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そして、私たちは王城の本家と言いましょうか、お城の扉まで馬車で来ました。
その後も騎士の皆さんに先導されて謁見の間に着きました。
ここは職場ですし、大勢の眼がありますから、団長(?)さんは威厳を保つような表情をされ、クリスティーナも特に何かを言うことはありませんでした。

まぁ、当たり前ですのね。
先程のが親しい方々でのやり取りですものね。

「エリアンティーヌ様、ご帰還です!」

ドアマンに宣言をされ、開けられた扉に私たちは入っていきました。
荘厳な空間にきらびやかな室内だが、威厳と感じられる場所でした。

上座には二つの椅子があり、そこにはこの国の国王陛下と王妃陛下が座られています。
王妃陛下の隣には一人の方が立たれています。

何と言いますか、そのお姿が不思議です。
国王陛下は私と同じ白銀の髪はオールバックですが、耳が…頭からお耳が出てます!
それもお耳の形が獅子のようです!
隣の王妃陛下は綺麗なストレートの長髪で色彩が深緑からアイスグリーンへと変化するグラデーションになっています。
王妃陛下の隣におられる方はお顔が猫さんですわ!
お体は人ですが。
いえ、服を着られているので詳しくはわかりませんが、手は普通に人のそれでした。
ただ、お顔が猫さんなんです、毛の色は私や国王陛下と同じ白銀です。

隣にいるフォルクスの瞳が輝いています。
そうですよね、まだ10歳ですもの、好奇心旺盛ですよね。
向こうでは我慢することの方が多かったですもの。
気持ちもよく分かりますわ。
ですが、落ち着いて、粗相の無いようにお願いしますね…………なるべくは。

私たちは上座へと上がる階段の前に着きました。
先頭に立つマンサールと団長(?)さんが頭を下げました。

あら?
簡易式でしょうか?
ここでは普通は膝をついて臣下の礼をとったり、頭を下げてお待ちしたりする筈なんですが。

「シルヴァール国王陛下、フィリアーナ王妃陛下、カティール第一王女殿下。只今、マリリン第二王女殿下の御息女、エリアンティーヌ様がご帰国されました。それに伴い、我ら竜騎士団第三部隊をはじめ、マリリン様及びエリアンティーヌ様付き侍女や従者たちも帰還致しました」
「うむ。長期にわたる任務御苦労であった」
「勿体なきお言葉痛み入ります」
「侍女や従者たちもよくぞ、我が娘マリリンと我が孫であるエリアンティーヌを支えてくれた。暫し、休息を取るように」
「「「「「「ありがとうございます!」」」」」」
「うむ。竜騎士団団長グラバトール・ラミス卿、第三部隊副隊長ヴォルグレット・マンサール卿及び侍女・従者たちのまとめ役クリスティーナ・ジャンカル嬢は報告の為に残ってくれ。他の騎士、侍女、従者たちは下がるように」
「「「「「「「「はい」」」」」」」」

国王陛下のお言葉により侍女や従者に騎士の皆さんはこの謁見の間から出ていかれました。
私とフォルクスはまだ挨拶もしていませんしね。
それはそうとクリスティーナはまとめ役だったのですね、分かりませんでしたわ。
そういえば、よく皆さんを指揮されてましたね。

皆さんが出ていかれて少し沈黙が流れました。
ですが、すぐに国王陛下よりお声がかけられました。

「そなたがエリアンティーヌだな」
「はい。マリリン・アバントが娘、エリアンティーヌ・アバントにございます、ドラゴニス王国国王陛下。そして、こちらに居りますのが、我が弟のフォルクス・アバントにございます」
「フォ、フォルクス・アバントです!」
「そうか。しかし、ワシの受けている報告ではマリリンはエリアンティーヌしか子を儲けていなかった筈だが?」
「はい。お母様の子供は私だけです。フォルクスは第二夫人の子供、半分血の繋がった私の弟です」
「……………………何故、ここに?」
「それは私がお願いしたからです。ドラゴニス王国国王陛下」

やはり、フォルクスが第二夫人であるナディア様の子供だと告げましたら凄い怒気が溢れ出ていますね。
国王陛下だけでなく、王妃陛下も、第一王女殿下もです。
この謁見の間に充満しています。

それは団長(?)さん改めてグラバトールさんもマンサールもクリスティーナも冷や汗をかいています。
フォルクスは青い顔をして震えています。
まだ10歳の彼にはこの中で居続けるのは耐えられる筈がありません。
私はフォルクスの手を強く握り、不敬であるのは承知ですが、フォルクスをドラゴニス王国国王陛下たちから守るように私が前に立って隠しました。

私ですか?
私は別に何とも思いません。
だって、フォルクスを連れてきたのは私の我が儘なのですからこれくらい予想の範囲内ですし、こう言っては何ですが私はそういう視線や環境に慣れているので。
サルベージル元第一王子やサリフィア様やその取り巻きの方々のせいですがね。

なので、私は普通に返事ができます。
そして、私の言葉にドラゴニス王国国王陛下たちは怒気が霧散しました。
まぁ、驚いてキョトンとしています。

「…………すまない。もう一度、言ってくれないか?」
「はい。フォルクスを連れてきたのは私の願いです」
「マンサール卿」
「ええ、国王陛下。エリアンティーヌ様が大切にされているフォルクス君を帰国に伴い、同行させて欲しいと願われました」
「…………ジャンカル嬢」
「はい、国王陛下。エリアンティーヌ様はアバント伯爵家にいる際からフォルクス坊ちゃまを大切にされておりまして、一人にさせたくないと同行をお願いされました」
「……………………そうか」

国王陛下が、マンサールとクリスティーナに確認を求めました。
マンサールもクリスティーナも言い方を変えていますが、その通りなのです。
私はこのドラゴニス王国に来たいと願いましたがフォルクスを置いていくつもりはなかったので帰国に対してのお願いですね、フォルクスを同行させるのは。

二人の証言を得て、国王陛下と王妃陛下は力をなくしたように背凭れに体を預けられました。
第一王女殿下はため息をつかれています。
そんなにおかしいことでしょうか?

まぁ、そうですね。
私とフォルクスの関係は義姉弟ですが、受けてきた環境は酷似しています。
そこを説明しませんと納得はできませんよね。

私もサリフィア様と同じような環境で育ったフォルクスであればこんなに大切には思えませんでしたし、一緒に勉強会や何処かに連れていこうなんて思いませんでした。
何より、お母様の件がありますから憎んでいたでしょうね。

私が憎しみを持つことなく過ごせたのは守るべき、フォルクスがいたからですね。
あと、良くしてくださったサルベージル王国の国王陛下や王妃陛下に、仲良くしてくださったアイザック様やフレデリック様の存在ですね。
私についてきてくださった侍女や従者たちもそうですね。

大切な皆さんのお陰ですね。

「国王陛下、宜しいですか?」
「なんだ?」
「少し私たちの今までのお話を聞いてくださいませんか?」
「ああ、聞こう。教えてくれ」
「はい」









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