58 / 69
第一章
55
しおりを挟む
カイルはルドルフに言ったように準備をしている使用人たちの元に向かった。
「準備のほどはどうだい?」
「カイル様」
「もう暫くお待ち下さい。大きめの荷物がまだ…」
「そうか、なら私も取りに行こう。私も手伝えば早く終わるだろう」
「では、お願いします」
「ああ」
カイルは使用人たちと共に大きな荷物を置いている倉庫に向かった。
ヴァルファス公爵家は公爵ですら使用人と共に物事をすることがある。
だいたいはこういう楽しいイベント事だが。
今回も使用人たちの殆どが参加なので荷物が多い。
ヴァルファス公爵領ではたまに見られる光景で、領民たちも多くの馬車が通っても家紋がヴァルファス公爵家では何事かと驚くことなく、微笑ましく見るほどだ。
カイルは使用人たちと大きな荷物を馬車に運んだ。
敷物や使う食器類に日除け用の大きめのパラソル等を荷物を運ぶ用の馬車に詰め込んだ。
カイルはいつも不思議に思っている事があった。
実は今回のようなピクニックなどの外で過ごすイベントの時は姿を隠すパーティションや化粧道具一式に動きやすい服一式等を運ぶ。
何故そんなのが必要なのかと、だいたいそれはカイルやルドルフのではなく、リリーシア夫人のだ。
今回はそこにアイリスのも運ばれた。
着替えることなどないのにといつもなら思っていたが、愛しのアイリスができたことで理解した。
母親であるリリーシア夫人では何とも思わなかったが、急な雨が降って濡れたり、何事かあって服が汚れたりした時のための物だった。
女性にそのままで居れとは紳士として、人として絶対に言えない。
むしろ、男なら軽く洗って乾かせば良いだけだ。
乾かなくても上着でも着ればすむだけだ。
「ううーん」
「カイル様?どうかされましたか?」
「いや、思慮が狭いのはいけないなと思っただけだ」
「はい?」
「気にしなくて良い」
「分かりました」
偶然、カイルの声を聞いてしまった使用人の一人が尋ねると苦笑しながらカイルは答えた。
しかし、彼にはどういう意図での発言か分からず、首をかしげるとカイルは気にするなと更に苦笑した。
使用人はカイルの独り言かと納得して返事をした。
カイルにしてみれば素直に言うには気恥ずかしい内容だっただけだが。
そうこうしていると準備は終わった。
丁度良くルドルフの方も仕事が終わりやって来た。
「どうやら準備はすんだようだね」
「ええ、タイミング良く」
「ふふふ、ご苦労様」
「見図りましたか?父上」
「勘弁してくれ、やっと書類仕事から解放されたんだぞ」
「それはそれはすみませんでした」
カイルはタイミング良く現れたルドルフをからかった。
息子にからかわれているだけだと分かっていてもあまり書類仕事が好きではないルドルフはげんなりしなから答えた。
そんな父親の姿にカイルは苦笑しながら謝った。
実際に書類仕事ならカイルの方が得意である。
ただ、現当主としての仕事なのでルドルフでないとさばけないだけだ。
もし、カイルでさばける書類ならほとんどがカイルの方にいく事が多い。
そんな風に過ごしていると、サンドイッチ等を作り終わったアイリスとリリーシア夫人が現れた。
「準備のほどはどうだい?」
「カイル様」
「もう暫くお待ち下さい。大きめの荷物がまだ…」
「そうか、なら私も取りに行こう。私も手伝えば早く終わるだろう」
「では、お願いします」
「ああ」
カイルは使用人たちと共に大きな荷物を置いている倉庫に向かった。
ヴァルファス公爵家は公爵ですら使用人と共に物事をすることがある。
だいたいはこういう楽しいイベント事だが。
今回も使用人たちの殆どが参加なので荷物が多い。
ヴァルファス公爵領ではたまに見られる光景で、領民たちも多くの馬車が通っても家紋がヴァルファス公爵家では何事かと驚くことなく、微笑ましく見るほどだ。
カイルは使用人たちと大きな荷物を馬車に運んだ。
敷物や使う食器類に日除け用の大きめのパラソル等を荷物を運ぶ用の馬車に詰め込んだ。
カイルはいつも不思議に思っている事があった。
実は今回のようなピクニックなどの外で過ごすイベントの時は姿を隠すパーティションや化粧道具一式に動きやすい服一式等を運ぶ。
何故そんなのが必要なのかと、だいたいそれはカイルやルドルフのではなく、リリーシア夫人のだ。
今回はそこにアイリスのも運ばれた。
着替えることなどないのにといつもなら思っていたが、愛しのアイリスができたことで理解した。
母親であるリリーシア夫人では何とも思わなかったが、急な雨が降って濡れたり、何事かあって服が汚れたりした時のための物だった。
女性にそのままで居れとは紳士として、人として絶対に言えない。
むしろ、男なら軽く洗って乾かせば良いだけだ。
乾かなくても上着でも着ればすむだけだ。
「ううーん」
「カイル様?どうかされましたか?」
「いや、思慮が狭いのはいけないなと思っただけだ」
「はい?」
「気にしなくて良い」
「分かりました」
偶然、カイルの声を聞いてしまった使用人の一人が尋ねると苦笑しながらカイルは答えた。
しかし、彼にはどういう意図での発言か分からず、首をかしげるとカイルは気にするなと更に苦笑した。
使用人はカイルの独り言かと納得して返事をした。
カイルにしてみれば素直に言うには気恥ずかしい内容だっただけだが。
そうこうしていると準備は終わった。
丁度良くルドルフの方も仕事が終わりやって来た。
「どうやら準備はすんだようだね」
「ええ、タイミング良く」
「ふふふ、ご苦労様」
「見図りましたか?父上」
「勘弁してくれ、やっと書類仕事から解放されたんだぞ」
「それはそれはすみませんでした」
カイルはタイミング良く現れたルドルフをからかった。
息子にからかわれているだけだと分かっていてもあまり書類仕事が好きではないルドルフはげんなりしなから答えた。
そんな父親の姿にカイルは苦笑しながら謝った。
実際に書類仕事ならカイルの方が得意である。
ただ、現当主としての仕事なのでルドルフでないとさばけないだけだ。
もし、カイルでさばける書類ならほとんどがカイルの方にいく事が多い。
そんな風に過ごしていると、サンドイッチ等を作り終わったアイリスとリリーシア夫人が現れた。
20
お気に入りに追加
9,393
あなたにおすすめの小説

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です

番を辞めますさようなら
京佳
恋愛
番である婚約者に冷遇され続けた私は彼の裏切りを目撃した。心が壊れた私は彼の番で居続ける事を放棄した。私ではなく別の人と幸せになって下さい。さようなら…
愛されなかった番
すれ違いエンド
ざまぁ
ゆるゆる設定

義弟の婚約者が私の婚約者の番でした
五珠 izumi
ファンタジー
「ー…姉さん…ごめん…」
金の髪に碧瞳の美しい私の義弟が、一筋の涙を流しながら言った。
自分も辛いだろうに、この優しい義弟は、こんな時にも私を気遣ってくれているのだ。
視界の先には
私の婚約者と義弟の婚約者が見つめ合っている姿があった。

婚約者の側室に嫌がらせされたので逃げてみました。
アトラス
恋愛
公爵令嬢のリリア・カーテノイドは婚約者である王太子殿下が側室を持ったことを知らされる。側室となったガーネット子爵令嬢は殿下の寵愛を盾にリリアに度重なる嫌がらせをしていた。
いやになったリリアは王城からの逃亡を決意する。
だがその途端に、王太子殿下の態度が豹変して・・・
「いつわたしが婚約破棄すると言った?」
私に飽きたんじゃなかったんですか!?
……………………………
たくさんの方々に読んで頂き、大変嬉しく思っています。お気に入り、しおりありがとうございます。とても励みになっています。今後ともどうぞよろしくお願いします!

番から逃げる事にしました
みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。
前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。
彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。
❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。
❋独自設定有りです。
❋他視点の話もあります。
❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。

ずっと好きだった獣人のあなたに別れを告げて
木佐木りの
恋愛
女性騎士イヴリンは、騎士団団長で黒豹の獣人アーサーに密かに想いを寄せてきた。しかし獣人には番という運命の相手がいることを知る彼女は想いを伝えることなく、自身の除隊と実家から届いた縁談の話をきっかけに、アーサーとの別れを決意する。
前半は回想多めです。恋愛っぽい話が出てくるのは後半の方です。よくある話&書きたいことだけ詰まっているので設定も話もゆるゆるです(-人-)
急に運命の番と言われても。夜会で永遠の愛を誓われ駆け落ちし、数年後ぽい捨てされた母を持つ平民娘は、氷の騎士の甘い求婚を冷たく拒む。
石河 翠
恋愛
ルビーの花屋に、隣国の氷の騎士ディランが現れた。
雪豹の獣人である彼は番の匂いを追いかけていたらしい。ところが花屋に着いたとたんに、手がかりを失ってしまったというのだ。
一時的に鼻が詰まった人間並みの嗅覚になったディランだが、番が見つかるまでは帰らないと言い張る始末。ルビーは彼の世話をする羽目に。
ルビーと喧嘩をしつつ、人間についての理解を深めていくディラン。
その後嗅覚を取り戻したディランは番の正体に歓喜し、公衆の面前で結婚を申し込むが冷たく拒まれる。ルビーが求婚を断ったのには理由があって……。
愛されることが怖い臆病なヒロインと、彼女のためならすべてを捨てる一途でだだ甘なヒーローの恋物語。
この作品は、他サイトにも投稿しております。
扉絵は写真ACより、チョコラテさまの作品(ID25481643)をお借りしています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる