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第一章
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アイリスはカイルに、リリーシア夫人はルドルフにエスコートされるままに敷物の上に腰を掛けた。
カイルとルドルフもそれぞれの最愛の人の隣に腰かけた。
四人が腰かけたのを見届けると侍女たちがアイリスとリリーシアにそれぞれが作ったサンドイッチが入っているバスケットを渡した。
他の使用人は飲み物や他の食べ物を用意した。
それと同時に使用人側の方も用意している。
護衛たちも警護をしつつも食事をとって良い事になってる。
これはヴァルファス公爵家では普通のことだ。
自分たちだけが楽しんだり、寛いだりするのは少々気が引けると感じる人が多かったのでこうなった。
それに全員で楽しんだ方が良いと感じている。
貴族の中では少々変わっており、権力を笠に着ない、情に厚い、一途というのがヴァルファス公爵家に対しての認識だ。
それは種族としてもそうだと言える。
しかし、冷酷な面も持っている。
そうでなければ貴族社会で生き残っていくことはできない。
「カイル様、私が作ったんです」
「そう、美味しそうだね」
「カイル様を想って作ったんです。受け取って下さいますか?」
「もちろん!あ~ん……ぱくっ、ああ、おいしいよ。アイリス」
「嬉しい」
アイリスは頬を朱に染めながらカイルに自分が作ったサンドイッチを入れたバスケットを渡した。
カイルは破顔してそれを受け取った。
カイルがバスケットを開けるとそこには少々形がズレてしまったり、バランスが悪かったりしているサンドイッチが並んでいた。
ほとんど隙間なく並べたことで移動中は崩れなかったようだ。
アイリスは少々不格好なサンドイッチを恥ずかしそうに見ていたがその中でもきれい目の物を一つ取り、カイルに差し出した。
カイルはバスケットを置くことはせず、口を開けた。
アイリスはさらに頬を紅くしながらカイルの口の方に差し出したサンドイッチを持って行った。
カイルはすぐにそれを食べて、破顔した。
それは新鮮なレタスとトマトのスライスに蒸した鶏肉をはさんだサンドイッチだった。
蒸した鳥はハーブで味付けされており、さっぱりした物だった。
初めてのことであり、ヴァルファス公爵家という過保護集団の前だったのでアイリスがしたのは用意された食材を自分の想いのままにはさむということだけだったが、アイリスは真剣に悩んではさんでいた。
それでも慣れない事だったので綺麗なサンドイッチを作ることはできなかったようだ。
そんな様子がカイルには思い浮かび、微笑み、いつも以上においしく感じた。
愛する人が自分を想いながらしてくれたことは特別だ。
「ふふふ、可愛いわね」
「そうだね」
「これは私があなたを想いながら用意したの、受け取って下さる?」
「ああ、もちろんだよ。愛しのリリーシア」
カイルとアイリスのやり取りを見ながら微笑んでいる夫婦も同様にリリーシア夫人がルドルフに食べさせていた。
そんな仲睦まじい二組を見ながら使用人や護衛組も厨房が用意してくれたサンドイッチを食べていた。
そして、所々では恋人同士や夫婦である使用人たちが寄り添って自身が用意した物を渡したり、食べさせ合いをしたりしていた。
そんな中で相手がいないのはすべて男性だった。
今回、一緒に来ていた女性陣はパートナーがそばにいた。
独身組の使用人に護衛たちはなぜか厨房が用意してくれたサンドイッチがしょっぱく感じていた。
===========================
R3/4/27
一部修正しました。
カイルとルドルフもそれぞれの最愛の人の隣に腰かけた。
四人が腰かけたのを見届けると侍女たちがアイリスとリリーシアにそれぞれが作ったサンドイッチが入っているバスケットを渡した。
他の使用人は飲み物や他の食べ物を用意した。
それと同時に使用人側の方も用意している。
護衛たちも警護をしつつも食事をとって良い事になってる。
これはヴァルファス公爵家では普通のことだ。
自分たちだけが楽しんだり、寛いだりするのは少々気が引けると感じる人が多かったのでこうなった。
それに全員で楽しんだ方が良いと感じている。
貴族の中では少々変わっており、権力を笠に着ない、情に厚い、一途というのがヴァルファス公爵家に対しての認識だ。
それは種族としてもそうだと言える。
しかし、冷酷な面も持っている。
そうでなければ貴族社会で生き残っていくことはできない。
「カイル様、私が作ったんです」
「そう、美味しそうだね」
「カイル様を想って作ったんです。受け取って下さいますか?」
「もちろん!あ~ん……ぱくっ、ああ、おいしいよ。アイリス」
「嬉しい」
アイリスは頬を朱に染めながらカイルに自分が作ったサンドイッチを入れたバスケットを渡した。
カイルは破顔してそれを受け取った。
カイルがバスケットを開けるとそこには少々形がズレてしまったり、バランスが悪かったりしているサンドイッチが並んでいた。
ほとんど隙間なく並べたことで移動中は崩れなかったようだ。
アイリスは少々不格好なサンドイッチを恥ずかしそうに見ていたがその中でもきれい目の物を一つ取り、カイルに差し出した。
カイルはバスケットを置くことはせず、口を開けた。
アイリスはさらに頬を紅くしながらカイルの口の方に差し出したサンドイッチを持って行った。
カイルはすぐにそれを食べて、破顔した。
それは新鮮なレタスとトマトのスライスに蒸した鶏肉をはさんだサンドイッチだった。
蒸した鳥はハーブで味付けされており、さっぱりした物だった。
初めてのことであり、ヴァルファス公爵家という過保護集団の前だったのでアイリスがしたのは用意された食材を自分の想いのままにはさむということだけだったが、アイリスは真剣に悩んではさんでいた。
それでも慣れない事だったので綺麗なサンドイッチを作ることはできなかったようだ。
そんな様子がカイルには思い浮かび、微笑み、いつも以上においしく感じた。
愛する人が自分を想いながらしてくれたことは特別だ。
「ふふふ、可愛いわね」
「そうだね」
「これは私があなたを想いながら用意したの、受け取って下さる?」
「ああ、もちろんだよ。愛しのリリーシア」
カイルとアイリスのやり取りを見ながら微笑んでいる夫婦も同様にリリーシア夫人がルドルフに食べさせていた。
そんな仲睦まじい二組を見ながら使用人や護衛組も厨房が用意してくれたサンドイッチを食べていた。
そして、所々では恋人同士や夫婦である使用人たちが寄り添って自身が用意した物を渡したり、食べさせ合いをしたりしていた。
そんな中で相手がいないのはすべて男性だった。
今回、一緒に来ていた女性陣はパートナーがそばにいた。
独身組の使用人に護衛たちはなぜか厨房が用意してくれたサンドイッチがしょっぱく感じていた。
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