妹の身代わりとされた姉は向かった先で大切にされる

桜月雪兎

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第一章

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カイルはルドルフに言ったように準備をしている使用人たちの元に向かった。

「準備のほどはどうだい?」
「カイル様」
「もう暫くお待ち下さい。大きめの荷物がまだ…」
「そうか、なら私も取りに行こう。私も手伝えば早く終わるだろう」
「では、お願いします」
「ああ」

カイルは使用人たちと共に大きな荷物を置いている倉庫に向かった。
ヴァルファス公爵家は公爵ですら使用人と共に物事をすることがある。
だいたいはこういう楽しいイベント事だが。

今回も使用人たちの殆どが参加なので荷物が多い。
ヴァルファス公爵領ではたまに見られる光景で、領民たちも多くの馬車が通っても家紋がヴァルファス公爵家では何事かと驚くことなく、微笑ましく見るほどだ。

カイルは使用人たちと大きな荷物を馬車に運んだ。

敷物や使う食器類に日除け用の大きめのパラソル等を荷物を運ぶ用の馬車に詰め込んだ。

カイルはいつも不思議に思っている事があった。

実は今回のようなピクニックなどの外で過ごすイベントの時は姿を隠すパーティションや化粧道具一式に動きやすい服一式等を運ぶ。

何故そんなのが必要なのかと、だいたいそれはカイルやルドルフのではなく、リリーシア夫人のだ。
今回はそこにアイリスのも運ばれた。

着替えることなどないのにといつもなら思っていたが、愛しのアイリスができたことで理解した。

母親であるリリーシア夫人では何とも思わなかったが、急な雨が降って濡れたり、何事かあって服が汚れたりした時のための物だった。

女性にそのままで居れとは紳士として、人として絶対に言えない。
むしろ、男なら軽く洗って乾かせば良いだけだ。
乾かなくても上着でも着ればすむだけだ。

「ううーん」
「カイル様?どうかされましたか?」
「いや、思慮が狭いのはいけないなと思っただけだ」
「はい?」
「気にしなくて良い」
「分かりました」

偶然、カイルの声を聞いてしまった使用人の一人が尋ねると苦笑しながらカイルは答えた。
しかし、彼にはどういう意図での発言か分からず、首をかしげるとカイルは気にするなと更に苦笑した。

使用人はカイルの独り言かと納得して返事をした。

カイルにしてみれば素直に言うには気恥ずかしい内容だっただけだが。

そうこうしていると準備は終わった。

丁度良くルドルフの方も仕事が終わりやって来た。

「どうやら準備はすんだようだね」
「ええ、タイミング良く」
「ふふふ、ご苦労様」
「見図りましたか?父上」
「勘弁してくれ、やっと書類仕事から解放されたんだぞ」
「それはそれはすみませんでした」

カイルはタイミング良く現れたルドルフをからかった。
息子にからかわれているだけだと分かっていてもあまり書類仕事が好きではないルドルフはげんなりしなから答えた。

そんな父親の姿にカイルは苦笑しながら謝った。

実際に書類仕事ならカイルの方が得意である。

ただ、現当主としての仕事なのでルドルフでないとさばけないだけだ。
もし、カイルでさばける書類ならほとんどがカイルの方にいく事が多い。

そんな風に過ごしていると、サンドイッチ等を作り終わったアイリスとリリーシア夫人が現れた。






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