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第一章
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アルバは頭を抱えた。
自身ですら把握してなかった行いの数々を知られているという事実、それら全てを王前裁判で白日のもとにさらされる現実、逃げることすら叶わない現状、どれをとっても身の破滅だ。
アルバは絶縁状不服申し立ての話し合いではアイリスに言い聞かせれば、最悪命じればどうにかなると甘く考えており、まさか当のアイリス本人が来ないとは全然考えてなかった。
アイリスの診断書を見ていなかったためでもあり、例え見ていてもその時ならまだ来るのが当たり前だと考えていたりしていた。
しかし、来たのはヴァルファス公爵であるルドルフとアイリスの『番』であるカイルと主治医のターニャ女医だった。
「…………『番』か」
「ご当主様?」
「あやつらにとっての『番』とは、どういうものだ?」
「獣人族にとっての『番』とは運命の相手、魂から繋がる伴侶だと言われています。獣人族は匂いで『番』が分かると言われています。その為、国には『番』のために法律まであります」
「ああ、そうだな。今回はそれが理由で絶縁状を送られたんだったな」
「はい」
アルバは空笑いをした。
アルバにはナーシェル子爵家を存続させるだけの妙案が浮かばない。
「私は、あれを……アイリスを、人でなくしてしまっていたのだな」
「…………」
「子供か……アイリスが、私の子供であったなら、可愛がれたのだろうか?ちゃんと目を向けていたのだろうか?こんな感情を抱えなくて良かったのだろうか?」
「ご当主様」
「王前裁判では全てが知られるだろう。私やサマンサが企てたことも……犯した罪も……諦めよう。罪はいずれ償わなくてはならない、それがアイツの言葉だ。今がその時なんだろう」
「…………ご当主様。私もお供します、一緒に償いましょう。しかし、奥様やアイリーンお嬢様は納得されるのでしょうか?」
「しないだろうな。もう、あれらのことまで考える必要はないだろう。言い逃れなど出来ないのだ。見捨てる気はないが、庇う気もない」
「はい」
「あれだけは厳重に保管しているのであろう?」
「勿論でございます」
「なら良い…………返すものは返し、払うものは払い、判決に従うのみだ」
「かしこまりました」
アルバは覚悟を決めた。
王前裁判の判決に従うと。
アイリスが受けた仕打ちを返されるのであればそれを受ける。
強制労働を課せられるのならしっかりと全うする。
アイリスに行ったことへの慰謝料を提示されるなら払う。
カイルへの慰謝料も払う。
ただ、ただ、領地だけは国に返還することは出来ない。
それだけはしてはいけないのだ。
「あれは……返さないとな、アイリスに」
自身ですら把握してなかった行いの数々を知られているという事実、それら全てを王前裁判で白日のもとにさらされる現実、逃げることすら叶わない現状、どれをとっても身の破滅だ。
アルバは絶縁状不服申し立ての話し合いではアイリスに言い聞かせれば、最悪命じればどうにかなると甘く考えており、まさか当のアイリス本人が来ないとは全然考えてなかった。
アイリスの診断書を見ていなかったためでもあり、例え見ていてもその時ならまだ来るのが当たり前だと考えていたりしていた。
しかし、来たのはヴァルファス公爵であるルドルフとアイリスの『番』であるカイルと主治医のターニャ女医だった。
「…………『番』か」
「ご当主様?」
「あやつらにとっての『番』とは、どういうものだ?」
「獣人族にとっての『番』とは運命の相手、魂から繋がる伴侶だと言われています。獣人族は匂いで『番』が分かると言われています。その為、国には『番』のために法律まであります」
「ああ、そうだな。今回はそれが理由で絶縁状を送られたんだったな」
「はい」
アルバは空笑いをした。
アルバにはナーシェル子爵家を存続させるだけの妙案が浮かばない。
「私は、あれを……アイリスを、人でなくしてしまっていたのだな」
「…………」
「子供か……アイリスが、私の子供であったなら、可愛がれたのだろうか?ちゃんと目を向けていたのだろうか?こんな感情を抱えなくて良かったのだろうか?」
「ご当主様」
「王前裁判では全てが知られるだろう。私やサマンサが企てたことも……犯した罪も……諦めよう。罪はいずれ償わなくてはならない、それがアイツの言葉だ。今がその時なんだろう」
「…………ご当主様。私もお供します、一緒に償いましょう。しかし、奥様やアイリーンお嬢様は納得されるのでしょうか?」
「しないだろうな。もう、あれらのことまで考える必要はないだろう。言い逃れなど出来ないのだ。見捨てる気はないが、庇う気もない」
「はい」
「あれだけは厳重に保管しているのであろう?」
「勿論でございます」
「なら良い…………返すものは返し、払うものは払い、判決に従うのみだ」
「かしこまりました」
アルバは覚悟を決めた。
王前裁判の判決に従うと。
アイリスが受けた仕打ちを返されるのであればそれを受ける。
強制労働を課せられるのならしっかりと全うする。
アイリスに行ったことへの慰謝料を提示されるなら払う。
カイルへの慰謝料も払う。
ただ、ただ、領地だけは国に返還することは出来ない。
それだけはしてはいけないのだ。
「あれは……返さないとな、アイリスに」
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