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「ランドール先代伯爵よ、それはどういうことだ?こちらには何の報告もなかったが?」
「こちらもです。確かにマリリン様は騒ぐなと、大事にするなと申されましたが…」
「ち、父上」
「お、お義父様」
「…………」
「「お祖父様」」
「エリアンティーヌ、フォルクス。お前たちには本当に苦労をかけてすまない。ワシがもう少し立ち回れたらよかったのだが」
「いいえ、お祖父様。お祖父様は離れた領地をしっかりと守ってくださっています」
「それがマリリン様との約束でもあり、貴族としての役目だ。しかし、これ以上は他の貴族に聞かせるわけにはいかない。故に国王陛下」
「ふむ、それもそうだな。今更だが此度のパーティーは中止じゃ。また後日、再度プレデビュタントのパーティーを執り行う。追って知らせる故それまで待機せよ。そして、此度の事は一切他言無用、箝口令を敷く!」
「「「「は、はい」」」」

お祖父様の言葉を聞いて国王陛下はパーティーを中止にされました。
そういえば、そうですわね。
このまま我が家と王家の問題を他の貴族の方々に聞かせるわけにはいきませんものね、今更のような気もしますが。

我が家と王家にマンサール様のみ残りました。
そして、場所は大きな会議室に移りました。
ですが、さすがにパーティーのドレスのままではいけませんので着替えることになりました。
いえ、コルセットとかが苦しいので助かります。

どうやら、お祖父様は一度王都の我が家に行き、皆の衣装を持ってきてくださっていました。
ですが、王妃陛下がどうしても私に着せたい物があるからと私だけは私の侍女と共に王妃陛下の自室に向かいました。

どういうわけか、お祖父様は私についている侍女や従者たちを連れてきていました。
ナディア様とサリフィア様は王城のメイドに着替えを手伝ってもらうようです。
ナディア様、サリフィア様、アバント伯爵の衣装を持ってきたのは我が家のメイドが各一名なので仕方ありませんよね。

あ、お祖父様とフォルクスは私の従者が対応しています。
何気にそちらは仲が良いようで、フォルクスの今回のパーティー衣装は私の従者たちが用意されていました。
私のドレスと色味を合わせると言っておりました、私もフォルクスもアバント伯爵家からドレスやタキシードやそれに合わせた宝飾品を用意してもらったことがありません。
しかし、侍女や従者たちはそのパーティーのコンセプトに合ったドレスや宝飾品をどこからか入手してくるのです、不思議ですよね。
まぁ、お母様の商会からだろうと考えていましたが、もしかしたら違うのかもしれませんね。
あ、勿論、第一王子様からもドレスや宝飾品をもらったことはありませんよ。
サリフィア様はもらっていたようですが。

私がそんな事を考えていると王妃陛下が嬉しそうに微笑みながら私に話しかけてくださいました。

「ふふふ、やっと貴女にこの衣装たちを渡せますわ」
「王妃陛下?」
「もう!エリーちゃんたら。二人の時には?」
「リリー様」
「はい!」

王妃陛下は私の王子妃教育の最中、いずれは家族になるのだから他人行儀に「王妃陛下」ではなく、愛称で呼んで欲しいと言われました。
あ、王妃陛下のお名前はアマリリス・ディル・サルベージル様です。
なので、愛称は「リリー」様なのです。

私がリリー様と二人の時に「王妃陛下」とお呼びすると少女のように頬を膨らせて拗ねるのです。
わりとお茶目で可愛らしい方なのですよ、リリー様は。

「これはマリリン様から預かっていた衣装たちなのよ。マリリン様がエリーちゃんと同じ年頃の時に着ていた衣装で、これはドラゴニス王国特有の衣装なのですって」
「これが、すごいですね」
「ねぇ~」

リリー様はそう言いますとリリー様の衣装部屋内のある一角を手のひらで指しました。
そこにはリリー様のご趣味とは違った雰囲気のドレスやワンピースに異国の物と分かる衣装たちや宝飾品たちが並べられていました。

その中からリリー様が出してくださった衣装はスカートと上着が別になっている物でした。
その衣装は上着もスカートも白色に光の加減で光沢が出るような生地になっています。
首元は騎士様の正装である軍服のように立ち襟になっていまして、その襟や裾や袖口などは水色に縁取りされ、その周りを少々変わった模様の刺繍がされています。
上着は襟から右肩にかけて組紐で留められるようになっていました。
すごく綺麗です、私はすぐにその衣装が気に入りました!
さすがリリー様です、私の趣味を完全に把握されています。

その衣装を受け取り、嬉しそうに体に当てている私の姿を皆さんが見ていました。
少々はしゃぎすぎました、恥ずかしいですね。
そんなはしゃいだり、恥ずかしそうに照れたりしている私の姿は皆さんにとって微笑ましかったようです。
その中でも私の侍女たちはとても嬉しそうに懐かしそうにされています、どうしたのでしょう?

「マリリン様がこの国に来られた時に持ってこられた衣装ですね。お懐かしゅうございます」
「そうなのですか?」
「ええ、マリリン様がアバント伯爵家に置いておく訳にはいかないから預かっていて欲しいと言われましたの。いずれ成長したエリーにこの衣装たちを渡して祖国であるドラゴニス王国の話をするのだと楽しそうに話してくださったわ」
「お母様がそんなことを」
「ええ。王命とは言え、子供が婚約者同士というのもあって商会や伯爵夫人のお勤めの合間にエリーも連れて来てくださったの。マリリン様は本当に楽しそうに話されていたわ。だからこそ、ずっと悩んでいたわ、このままバラモースの婚約者でいいのかと」
「リリー様」
「ふふ、この話も皆さんと一緒にしませんとね!さぁ、着替えて向かいましょう。皆さんが今か今かとお待ちかねですわ」
「はい!」

私は私の侍女たちに着替えさせてもらい、リリー様はリリー様の侍女たちに着替えさせてもらいました。
そして、私とリリー様はお互いの侍女を連れてみなさんが待つ大きな会議室につきますと皆さんがすでにお待ちでした。

ですが、何でしょう?
雰囲気が異様です。

第一王子様とアバント伯爵とナディア様とサリフィア様が一列に座られ、小さくなっています。
私やリリー様が入った時には一度視線を向けられましたがすぐに逸らされました、別にかまいませんが。
私を睨もうとしてもそばにリリー様がいるから出来なかっただけでしょうし。

反対の席に国王陛下とアイザック様とフレデリック様が座っています。
国王陛下たちの右隣の一人掛けにマンサール様が座られ、国王陛下たちの左隣にお祖父様とフォルクスが座られています。
リリー様は国王陛下の隣に、私はお祖父様とフォルクスの間に呼ばれて座りました。

私の侍女や従者は私の後ろに、近衛隊は国王陛下の後ろに、初めてお見掛けするパーティーの時のマンサール様と似た衣装の騎士様たちがマンサール様の後ろに並ばれています。
扉の方には衛兵たちが立っています。

どうやらこれで準備が整ったようです、お話の再開ですわね。











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