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第一章

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簡易裁判から数日後、ヴァルファス家に王前裁判の日程が決まったと連絡があった。
それは三日後の午後と記載されていた。

「三日後」
「早いですね。王様、暇ですか?」
「カイル!」
「いえ。そう疑いたくなるほど早いですよ。公務や日々のお仕事で本来は半月以上は待ちますよね?」
「うむ」

カイルの指摘したように裁判所が依頼しても、重罪とすぐに判断できる事件でも、王前裁判をするには国王の時間の調整をしなくてはいけない。
そうなるとどうしても外せない仕事などがあり、半月以上は待つことになる。
勿論、その待つ間に調査をよりしっかりと行うのが通例だ。

ヴァルファス公爵家が自国の高位貴族だったとしてもそんな訴えは認められない。
勿論、ヴァルファス公爵家はそんな訴えはしていない。
それに相手は子爵家であるので向こうから調査時間を省く目的を内に隠しながら裁判の日取りを早めてくれという訴えは更に認められないどころか、争うのが公爵家なので完全に不可能である。

「実は、三日後の国王の予定が潰れてな、まるっと開いてしまったのだ」
「「「…………」」」
「……先方にも理由はあるんだぞ」
「そう、で、しょうね」

カイルたちは黙ることしかできなかった。
王族の、国王の予定がまるっと無くなるなど本来はあり得ない。

しかし今回ばかりは仕方ないのだ。
本来の予定だった隣国との会談は数日前に向こうの延期要請でなくなった。

というのも、向こうで流行り病が出てしまい、その対応に追われることになったのだ。
幸いなことに特効薬が発見されている方の病だったので、現在はその特効薬の製薬に分配などをし、完全に病気を抑えなくてはならない。

その延期要請が入った直後、仕事を割り振ろうとしたところに今回の王前裁判の要請が入ったのだ。
それにより、異例の早さでの裁判開催になってしまったのだ。

しかし、これに焦ったのはナーシェル子爵家だった。
いや、正確に言えば、サマンサ・ナーシェル子爵夫人だった。

「これはどういうことですの?!」
「サマンサ、落ち着きなさい」
「ですが、あなた!こんな異例の早さで王前裁判が行われる向こうが無理を通したのではないですか?!!」
「それに関しては隣国で流行り病が発症し、それの対応の為に予定していた会談がなくなった為だと書いている」
「そんなこと嘘かもしれませんよ!」
「それはない。これは王宮から届いた正式な通知だ。それに隣国との会談だって私でも聞いていた話だ。隣国との会談を潰してまで私たちの裁判をするメリットは王宮にはない」
「そ、そうですわね」

サマンサはアルバにここまで説明されてやっと落ち着いた。

確かに一貴族の絶縁状から始まった虐待発覚の裁判など、隣国との会談を潰してまでするようなものではない。
それもヴァルファス公爵が関わっているとはいえ、主に子爵家での話だ。
国王の視野にも入らないだろう。

「三日後、すべてが公になる」
「……あなた、何故そんなに落ち着いているのですか?何か秘策でもあるのですか?」
「…………」

アルバは何も言わなかった。
アルバはすでに国王の前で全てを打ち明ける覚悟を決めたのだ。
それによって裁かれる覚悟も持った。
それがサマンサ夫人と明確な違いを体現したのだ。








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