転移先で頑張ります!~人違いで送られたんですけど?!~

桜月雪兎

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第一章

20、初クエスト⑤

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 俺が扉に向かっているとお姉さんに引き止められた。
 俺が振り向くとお姉さんが手招きをしていた。俺はつられるままに向かった。
「どうしました?」
「最近、魔獣の密売ブローカーがこの街に潜んでいるって話があるので気が付いたら、情報をください」
「魔獣の密売ブローカー?」
 え?何?魔獣って密売できるの?
 俺の疑問をすぐに読み取ったお姉さんが顔写真入りの手配書を出して教えてくれた。
 顔写真入ってるのに捕まらないのか、よっぽど隠れるのが上手いんだなぁ。
 おっと、そういう事ではなく。
「これがそのブローカーの手配書です。顔までは分かっているのですがどうにも摘発まで行かなくて」
「隠れるのが上手いんですね」
「そうなんですよ!」
 お姉さんはちょっと興奮気味に大きな声を出した。
 それに驚いたギルド内のメンバーがこっちを見たがお姉さんを見ると納得したように自分の用事に戻った。
 お姉さん、落ち着いたように見えるけど、激情家なの?
 意外だわ、それはそうと魔獣のこと聞かないと話が見えてこない。
 こういう時知識ないのは困る。
「それで、魔獣って密売できる物なんですか?」
「成体はほとんど難しいですが、卵や幼体であれば密売可能です。生まれたばかりであれば刷り込みが出来る個体もいますし、それ以上に愛情を持って育てれば生涯のパートナーになります」
「魔獣がパートナー」
「珍しいことでもないんです。国に認められた魔獣販売員というのもいますし」
「おお」
「ですが、これは厳重な決まりの中で行われています。それを逸脱した者は密売者として重罪に処されます」
「重罪」
 お姉さんは真剣な顔をしていた。
 俺はほぼほぼオウム返しのように言葉を繰り返していた。
 魔獣ってグランドバイソンなどのことではないのか?
 話の感じ的に違うんだろうな。
 俺の疑問に気付いたのか、お姉さんが説明してくれた。
「はい、魔獣は魔力を所有する知性ある生き物です。私たち人や亜人族が侮辱し、領域を犯していい存在ではありません」
「なるほど」
「グランドバイソンやジュエリーディアなどのようなものは獣に属され、魔物とされます。害獣認定もなるものもいますが、それですら乱獲すれば保護対処になります」
「そうでしょうね」
「現に数百年前はジュエリーディアの角を求めて乱獲され、絶滅の危機にあい、保護対処になりました。もちろん今は保護は外れています」
「あ、よかった」
 あっぶなーい。もうちょっとで保護対象生物を狩った罪で投獄されるかもしれなかった。
 うん、そういう知識もやっぱり必要だよなぁ。
 俺の安心したような顔を見てお姉さんは苦笑していた。
「ですので、もしこの者を見つけた際は情報をお願いします」
「わかりました」
「ありがとうございます。それと、自己紹介を全員していませんでしたね。私は狼獣人のアリアと言います」
 お姉さんが苦笑しながら自己紹介をしてくれた。
 俺が頷くと受付の猫のお姉さんや鑑定のお兄さんがやってきて自己紹介してくれた。
「最初にあったのに名前言わなくてごめんなさい。猫獣人のリリーだよ」
「先ほどは失礼しました。ヒューマンのアキラと言います」
「マコトです。改めてよろしくお願いします」
「「「はい」」」
 俺たちはあいさつした。
 今度こそ、俺はギルドを出て宿泊街に向かった。
 ああ、これでやっと人心地付ける。
 とりあえず、生活の拠点を見つけてその上で一般常識を知れる場所に行きたいなぁ。
 そうだ、図書館みたいなところはないかなぁ。
 活字中毒ではないが、読書は趣味の一つだったから読むことは苦じゃないんだよなぁ。
 

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7月21日
一文追加しました。

7月26日
一部修正しました。
21話以降に出てくる『アキラさん』の模索時代の名前をそのままにしていました。
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感想 49

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