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第一章
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クリムゾン伯爵家に戻ったアルバは1人、ある人物の肖像画の前に立っていた。
そこにオリバーとナタリーにランドロールがやって来た。
アルバはそれを横目で見て確認した。
「お坊っちゃま」
「オリバー、それやめてくれ」
「私にとってアルバ様はいつまでもお坊っちゃまです」
「…………そうか」
「はい」
アルバは苦笑した。
オリバーとナタリーには敵う気がしないし、そこまで嫌なわけでもない。
ただ人前ではやめて欲しいだけだ。
アルバは肖像画に視線を戻した。
それは先々代伯爵であり、アルバの曾祖父であるハルバート・クリムゾンだ。
「……………………曾祖父様は私を愛してくれていたのか?」
「はい。ハルバート様はお坊っちゃまをお守りするようにと」
「私はあまり曾祖父様の記憶はない」
「仕方ありません。ハルバート様が亡くなられたのはお坊っちゃまが3つの頃です」
アルバの両親は祖父母を飛ばして、伯爵家を継いでいた。
アルバはその事情は把握してなかった。
不思議に思っていたが、尋ねられる状況ではなかった。
だから、アルバはオリバーにやっと尋ねた。
「曾祖父様が両親を跡継ぎにしたのか?」
「はい。遺言ではお坊っちゃまのお父様、ロバート様に跡目を」
「よくお祖父様が納得したな」
「その頃にはモンタローグ様は大病を患っておりましたから」
「なるほど、それで一世代空いての世襲になったのか」
「はい」
アルバはハルバートの肖像画を見ながら涙が溢れそうになっていた。
アルバはアイリスの様に子供返りはしなかったが、押さえられていた感情が表に出やすくなっていた。
「…………私は、私を、愛してくれた、相手が居たことを知らなかった」
「仕方ございません。ハルバート様が亡くなられたのも、私たちが解雇されたのも、お坊っちゃまが3つの頃です」
「…………アイリスも3つで両親を失った、私が奪ってしまった。私と同じ目に遭わせてしまった」
「ヴァルファス公爵家の皆さんが幸せにしてくださいます。私たちはクリムゾン伯爵家を守りましょう。アイリスお嬢様のご子息が継がれるまで」
「そうだな。さぁ、領地巡視に行くぞ!」
「「「はい」」」
アルバはオリバーとナタリーにランドロールを連れてクリムゾン伯爵領を巡視して回った。
領地の状態を自身の目で見て、領民たちと話をして、時にはアルバ自身が手伝って領の状況を把握していた。
それがアルバがずっと続けていた領地経営だ。
自身が見聞きして体験したことでないとアルバは納得できなかった。
それがまさか領民の心を掴んでいたなど全然気付いていない。
その姿にずっと着いてきているランドロールは苦笑していた。
「あれでまだ領民から信用されてないと思うなんておかしいですよね」
「屋敷では悪意ばかりでしたから」
「分からないのでしょうね」
「「「まったく、困った方です」」」
「おい!ランドロール、お前も手伝いなさい!力あるだろう!」
「はい」
ランドロールは苦笑し、腕捲りをしながら作業をしているアルバと領民たちの方に向かった。
それを微笑ましくオリバーとナタリーが見守っている。
==========================
キリが良いので、ここでアルバ主軸終わりです。
…………アルバ主軸のつもりはなかったのですが、いつの間にかそうなっていることに気づきました(汗)
あと、ハルバート伯爵の立ち位置を書き忘れていました。
誤解を与えてしまってすみません。
次回からアイリスとカイルです。
そこにオリバーとナタリーにランドロールがやって来た。
アルバはそれを横目で見て確認した。
「お坊っちゃま」
「オリバー、それやめてくれ」
「私にとってアルバ様はいつまでもお坊っちゃまです」
「…………そうか」
「はい」
アルバは苦笑した。
オリバーとナタリーには敵う気がしないし、そこまで嫌なわけでもない。
ただ人前ではやめて欲しいだけだ。
アルバは肖像画に視線を戻した。
それは先々代伯爵であり、アルバの曾祖父であるハルバート・クリムゾンだ。
「……………………曾祖父様は私を愛してくれていたのか?」
「はい。ハルバート様はお坊っちゃまをお守りするようにと」
「私はあまり曾祖父様の記憶はない」
「仕方ありません。ハルバート様が亡くなられたのはお坊っちゃまが3つの頃です」
アルバの両親は祖父母を飛ばして、伯爵家を継いでいた。
アルバはその事情は把握してなかった。
不思議に思っていたが、尋ねられる状況ではなかった。
だから、アルバはオリバーにやっと尋ねた。
「曾祖父様が両親を跡継ぎにしたのか?」
「はい。遺言ではお坊っちゃまのお父様、ロバート様に跡目を」
「よくお祖父様が納得したな」
「その頃にはモンタローグ様は大病を患っておりましたから」
「なるほど、それで一世代空いての世襲になったのか」
「はい」
アルバはハルバートの肖像画を見ながら涙が溢れそうになっていた。
アルバはアイリスの様に子供返りはしなかったが、押さえられていた感情が表に出やすくなっていた。
「…………私は、私を、愛してくれた、相手が居たことを知らなかった」
「仕方ございません。ハルバート様が亡くなられたのも、私たちが解雇されたのも、お坊っちゃまが3つの頃です」
「…………アイリスも3つで両親を失った、私が奪ってしまった。私と同じ目に遭わせてしまった」
「ヴァルファス公爵家の皆さんが幸せにしてくださいます。私たちはクリムゾン伯爵家を守りましょう。アイリスお嬢様のご子息が継がれるまで」
「そうだな。さぁ、領地巡視に行くぞ!」
「「「はい」」」
アルバはオリバーとナタリーにランドロールを連れてクリムゾン伯爵領を巡視して回った。
領地の状態を自身の目で見て、領民たちと話をして、時にはアルバ自身が手伝って領の状況を把握していた。
それがアルバがずっと続けていた領地経営だ。
自身が見聞きして体験したことでないとアルバは納得できなかった。
それがまさか領民の心を掴んでいたなど全然気付いていない。
その姿にずっと着いてきているランドロールは苦笑していた。
「あれでまだ領民から信用されてないと思うなんておかしいですよね」
「屋敷では悪意ばかりでしたから」
「分からないのでしょうね」
「「「まったく、困った方です」」」
「おい!ランドロール、お前も手伝いなさい!力あるだろう!」
「はい」
ランドロールは苦笑し、腕捲りをしながら作業をしているアルバと領民たちの方に向かった。
それを微笑ましくオリバーとナタリーが見守っている。
==========================
キリが良いので、ここでアルバ主軸終わりです。
…………アルバ主軸のつもりはなかったのですが、いつの間にかそうなっていることに気づきました(汗)
あと、ハルバート伯爵の立ち位置を書き忘れていました。
誤解を与えてしまってすみません。
次回からアイリスとカイルです。
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