのはエドワードとマイナンの婚約者だった。
「な、なんで?」
「なんで?分からないの?」
「分からないよ、分かるわけないよ」
「分からないの?あなたを守るために、あなたを守るためにエドワード様は命を落としたのよ!」
「マイナン様だってそうよ!」
二人の手には刃物が握られていた。
ルイスは後ろに下がった。
二人から目をそらさないように動いた。
背を向けた瞬間刺される気がしたからだ。
あと少しで扉だったが何かにつまずき、ルイスは倒れてしまった。
二人はそれを見逃さなかった。
「あなたが、あなたの方が!」
「死ねば良かったのよ!」
「っっっ!!」
「ルイス!」
ルイスは刺されることを覚悟して目を閉じた。
その瞬間、ルイスは誰かに呼ばれた気がした。
ルイスはいつまで経っても痛みも何もないことに不思議に思い、目を開けた。
そこにあったのは誰かの胸元だった。
ルイスが顔を上げるとイーサンの苦しそうな顔があった。
「イー兄様?!」
「ルイス、だい…じょうぶ、かい?」
「僕よりイー兄様が!」
「はは、君が、無事なら…いいんだよ」
「そ、そんな…」
「な、なんで…」
二人はここにいないはずのイーサンが現れ、ルイスを守るとは思っていなかったのだ。
ルイスはもう二人のことなど頭になかった。
また、一人大切な人を失おうとしているのだ。
「誰か!だれか!!早く来て!!!」
「ルイス様?…っっ?!!」
「イーサン様?!いったい何が??!」
「早くイー兄様を医務室に!!」
「「は、はい!!」」
すぐにやってきた騎士たちに抱えられ、イーサンは医務室に運ばれた。
ずっと引きこもっていたルイスも一緒についていった。
放心状態の二人の婚約者たちは騎士たちに掴まった。
イーサンはすぐに処置されたが刺し傷が深く、どうやら毒を塗っていたらしく、助からないと診断された。
「ルイス」
「…イー兄様」
「どうやら、私は助からない、みたいだね」
「ごめんなさい」
「君が、悪いわけではないよ。これで、貴族たちの、次期国王を決めるという、くだらないことは終わる」
「イー兄様…僕は…」
「ごめんね。君を最後まで守れなくて」
「そんなことない!!」
「願わくば、こんなくだらない争いが二度とないように…」
「イー兄様ぁーーー!!!」
こうしてイーサンはルイスに見守られて息を引き取った。
この争いで息子二人と甥御二人を失った国王も後を追うように息を引き取り、ルイスは最年少で国王になった。
そして、この出来事があった故にルイスは新しく法律を設立した。
それがこの『国王になってたら伴侶を決める』というものだ。
誰が国王になるかもわからないように婚約者もつけず、王位継承権のある全員が平等に政務に参加するようにしたのだ。
***
そうしてこの度、新たに国王が継承された。
これはその王妃を決めるための話。
王子の時に婚約者をつけないのは昔あった事件からそう取り決められた。
***
昔、クラーディルス王国には3人の王子と2人の王位継承権のある血縁者がいた。
心優しい第一王子であるエドワード、
責任感の強い第二王子であるグラン、
愛嬌のある第三王子であるルイス、
お兄さん気質の第四王位継承権を持つイーサン、
落ち着きのある第五王位継承権を持つマイナン
5人は年齢も近く、よく一緒に過ごしたことや本人たちの性格もあってたいへん仲が良かった。
ほとんど喧嘩もなく、誰が国王になっても支えあっていこうと話をしていた。
当時の国王は体が弱く、床に伏せることが多かったのも理由の一つだ。
そんな5人にもそれぞれ婚約者がいた。
そして、5人の気持ちとは別に周りは誰を次期国王にするかで暗躍した。
ある方は婚約者の親族が自分たちの欲望ために、
ある方は婚約者自身の欲望のために、
ある方は婚約者自身とその親族双方の欲望のために、
王子や王位継承権のある血縁者たちを担ぎ上げた。
勿論、それを知った5人全員が拒んだが動き出していたうねりに5人は逆らえなかった。
マイナンは先走ったグランの婚約者に殺され、目の前でマイナンを殺されたグランは婚約者を自ら手を下し自らも自害した。
グランとマイナンを失ったことで怖くなったルイスは引きこもってしまった。
エドワードやイーサンはそれぞれの婚約者やその家族を説得していたが、聞き入れられることはなかった。
そんな時にエドワードが暗殺された。
残されたのはイーサンとルイスだった。
「ルイス」
「イー兄様。怖いよ。なんで、なんで…」
「ルイスのことは私が守るよ」
「イー兄様」
「必ず守るよ、それがみんなとの約束で、みんなの願いなんだから」
イーサンは決してルイスが一人にならないように気を付けた。
ルイスもイーサンから絶対に離れないとくっついていた。
そうしているとだんだん不穏な影はなりを潜めていった。
そう、潜めていっただけだった。
イーサンが用事がありルイスのもとを離れた。
そんな時にことは起きた。
自室で過ごしていたルイスだった。
そこに何の前触れもなく扉が開いた。
ルイスは驚いた。
第三とはいえ、王子の自室を勝手に開けて入ってくるとは思わなかったし、何より鍵をかけいたのだ。
そこに現れたのはエドワードとマイナンの婚約者だった。
「な、なんで?」
「なんで?分からないの?」
「分からないよ、分かるわけないよ」
「分からないの?あなたを守るために、あなたを守るためにエドワード様は命を落としたのよ!」
「マイナン様だってそうよ!」
二人の手には刃物が握られていた。
ルイスは後ろに下がった。
二人から目をそらさないように動いた。
背を向けた瞬間刺される気がしたからだ。
あと少しで扉だったが何かにつまずき、ルイスは倒れてしまった。
二人はそれを見逃さなかった。
「あなたが、あなたの方が!」
「死ねば良かったのよ!」
「っっっ!!」
「ルイス!」
ルイスは刺されることを覚悟して目を閉じた。
その瞬間、ルイスは誰かに呼ばれた気がした。
ルイスはいつまで経っても痛みも何もないことに不思議に思い、目を開けた。
そこにあったのは誰かの胸元だった。
ルイスが顔を上げるとイーサンの苦しそうな顔があった。
「イー兄様?!」
「ルイス、だい…じょうぶ、かい?」
「僕よりイー兄様が!」
「はは、君が、無事なら…いいんだよ」
「そ、そんな…」
「な、なんで…」
二人はここにいないはずのイーサンが現れ、ルイスを守るとは思っていなかったのだ。
ルイスはもう二人のことなど頭になかった。
また、一人大切な人を失おうとしているのだ。
「誰か!だれか!!早く来て!!!」
「ルイス様?…っっ?!!」
「イーサン様?!いったい何が??!」
「早くイー兄様を医務室に!!」
「「は、はい!!」」
すぐにやってきた騎士たちに抱えられ、イーサンは医務室に運ばれた。
ずっと引きこもっていたルイスも一緒についていった。
放心状態の二人の婚約者たちは騎士たちに掴まった。
イーサンはすぐに処置されたが刺し傷が深く、どうやら毒を塗っていたらしく、助からないと診断された。
「ルイス」
「…イー兄様」
「どうやら、私は助からない、みたいだね」
「ごめんなさい」
「君が、悪いわけではないよ。これで、貴族たちの、次期国王を決めるという、くだらないことは終わる」
「イー兄様…僕は…」
「ごめんね。君を最後まで守れなくて」
「そんなことない!!」
「願わくば、こんなくだらない争いが二度とないように…」
「イー兄様ぁーーー!!!」
こうしてイーサンはルイスに見守られて息を引き取った。
この争いで息子二人と甥御二人を失った国王も後を追うように息を引き取り、ルイスは最年少で国王になった。
そして、この出来事があった故にルイスは新しく法律を設立した。
それがこの『国王になってたら伴侶を決める』というものだ。
誰が国王になるかもわからないように婚約者もつけず、王位継承権のある全員が平等に政務に参加するようにしたのだ。
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