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第一章

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サマンサはやっと思い通りになると思っていただけに許せなかった。

アルバはそんなサマンサに呆れていた。
確かに、アルバはサマンサの囁きにのってしまった。
だけど、それは自分を殺してもらいたかったからだ。
引導を渡して欲しかったのだ。
確かに最後の最後で愛されたかったと言う思いも微かにあったがそれが望めないと分かってしまった。

「君と私は白い結婚だ。君の産んだアイリーンはナーシェル子爵家を継ぐ者だ。クリムゾン伯爵家の血が入っているのはマリアの子供だけだ」
「私と貴方で子供を作れば良いじゃない!」
「私は誰も抱かない」
「「っ!」」
「私はマリアを愛している。しかし、私はマリアの幸せを壊した。そんな私に子供など……」

アルバはもう誰も受け入れるつもりがなかった。
それがマリアであっても。

「こいつらさえいなければ!」
「サマンサ、マリアを殺しても、マリアの子供を殺しても、君の欲しいものは渡さない。私は正統な後継者がいなくなったと領地も爵位も国に返還する」
「っ!」
「マリア、ここにいたら君は慣れない領地経営をしなくてはならない。ナーシェル子爵家内に別邸がある。そこで子供と暮らしなさい」
「アルバ」
「私は君たちに今後会う気はない。だけど、君たちの居場所は守るよ」
「ごめんなさい、アルバ」

こうして、マリアはアイリスを連れてナーシェル子爵家に戻った。

しかし、それを受け入れられなかった伯爵家の使用人たちがランドロールを誘導して向かわせた。
ナーシェル子爵家にランドロールが責めてきたが、アルバに返り討ちにあった。

「くそ!」
「奥様とアイリスお姉様を返せ!」
「2人に慣れない領地経営をさせるのか?無理だろう。私はマリアたちを傷つけるつもりはない」
「嘘だ!現に伯爵家の方々を殺してるではないか?!」
「…………そうだね。なら、それらしくしよう」
「っ!」
「君には隷属魔法をかけよう。マリアの子供…アイリスを死なせないようにね。だけど、手出しはさせない。彼女は次期クリムゾン伯爵家を継ぐのだからな。試練はいくらでもある。助けることは許さない」
「ぐっわぁぁぁぁ!!」

ランドロールはこうして隷属魔法をかけられ、ナーシェル子爵家の執事として入れられた。
その後、マリアは流行り病でこの世を去った。
その死は伯爵家では殺されたと認識された。

残されたアイリスはマリアの死で悲しむアルバの目に触れないことからサマンサとアイリーンに苛められていた。
アイリスを死なせなければどんな目に遭わせても良いと考えるようになってしまっていた。

弟であるサイモンの面影が見えるアイリスをアルバは徹底的に遠ざけた。
いずれその事を後悔する日が来るとは思わずに。

この事件は公にされることはなかった。
この時、国中を揺るがす流行り病が溢れ、国はその対応に奔走されていたからだ。






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