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第一章
39、ジャックと①
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俺は食堂に着くとカルーラに今日狩ったラビッティアの肉を渡した。
「お帰り、マコト」
「ただいま、カルーラ。ラビッティアの肉で何か作ってよ。ジャックと飲むから」
「おうよ。任せておけ」
「頼んだ」
俺はそういってジャックの座っている席に向かった。
俺に気付いたジャックは手を挙げてくれ、俺はそれに手を挙げ返して、席に着いた。
「お疲れさん」
「ああ、今カルーラにラビッティアの肉渡したから何か作ってくれる」
「おお、ラビッティアの肉か、いいなぁ。何が出てきてもカルーラならうまい」
「そうだな」
俺はユキを隣の席に座らせた。それを見ていたジャックが話しかけてきた。
「天狼だよな」
「ああ、そうだぞ。ちゃんと許可貰っている」
「知っている。その指輪で証明されているからな」
「そっか」
「ああ。ここに来てだいぶ経ったが慣れたか?」
「ああ、みんなが良くしてくれるからな」
「それは良かった」
ジャックは俺のこと優しい瞳で見ていた。
だいぶ俺のことを気にかけてくれていたようだ。そのことに俺は内心感謝している。ここで出会う人は心の優しい人が多い。カルーラやアキラさんにジャックもしかり、何かと俺やユキのことを気にかけてくれる。
日本ではそんなことなかった。人との関係が希薄になりつつある日本では自分のことは自分でするしかなかった。
俺はここに来て人の温かみを知ったような気がする。いや、元は温かったのだが、成長していく過程でどんどん冷めていき冷たくなってきたのだ。寂しいことだ。
そんなことを話しているとク・エールとラビッティアの野菜炒めが出てきた。ユキにはラビッティアのステーキ(下味なし)が出された。
ユキはそれが来ると一目散に食べ始め、俺とジャックはそれを微笑ましく見た。
そして俺とジャックはク・エールで乾杯した。
「俺はここにこれてよかったと思う」
「急にどうした?」
「俺のいた場所は人の温かみのない場所だった。ここに来てそれを体験して嬉しいんだ」
「そうか。人の温かみのない場所か」
「物は有り触れているが人との関わりが薄い。親しい人だけの世界、知らない人には見向きもしない、冷めた世界だった」
「そうか、なんだか物悲しいな」
「ああ」
俺は酔いに任せて日本を思い出をジャックに話した。そうだ、物悲しいほど人との関係が希薄になっていく、それが普通になっていっていた。今考えると寂し過ぎる。だからだろう、ここでの生活が時々心を熱くさせるのは。
そんな俺の話をただ黙って聞いてくれるジャックは本当に優しい人だと思う。
「ここの生活が合っているんなら嬉しいよ」
「うん、ここはいい街だよ」
「ああ、いい街だよな」
俺はしみじみ言うジャックを見た。ジャックは苦笑しながら話してくれた。彼自身の過去を。
「俺はもともとここの出身じゃないんだ」
「え?」
「俺は王都の生まれでな。異動でこの街に来た」
「異動?」
「ああ、上司と合わなくてな。ヤツは自分のミスを俺に押しつけやがった。あいつのせいで俺はこんな田舎の方に来たって最初は思っていた。実家からは縁切りされたし、嫁さんは子供を連れて出ていった」
「……」
「だがな、異動当初から荒んだ俺を温かく迎え入れてくれたんだ、ここの人たちは」
「うん」
「荒んだ俺を見放さないでいてくれたんだよ、ここの人たちは。ここでの上司とはウマが合ってな。色々一緒にしているうちに俺はここが好きになった。ここが俺の故郷になっていた」
「ああ」
「昔、王都に帰れる機会があったんだ。俺の無実を俺の同僚と部下が証明してくれて、あいつは除隊、俺は王都のもと居た警備隊に戻れることになった。家族も俺を迎え入れるって言ってきた」
「迎え入れるって」
俺は絶句した。間違いが正されたら許すって、それを信じてジャックを捨てたんだから謝る方ではないのかと疑問に思った。
ジャックはそんな俺の考えが分かったのか苦笑した。
「俺は考えた末にここに残ることにした、もちろん、実家のことも嫁さんのことも白紙に戻さなかった。無実を証明してくれた同僚や部下には悪いと思ったがな」
「復縁しなかったのか?」
「ああ、もう俺は家族を信じれなかった。何かあればまた縁を切られるってわかっているからな」
「そうだな」
なんとも悲しい話だ。でも、俺のいた世界でもまれにそういう話を聞いたことがあった。それはその家の価値観だが悲しいものは悲しい。
「だからこそ、マコトの気持ちもわかる。ここはいい街だし、いい人たちがいる」
「ああ……その後、同僚たちとは?」
「ん?たまに連絡を取っているぞ、遊びにも来るしな」
「そうか」
「ああ」
俺たちはちょっとしんみりしながらク・エールを一口飲んだ。
「お帰り、マコト」
「ただいま、カルーラ。ラビッティアの肉で何か作ってよ。ジャックと飲むから」
「おうよ。任せておけ」
「頼んだ」
俺はそういってジャックの座っている席に向かった。
俺に気付いたジャックは手を挙げてくれ、俺はそれに手を挙げ返して、席に着いた。
「お疲れさん」
「ああ、今カルーラにラビッティアの肉渡したから何か作ってくれる」
「おお、ラビッティアの肉か、いいなぁ。何が出てきてもカルーラならうまい」
「そうだな」
俺はユキを隣の席に座らせた。それを見ていたジャックが話しかけてきた。
「天狼だよな」
「ああ、そうだぞ。ちゃんと許可貰っている」
「知っている。その指輪で証明されているからな」
「そっか」
「ああ。ここに来てだいぶ経ったが慣れたか?」
「ああ、みんなが良くしてくれるからな」
「それは良かった」
ジャックは俺のこと優しい瞳で見ていた。
だいぶ俺のことを気にかけてくれていたようだ。そのことに俺は内心感謝している。ここで出会う人は心の優しい人が多い。カルーラやアキラさんにジャックもしかり、何かと俺やユキのことを気にかけてくれる。
日本ではそんなことなかった。人との関係が希薄になりつつある日本では自分のことは自分でするしかなかった。
俺はここに来て人の温かみを知ったような気がする。いや、元は温かったのだが、成長していく過程でどんどん冷めていき冷たくなってきたのだ。寂しいことだ。
そんなことを話しているとク・エールとラビッティアの野菜炒めが出てきた。ユキにはラビッティアのステーキ(下味なし)が出された。
ユキはそれが来ると一目散に食べ始め、俺とジャックはそれを微笑ましく見た。
そして俺とジャックはク・エールで乾杯した。
「俺はここにこれてよかったと思う」
「急にどうした?」
「俺のいた場所は人の温かみのない場所だった。ここに来てそれを体験して嬉しいんだ」
「そうか。人の温かみのない場所か」
「物は有り触れているが人との関わりが薄い。親しい人だけの世界、知らない人には見向きもしない、冷めた世界だった」
「そうか、なんだか物悲しいな」
「ああ」
俺は酔いに任せて日本を思い出をジャックに話した。そうだ、物悲しいほど人との関係が希薄になっていく、それが普通になっていっていた。今考えると寂し過ぎる。だからだろう、ここでの生活が時々心を熱くさせるのは。
そんな俺の話をただ黙って聞いてくれるジャックは本当に優しい人だと思う。
「ここの生活が合っているんなら嬉しいよ」
「うん、ここはいい街だよ」
「ああ、いい街だよな」
俺はしみじみ言うジャックを見た。ジャックは苦笑しながら話してくれた。彼自身の過去を。
「俺はもともとここの出身じゃないんだ」
「え?」
「俺は王都の生まれでな。異動でこの街に来た」
「異動?」
「ああ、上司と合わなくてな。ヤツは自分のミスを俺に押しつけやがった。あいつのせいで俺はこんな田舎の方に来たって最初は思っていた。実家からは縁切りされたし、嫁さんは子供を連れて出ていった」
「……」
「だがな、異動当初から荒んだ俺を温かく迎え入れてくれたんだ、ここの人たちは」
「うん」
「荒んだ俺を見放さないでいてくれたんだよ、ここの人たちは。ここでの上司とはウマが合ってな。色々一緒にしているうちに俺はここが好きになった。ここが俺の故郷になっていた」
「ああ」
「昔、王都に帰れる機会があったんだ。俺の無実を俺の同僚と部下が証明してくれて、あいつは除隊、俺は王都のもと居た警備隊に戻れることになった。家族も俺を迎え入れるって言ってきた」
「迎え入れるって」
俺は絶句した。間違いが正されたら許すって、それを信じてジャックを捨てたんだから謝る方ではないのかと疑問に思った。
ジャックはそんな俺の考えが分かったのか苦笑した。
「俺は考えた末にここに残ることにした、もちろん、実家のことも嫁さんのことも白紙に戻さなかった。無実を証明してくれた同僚や部下には悪いと思ったがな」
「復縁しなかったのか?」
「ああ、もう俺は家族を信じれなかった。何かあればまた縁を切られるってわかっているからな」
「そうだな」
なんとも悲しい話だ。でも、俺のいた世界でもまれにそういう話を聞いたことがあった。それはその家の価値観だが悲しいものは悲しい。
「だからこそ、マコトの気持ちもわかる。ここはいい街だし、いい人たちがいる」
「ああ……その後、同僚たちとは?」
「ん?たまに連絡を取っているぞ、遊びにも来るしな」
「そうか」
「ああ」
俺たちはちょっとしんみりしながらク・エールを一口飲んだ。
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