転移先で頑張ります!~人違いで送られたんですけど?!~

桜月雪兎

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第二章

29、対面、エルフ冒険者たち①

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 何だかんだと、慌ただしくも平和な日々が過ぎた。いや、本当に平和だった。
 実はあのエルフ集団がからんでくるのではないかと本気まじで思ってたんだが、それもなかった。
 馬車は予定より早く仕上がったらしく、今それを見に行っている。
 実は昨日の夕方にヴァリス君がやってきた。

「あ、マコトさん」
「ヴァリス君、何かあった?」
「いいえ、ちょっと早めに馬車が完成したので、明日みんなさんで見に来てって父さんが」
「もうできたの?!」
「うん、あとは最終調整をしたら終わりだって」
「なるほど、分かったよ。明日、みんなで行くね」
「うん!待ってるね」
 ヴァリス君はそう言って元気よく帰っていった。
 そのあと、俺はみんなに話をした。

 そして、現在店に向かっている。エドやガイは楽しそうにしている。
 ユキは俺の頭の上でおとなしくしているが、楽しみなのは伝わってくる。
「マコト、マコト、もうすぐか?」
「ガイ!」
「いいって、シエル。ああ、そこを曲がった先だ」
「どんなふうになったんだろうな、馬車」
「ああ、楽しみだな」
 馬車は全員が楽しみにしているようだ。
 それもそのはずで誰も馬車の製作を見ていないのだ。
 だから、俺でもどんなふうになっているのかわからない。
 もちろん、最初の設計図の段階は見たが、魔法具マジックアイテムを渡した際は他にも予定があったので奥まで入っていかなかった。
 そして、お使いのヴァリス君いわく全員に付けた時の感じもチェックしたいとのことだ。
 魔獣組も自分達が引くことになる馬車の完成を心待にしていた。
 浮き足立った気持ちを抱えて『ミシリア』に向かっているとなにやら店の方が騒がしい。
 全員で首をかしげながら駆けていくと人だかりが出来ていた。それを掻き分けて進むとランビーさんと見知りたくない面々が対峙していた。
 エドから喉が詰まったような音が聞こえ、シエルにアイコンタクトをした。
 シエルは頷くとエドのフードを深く被らせて、ガイとレイの三人でエドを隠した。
 俺とグランとユリウスがさらに近いて気づいた。ランビーさんの腕の中には涙目のヴァリス君がいた。少し頬が赤いのはまさか、あいつらに叩かれたのか?
「だからよ~、そこの馬車が良いって言っているだよ」
「そうそう、その馬車は俺たち『エルフィア』が使ってやるって言ってるんだ」
「早く側面の文字を書き直して渡せよ」
「出来ません!この馬車は『ブルーローズ』の皆さんのです。それにあなた達にこの馬車の代金が払えるとは思えません」
「なんだと!」
「うちは信用第一で誠心誠意仕事をさせてもらっています。お客様の大事な馬車を渡すわけにいきません。お帰りください」
「職人風情が!!」
「その職人がいるから物作りが成り立っているんだろうが」
 流石に腹が立ち過ぎた。こいつらはどこまで傲慢なんだ。自分より弱いと思う相手に威張り散らして、力では敵わなくても職人を大事にできないヤツに先はない。
 職人がいるから日常生活用品や衣服、防具に武器などがあるし、建造物や乗り物などもそうだ。
 自分で全てどうにかできてるわけではないのによくそこまで見下せるものだ。
 ランビーさんが頑張っているのも無駄にはしたくないがこれ以上は危ない。
 俺はグランとユリウスを伴って、野次馬の壁から抜け出し、ランビーさんたちを背で庇うように前に立った。
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