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何も言えなくなった第一王子様とサリフィア様を私は観察しています。
すでに騒ぎになっていますし、警備の方が現状を説明しに向かったのを視界の端に見えていましたので国王陛下を始めとした王族の方々が駆け込んでくるのはすぐでしょう。
特にこれ以上何かあるとは思わなかったのですが、どうやらそうでもないようです。
貴族たちの冷ややかな視線を気にしないようで第一王子様がまた大きな声を出しました。
「とにかく!貴様の悪行は分かっているんだ!」
「ですから、それは何ですか?」
「貴様がサリフィアにした事だ!暴言に暴力、侍女を使っての器物破損など上げればきりがない!全てサリフィアから報告が入っているんだ!」
「…………」
何でしょう、サリフィア様から報告があったとしてその詳細を調べてないのでしょうか?
そうであればただの冤罪です、と言うより完璧な冤罪ですわね。
私には身に覚えがありませんので……いえ、違いますわね。
それらは私がサリフィア様やナディア様にされてきたことです。
成る程、ご自身たちが行ってきた事を私がしたように報告したのですね。
お母様が嫁ぐ際に一緒に来てくれた侍女や従者たちとフォルクス以外にあの屋敷で私の味方などいませんから証言もされましょう。
父である(父と思っていませんが)アバント伯爵も私の事が疎ましいようです。
ですが、アバント伯爵は跡継ぎであるフォルクスが私に一番懐いているので下手に行動できないようですが。
お腹を痛めて産んだフォルクスが私に一番懐いているのをナディア様は認められないようですが、フォルクスの前で私に何かしようものなら嫌われるので隠れてしています。
ですが、お母様について来てくれた侍女や従者たちは優秀ですぐに対処してくださいます。
どうやらそれも気に入らないようですが。
「バラモース様、私怖いのです。あのような妹といるのは」
「可哀想に、サリフィア。すぐに終わらせるよ」
「はい」
なんと言いますか、馬鹿らしい三問芝居ですね。
「よって、貴様と婚約を破棄する!」
「王命の件、お忘れですか?」
「ふん!サリフィアもアバント伯爵家の令嬢だ。アバント伯爵家の血を王家に入れると言う目的であるのだから相手はサリフィアで問題ない。それにサリフィアの母君の実家は我が国の子爵家、たとえ栄えていようと貴様の母親のような他国の商会の娘とはわけが違う!王家に何処の者かも分からないような血を入れるわけにはいないんだ!」
「バラモース様」
「……………………」
…………許せないですわね。
ええ、許せませんわ!
私の事はどのように言われようともお母様の事を悪く言われるのは許せませんわ!!
確かに私のお母様は他国の大商会の娘とされていますが本当にそのような方が傾いているわけでもない伯爵家に嫁ぐでしょうか?
それも私より先に身籠った相手がいる家に、第一夫人として。
答えは否です!
大商会の方だってそんなこと望みませんよ!
娘が苦労するのが分かりきっているのに!
それにあれだけの侍女や従者を雇い、お母様や私の面倒をみせますか?
我がアバント伯爵家の侍女や従者の半分はお母様のご実家がお母様と私の世話をさせるために用意した方々です。
そして、その給金はお母様のご実家が払われています。
ですので、私の味方の方々はアバント伯爵家の命令を聞かなくても問題がないのです。
何よりおかしいのが、私はお母様の実家を知りません。
なにやら私の婚約同様、お母様の方も王命と言うか何やら密約が執り行われている可能性があるのです。
侍女や従者たちが今は許可が出てないので話せないと、お母様の話をあまりしてくださいませんので。
しかし、その時の表情があまりにも悔しそうで、辛そうで、悲しそうで、心苦しくそれ以上聞けませんでした。
「訂正してください!私のお母様は第一王子様に卑下されるような方ではありませんわ!!」
私は淑女としての矜持を棄てて大声を出しました。
当たり前です、自身のお母様を侮辱されて許せるはずがありません。
しかし、それを狙っていたのでしょう。
第一王子様とサリフィア様がニヤリと厭らしい笑みを一瞬見せました。
「ああ、怖いわ!助けてください、バラモース様」
「勿論だ。貴様、本性が現れたようだな!それもこの俺を見下したような物言い、不敬罪にあたる!貴様のようなやつは即刻国外追放だ!」
「っ!」
なんと言う言いがかりなのでしょう!
侮辱されたのは私の方ですわ!
それで国外追放だなど、第一王子様にそのような権限ある筈もありませんのに!
しかし、相手は第一王子様なので貴族たちの態度も私に非があるようなものに変わってきています。
単純に一令嬢でしかない私より今は理不尽でも第一王子様につく方が懸命と判断されたのでしょう。
あとはあえてどちらにもつかず沈黙を保ち、我関せずに徹するようです。
アバント伯爵とナディア様ならずっと私たちのやり取りを見て厭らしい笑みを浮かべて見ていますよ、人の輪の中から。
ですので、現状に私とフォルクスの味方はいません。
「お姉様」
「フォルクス」
「大丈夫です、お姉様。必ずアイザック様やフレデリック様が助けてくださいます。僕ではまだ力不足で申し訳ありませんが」
「いいえ、ありがとう。フォルクス」
フォルクスが強張った私の手を握ってくれました。
本当に紳士に育ってくれて私は嬉しいです。
フォルクスのお陰で頭に上っていた血が下がり、冷静になりました。
フォルクスの言うように王族の方々が来られれば流れは変わる筈です。
何より第二王子であるアイザック様と第三王子であるフレデリック様は学園でも同級ですし、仲良くさせていただいています。
「早くその無礼者を国外に連れ出せ!」
「「「「「っ!」」」」」
衛兵の方々が困惑しています。
そうですわよね、第一王子にそんな権限などありません。
ですが、王族であるのでその命令を無視するわけにもいかないのでしょう。
衛兵の方々が出来るのはせいぜい私を王城より連れ出す位です。
私と私を守ろうとしているフォルクスを囲むように戸惑いながらゆっくりと衛兵の方々が動いていると。
バンッ!と扉が開く……いえ、破られるような音がしました。
そして、私たちの前に二人の男性が現れました。
「そこまでです!一体、どういうつもりですか?!」
「何考えてるんだ!クソ兄貴!!」
そこに現れたのは第二王子のアイザック様と第三王子のフレデリック様でした。
私とフォルクスはお二人の姿が現れてホッと安堵したのです。
すでに騒ぎになっていますし、警備の方が現状を説明しに向かったのを視界の端に見えていましたので国王陛下を始めとした王族の方々が駆け込んでくるのはすぐでしょう。
特にこれ以上何かあるとは思わなかったのですが、どうやらそうでもないようです。
貴族たちの冷ややかな視線を気にしないようで第一王子様がまた大きな声を出しました。
「とにかく!貴様の悪行は分かっているんだ!」
「ですから、それは何ですか?」
「貴様がサリフィアにした事だ!暴言に暴力、侍女を使っての器物破損など上げればきりがない!全てサリフィアから報告が入っているんだ!」
「…………」
何でしょう、サリフィア様から報告があったとしてその詳細を調べてないのでしょうか?
そうであればただの冤罪です、と言うより完璧な冤罪ですわね。
私には身に覚えがありませんので……いえ、違いますわね。
それらは私がサリフィア様やナディア様にされてきたことです。
成る程、ご自身たちが行ってきた事を私がしたように報告したのですね。
お母様が嫁ぐ際に一緒に来てくれた侍女や従者たちとフォルクス以外にあの屋敷で私の味方などいませんから証言もされましょう。
父である(父と思っていませんが)アバント伯爵も私の事が疎ましいようです。
ですが、アバント伯爵は跡継ぎであるフォルクスが私に一番懐いているので下手に行動できないようですが。
お腹を痛めて産んだフォルクスが私に一番懐いているのをナディア様は認められないようですが、フォルクスの前で私に何かしようものなら嫌われるので隠れてしています。
ですが、お母様について来てくれた侍女や従者たちは優秀ですぐに対処してくださいます。
どうやらそれも気に入らないようですが。
「バラモース様、私怖いのです。あのような妹といるのは」
「可哀想に、サリフィア。すぐに終わらせるよ」
「はい」
なんと言いますか、馬鹿らしい三問芝居ですね。
「よって、貴様と婚約を破棄する!」
「王命の件、お忘れですか?」
「ふん!サリフィアもアバント伯爵家の令嬢だ。アバント伯爵家の血を王家に入れると言う目的であるのだから相手はサリフィアで問題ない。それにサリフィアの母君の実家は我が国の子爵家、たとえ栄えていようと貴様の母親のような他国の商会の娘とはわけが違う!王家に何処の者かも分からないような血を入れるわけにはいないんだ!」
「バラモース様」
「……………………」
…………許せないですわね。
ええ、許せませんわ!
私の事はどのように言われようともお母様の事を悪く言われるのは許せませんわ!!
確かに私のお母様は他国の大商会の娘とされていますが本当にそのような方が傾いているわけでもない伯爵家に嫁ぐでしょうか?
それも私より先に身籠った相手がいる家に、第一夫人として。
答えは否です!
大商会の方だってそんなこと望みませんよ!
娘が苦労するのが分かりきっているのに!
それにあれだけの侍女や従者を雇い、お母様や私の面倒をみせますか?
我がアバント伯爵家の侍女や従者の半分はお母様のご実家がお母様と私の世話をさせるために用意した方々です。
そして、その給金はお母様のご実家が払われています。
ですので、私の味方の方々はアバント伯爵家の命令を聞かなくても問題がないのです。
何よりおかしいのが、私はお母様の実家を知りません。
なにやら私の婚約同様、お母様の方も王命と言うか何やら密約が執り行われている可能性があるのです。
侍女や従者たちが今は許可が出てないので話せないと、お母様の話をあまりしてくださいませんので。
しかし、その時の表情があまりにも悔しそうで、辛そうで、悲しそうで、心苦しくそれ以上聞けませんでした。
「訂正してください!私のお母様は第一王子様に卑下されるような方ではありませんわ!!」
私は淑女としての矜持を棄てて大声を出しました。
当たり前です、自身のお母様を侮辱されて許せるはずがありません。
しかし、それを狙っていたのでしょう。
第一王子様とサリフィア様がニヤリと厭らしい笑みを一瞬見せました。
「ああ、怖いわ!助けてください、バラモース様」
「勿論だ。貴様、本性が現れたようだな!それもこの俺を見下したような物言い、不敬罪にあたる!貴様のようなやつは即刻国外追放だ!」
「っ!」
なんと言う言いがかりなのでしょう!
侮辱されたのは私の方ですわ!
それで国外追放だなど、第一王子様にそのような権限ある筈もありませんのに!
しかし、相手は第一王子様なので貴族たちの態度も私に非があるようなものに変わってきています。
単純に一令嬢でしかない私より今は理不尽でも第一王子様につく方が懸命と判断されたのでしょう。
あとはあえてどちらにもつかず沈黙を保ち、我関せずに徹するようです。
アバント伯爵とナディア様ならずっと私たちのやり取りを見て厭らしい笑みを浮かべて見ていますよ、人の輪の中から。
ですので、現状に私とフォルクスの味方はいません。
「お姉様」
「フォルクス」
「大丈夫です、お姉様。必ずアイザック様やフレデリック様が助けてくださいます。僕ではまだ力不足で申し訳ありませんが」
「いいえ、ありがとう。フォルクス」
フォルクスが強張った私の手を握ってくれました。
本当に紳士に育ってくれて私は嬉しいです。
フォルクスのお陰で頭に上っていた血が下がり、冷静になりました。
フォルクスの言うように王族の方々が来られれば流れは変わる筈です。
何より第二王子であるアイザック様と第三王子であるフレデリック様は学園でも同級ですし、仲良くさせていただいています。
「早くその無礼者を国外に連れ出せ!」
「「「「「っ!」」」」」
衛兵の方々が困惑しています。
そうですわよね、第一王子にそんな権限などありません。
ですが、王族であるのでその命令を無視するわけにもいかないのでしょう。
衛兵の方々が出来るのはせいぜい私を王城より連れ出す位です。
私と私を守ろうとしているフォルクスを囲むように戸惑いながらゆっくりと衛兵の方々が動いていると。
バンッ!と扉が開く……いえ、破られるような音がしました。
そして、私たちの前に二人の男性が現れました。
「そこまでです!一体、どういうつもりですか?!」
「何考えてるんだ!クソ兄貴!!」
そこに現れたのは第二王子のアイザック様と第三王子のフレデリック様でした。
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