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第一章
24、違法ブローカー④
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まぁ、俺はもっとゆっくりでもいいから、街のことや色んな物を見ていきたいし。
「もちろん、その7日間で功績をしっかり残した者は早いステップアップを可能とします。その実力が他の冒険者に周知されるからです。周りを納得させれるだけの功績を残せばいいのです」
「逆にお前さんは今回の件でそれが周知の事実となる。なにせ、あのグルードを見つけあまつさえ捕縛したんだ。これは誰もが認める功績だ」
「そうですね、さっきのAランク冒険者たちが証人になります」
「功績ってのはクエストの達成率や内容が関わってくる。早く上に行きたい者は自分より上のランクの冒険者と一緒にクエストをこなす。そうすればそいつらが証人になる」
「ですが、悪い所も一緒に報告されます。上のランクの冒険者がFランク冒険者と一緒にクエストをこなすのはギルドから追加報酬が出るからです。もちろん虚偽をすればそれはその冒険者の来歴に傷がつくのでちゃんと真実を述べます」
「そういうことよ。今回は急なクエストになったがこれでお前さんの実力は周知された。なにせ、この俺までもがお前さんの戦いぶりをしっかりと見たんだからな。問題ねぇ」
グランツさんの言葉にアキラさんが顔を上げて、グランツさんの方を見た。
何か納得のいったというような顔をしている。
どうしたんだろう?
「もしかして、グルードを小屋に行かせたのは」
「こいつの実力を見るためよ。危なかったら俺がすぐに捕縛しに行くつもりだったしなぁ。まぁ、こいつは足止めしかする気はなかったみたいだから早々に捕縛したがな」
「そうですか。あなたが取り逃がすなんて珍しいと思いましたがそういう意図があったんですね」
「まぁなぁ!」
「それでも危険極まりないことです!今後は絶対にしないでください!!」
「わ、わかってるよ」
うん、そういう意味があったんだ。
それよりこの二人時々どっちが上なのか分からなくなる。
しっかりとした信頼関係が出来ているんだろうけど、それでもはたから見る分には不思議な感じがする。
グランツさんは居た堪れなかったのかアキラさんから距離を取る意味も込めて俺の後ろに隠れたが俺よりでかい大男が俺で隠れきれるわけないでしょうに!
アキラさんはアキラさんでそんな光景を見てため息をついている。
うん、その気持ち俺でもわかるよ。
とりあえず俺を盾にしないでほしい。
「本当に。それとリストアップはだいたい終わりました。最後はこの卵だけです」
「これは何の卵ですか?」
「天狼ですね。天の狼と書いて天狼です。翼をもった狼です。まぁ、時に犬の姿をしたのもいますがね」
「へぇ~」
俺はその卵を持ち上げた。
全体は乳白色で金や銀の模様細工な柄が入っている。
何、この卵、すっごく綺麗なんだけど。
それになんだか気になるんだよね、この卵。
なんだか俺の知っているモノが中にいるような、懐かしい感じ。
そう、俺があいつを逃がしちゃいけないと思った原因はこの卵なんだとなんとなく理解した。
そうして俺はいつの間にか周りの声が聞こえないほどにその卵に集中していた。
会いたい、会いたい、早く、早く、早く出ておいで、俺はここに居るぞ。
俺はいつの間にか中のモノに会いたい一心で魔力を込めていた。
「マ、マコトさん!それ以上魔力を込めたら!!」
「卵が孵っちまうぞ!!」
かえる?カエル?孵る!ああ、早く孵ればいい、俺はここに居るんだから。
お前も俺に会いたかったんだろう、だからここに居るんだろ?
さぁ、孵っておいで、帰っておいで。
「帰ろう、お帰り、ただいま。……、俺はここに居る」
「マコトさん?」
俺の独り言を聞いてグランツさんとアキラさんは首を傾げていた。
そして、卵は俺の言葉に導かれるようにひびが入り、割れた。
生まれた、孵った。いや、帰ってきた。俺の大事な仔が、会いたかった、会いたかったよ。
===================================================
7月24日
誤字報告いただき、修正する。
「もちろん、その7日間で功績をしっかり残した者は早いステップアップを可能とします。その実力が他の冒険者に周知されるからです。周りを納得させれるだけの功績を残せばいいのです」
「逆にお前さんは今回の件でそれが周知の事実となる。なにせ、あのグルードを見つけあまつさえ捕縛したんだ。これは誰もが認める功績だ」
「そうですね、さっきのAランク冒険者たちが証人になります」
「功績ってのはクエストの達成率や内容が関わってくる。早く上に行きたい者は自分より上のランクの冒険者と一緒にクエストをこなす。そうすればそいつらが証人になる」
「ですが、悪い所も一緒に報告されます。上のランクの冒険者がFランク冒険者と一緒にクエストをこなすのはギルドから追加報酬が出るからです。もちろん虚偽をすればそれはその冒険者の来歴に傷がつくのでちゃんと真実を述べます」
「そういうことよ。今回は急なクエストになったがこれでお前さんの実力は周知された。なにせ、この俺までもがお前さんの戦いぶりをしっかりと見たんだからな。問題ねぇ」
グランツさんの言葉にアキラさんが顔を上げて、グランツさんの方を見た。
何か納得のいったというような顔をしている。
どうしたんだろう?
「もしかして、グルードを小屋に行かせたのは」
「こいつの実力を見るためよ。危なかったら俺がすぐに捕縛しに行くつもりだったしなぁ。まぁ、こいつは足止めしかする気はなかったみたいだから早々に捕縛したがな」
「そうですか。あなたが取り逃がすなんて珍しいと思いましたがそういう意図があったんですね」
「まぁなぁ!」
「それでも危険極まりないことです!今後は絶対にしないでください!!」
「わ、わかってるよ」
うん、そういう意味があったんだ。
それよりこの二人時々どっちが上なのか分からなくなる。
しっかりとした信頼関係が出来ているんだろうけど、それでもはたから見る分には不思議な感じがする。
グランツさんは居た堪れなかったのかアキラさんから距離を取る意味も込めて俺の後ろに隠れたが俺よりでかい大男が俺で隠れきれるわけないでしょうに!
アキラさんはアキラさんでそんな光景を見てため息をついている。
うん、その気持ち俺でもわかるよ。
とりあえず俺を盾にしないでほしい。
「本当に。それとリストアップはだいたい終わりました。最後はこの卵だけです」
「これは何の卵ですか?」
「天狼ですね。天の狼と書いて天狼です。翼をもった狼です。まぁ、時に犬の姿をしたのもいますがね」
「へぇ~」
俺はその卵を持ち上げた。
全体は乳白色で金や銀の模様細工な柄が入っている。
何、この卵、すっごく綺麗なんだけど。
それになんだか気になるんだよね、この卵。
なんだか俺の知っているモノが中にいるような、懐かしい感じ。
そう、俺があいつを逃がしちゃいけないと思った原因はこの卵なんだとなんとなく理解した。
そうして俺はいつの間にか周りの声が聞こえないほどにその卵に集中していた。
会いたい、会いたい、早く、早く、早く出ておいで、俺はここに居るぞ。
俺はいつの間にか中のモノに会いたい一心で魔力を込めていた。
「マ、マコトさん!それ以上魔力を込めたら!!」
「卵が孵っちまうぞ!!」
かえる?カエル?孵る!ああ、早く孵ればいい、俺はここに居るんだから。
お前も俺に会いたかったんだろう、だからここに居るんだろ?
さぁ、孵っておいで、帰っておいで。
「帰ろう、お帰り、ただいま。……、俺はここに居る」
「マコトさん?」
俺の独り言を聞いてグランツさんとアキラさんは首を傾げていた。
そして、卵は俺の言葉に導かれるようにひびが入り、割れた。
生まれた、孵った。いや、帰ってきた。俺の大事な仔が、会いたかった、会いたかったよ。
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7月24日
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