妹の身代わりとされた姉は向かった先で大切にされる

桜月雪兎

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第一章

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「マリア」
「……そういえば、サマンサお姉様と一緒になったのだったわね」
「ああ、元気だった…」
「気安く話しかけないで!」
「え?」
「私聞いてるわよ!サイモンを貴方苛めてたんでしょ!」
「な、何のことだ?」
「知らばくれないで!全て聞いてるのよ!」
「………………」
「もし、お姉様を苛めたら私許さないから!!」

言い終わり、去っていくマリアをアルバは見つめることしか出来なかった。

アルバには思い当たることがまったくなかった。
頭の中が真っ白になった。

「ふふふ、あの子、あんなことをまだ信じているのね」
「……………どういうことだ?」
「簡単な話よ。貴方の両親は愛するサイモンを持ち上げるために貴方を悪者にしたの」
「私を」
「そうよ。ここ数年、一緒に居ればわかるわ。貴方はそんなことしないって。だって貴方、マリアのために私の誘いを受け入れなかったでしょ」
「………………」
「貴方の両親は愛するサイモンに爵位も、サイモンが望んみ、自分たちも気に入ったマリアと一緒にさせるつもりだった。だから、貴方が邪魔でちょうどよく届いた学園の話を即決したのよ。卒業するまで帰ってこれないものね」
「………………」
「気付かないふりをしていたのにね。貴方の両親は貴方の事など何とも思っていないの。体の良い駒ね、愛してなどいないわ」
「………………」
「貴方がマリアに贈ったプレゼント、全部サイモンからのプレゼントになってあの子のもとに届いていたわ。王都にいるのは貴方なのだから貴方からって分かりそうなものなのにね。バカよね」
「っっっ!!!」
「彼らの話を信じているマリアは貴方を憎んでいるの。それでもマリアを守るの?」
「っっっ!!!」

アルバはサマンサによって知らされた事実に打ちのめされた。
それでもマリアのことを愛していた。

アルバにとってマリアははじめて愛した相手だ。
愛されなかったアルバにとって依存する対象になっていた。
それでもマリアに愛されないことを理解した。

アルバは両親やサイモンの行動が許せなかった。
アルバがマリアを思い、学園で出来た友人たちに相談しながら決めたプレゼントをサイモンのプレゼントとされたことが。
アルバの気持ちを知っていながらそれを踏みにじったことが。
王都での全てを捨てさせられ無理やり押し込められたことが。

アルバは自身の中で完全に何が壊れた音がした。
ただ流れるまま涙を流していた。
そんなアルバを労るようにサマンサはアルバを優しく抱き締めた。

「アルバ、全てを手にするにはサイモンを手にかけるしかないわ」
「サイモンを……」

アルバはゆっくりと動き出した。
その目は黒く濁りきっていた。

サマンサはこれで全て手に入ると思い、怪しく微笑んでいた。



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