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第一章

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俺とクラウドは国王様と王妃様の部屋に入った。
大きなテーブルセットのソファーに二人は座っており、俺たちを確認するとすぐに席を進められ、俺とクラウドは素直に座った。
すると、俺が挨拶をする前に国王様が話を切り出した。

どうやら、急の深夜の訪問の内容を早く知りたいようだ。

「カイト、いったい何があったと言うのだ?」
「貴方なら何時でも訪ねてくれて構わないんだけど、緊急事態と言うのはどういう事なの?」
「はい。国王様、王妃様」
「待った。いつものように呼んでくれ」
「そうよ。この部屋での他人行儀は嫌だわ!」
「そうだぞ、カイト!」
「はい……クラウドは少し黙ろうな。俺はまだ怒っているんだ」
「はい」

調子に乗りそうなクラウドには釘をさしておこう。
クラウドは俺に「怒っている」と言われて項垂れた。
それを見た、国王様と王妃様は苦笑していた。
いつもの光景である。

それにしても本当に距離が近いんだよな、国王様も王妃様もクラウドもな。
私室だから普段通りが良いと言われてしまってはそうしないといけない。
いや、別にそれが嫌なわけでも、不快なわけでもない。

結構、真面目な話をしないといけないからだ。
仕方ない、第2の両親のご所望なら。
ついでに話も進まなくなるしな。

「ジャスティンお父様、アメリアお母様。重大な話です」
「ああ」
「ええ」
「我が領地が侵略を受けました」
「「っ!」」
「両親は俺たちを逃がすために犠牲になりました」
「まさか」
「本当です。相手は祖父に勘当された叔父のザイルです。俺が気付いた時には屋敷に乗り込まれていました。俺は父上に言われたように弟妹と大半の使用人たちを連れ出し、逃げました」
「他の者たちを逃がすので精一杯だったか、致し方あるまい」
「はい」

俺の実の両親と国王様と王妃様は学生時代からの仲らしく、本当に仲が良かった。
身分の離れた身なのに我が子同然に可愛がって貰えたのもそのお陰だ。

両親の死に国王様も王妃様も涙を流してくれた。
けど、次の瞬間には恐ろしいほどの怒りのオーラが充満していた。
俺もクラウドも大量の汗をかき、悪寒が止まらなかった。

「あの者、よくもライトとカルディナを」
「産まれたことを後悔させてあげましょう」
「ま、待ってください!」

まずい!
一貴族家のお家騒動に国王様と王妃様が手を出したら本当にまずい!
そんなことになれば王家の信用が下がってしまう!
他の貴族が警戒してしまう!

「父上、母上」

ク、クラウド!
そうだ、一緒に……。

「俺にもさせてくださいよ、ライト父上とカルディナ母上の敵討ち。貴方たちだけでするなんてダメです」

ちっがーーーう!!
止めろよ!
止める方だろ!

「お三方、お待ち下さい」
「「「カイト」」」
「まったく、何を考えてるのですか。その様なこと許されるわけありません」
「そうだな」
「そうよね」
「すまない、先走った」

まったく、本当だよ。
ちゃんと俺の話を聞いてくれないと……。

「「「お前が一番敵討ちしたいよな/ですわね」」」
「………………」

誰も分かってくれてなかった。

「はぁ~。そう言うことではなく、王家が一貴族のお家騒動に手を出しては今後に関わります!ですので、絶対にしないでください!!」
「「「うっ!」」」

まったく、困った人たちだ。
まぁ、こんな方々だから俺も両親も心配だったし、大切なんだよな。

「それでは、カイトはどうしてこの話を持ってきたのだ?」
「はい。それは」

やっと話が出来る。
領地も領民も絶対に取り戻す。
だけど、それには準備が必要だ。
そのためにジャスティンお父様やアメリアお母様に頼みに来たんだから。




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