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第一章
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ルドルフがアイリスを娘として認識しているのをアイリス自身に告げてから数日たち、本日は絶縁状不服申し立てによっての話し合いに来ている。
勿論、アイリスは療養中のため、屋敷にてお留守番だ。
アイリスの側にはリリーシアと信頼できる侍女たちがいるため、カイルとルドルフは安心して裁判所に来ている。
時間になり、職員の案内で室内に入った。
そこにはアルバ・ナーシェル子爵とサマンサ夫人にアイリーンがいた。
それに対して、アイリス側はアイリス本人はおらず、ルドルフ・ヴァルファス公爵とカイルとターニャ女医がいた。
アルバは片方の眉を上げた。
「これは絶縁状不服申し立てではありませんでしたかな?」
「ええ、間違いありませんよ」
「では、なぜ本人が来てないのでしょうかね?」
「君は絶縁状に付随された診断書を見てないのかい?アイリス嬢は現在療養中のためここには来れないよ」
「…………」
アルバは何も言えなかった。
アルバは絶縁状と公爵家への償いの事で困惑し、腹をたてて他の資料を見ていなかった。
「では、アイリス・ナーシェル子爵令嬢の絶縁状不服申し立てについての話し合いを始めます」
アルバが黙ったことで進行・仲介役の裁判員が開始を宣言した。
「それではアイリス嬢側から」
「はい。アイリス嬢は我が家に来た時から正常ではありませんでした。ドレスのみを整えられた。そうとしか言えない状態でした」
「具体的には?」
「正直に言いますとアイリス嬢は令嬢とは言えない状態でした。痛みきった髪に、痩せすぎな体、瞳には生気すらありませんでした」
「来た際の台詞と礼のみ教えられたのでしょうな。それ以外はずっと立っていました」
「なんと!」
「アルバ・ナーシェル子爵、何か申し開きは?」
アルバは何も言えなかった。
それもそのはず、カイルやルドルフが言ったのはアイリスがヴァルファス公爵家を訪れた際の状態だ。
アルバは忘れていたのだ。
自身がアイリスにどのような態度で接していたのか、どういう仕打ちをしていたのか、屋敷内でアイリスがどういう扱いを受けていたのか。
しかし、ここで反論しておかないといけない。
認めてしまえば絶縁状が受理されてしまうから。
そうなれば訪れる恩恵がなくなってしまうのだ。
「それは、あれが、言い付けも守らず悪事を働いたため仕置きをしていただけです」
やっと絞り出した答えは納得のいくものではなかった。
「あれが仕置き?あり得ませんな。アイリス嬢は心を壊していた。命ぜられたことしか出来ない『人形』と称した方が納得いくほどに」
「いいえ。あれは時折、人の所業とは思えない悪事を働くのです。ですから、私たちは心を鬼にして仕置きをするのです」
アルバは自身は悪くないと、アイリスが全て悪いからなったのだと言い募った。
まったく悪びれもせずに。
サマンサ夫人とアイリーンもそれに習った。
「ええ、ええ、あれは本当に仕方のない子なのです。使用人たちに気分次第で不当に罰するのです。終いには体罰も行います」
「お姉様はいつも私に悪口を言います。本当に辛かったです」
「ヴァルファス公爵、確かにご子息に怪我を負わせてしまったのはアイリーンですが、アイリーンはあれの所業に心が疲れていたのです。ですから、私たちは謝罪の際、諸悪の根元であるあれを向かわせました。勿論、ご子息の『番』だったとは思いませんでしたが」
それを聞いていたルドルフは怒りを感じていたが、それ以上の怒気を感じ、カイルの方を向くと青ざめた。
表情なく、負のオーラを纏うカイルはさながら魔神の様だ。
隣にいたターニャ女医もこの場を逃げ出したい気持ちだった。
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R3.2.22
一部修正しました。
勿論、アイリスは療養中のため、屋敷にてお留守番だ。
アイリスの側にはリリーシアと信頼できる侍女たちがいるため、カイルとルドルフは安心して裁判所に来ている。
時間になり、職員の案内で室内に入った。
そこにはアルバ・ナーシェル子爵とサマンサ夫人にアイリーンがいた。
それに対して、アイリス側はアイリス本人はおらず、ルドルフ・ヴァルファス公爵とカイルとターニャ女医がいた。
アルバは片方の眉を上げた。
「これは絶縁状不服申し立てではありませんでしたかな?」
「ええ、間違いありませんよ」
「では、なぜ本人が来てないのでしょうかね?」
「君は絶縁状に付随された診断書を見てないのかい?アイリス嬢は現在療養中のためここには来れないよ」
「…………」
アルバは何も言えなかった。
アルバは絶縁状と公爵家への償いの事で困惑し、腹をたてて他の資料を見ていなかった。
「では、アイリス・ナーシェル子爵令嬢の絶縁状不服申し立てについての話し合いを始めます」
アルバが黙ったことで進行・仲介役の裁判員が開始を宣言した。
「それではアイリス嬢側から」
「はい。アイリス嬢は我が家に来た時から正常ではありませんでした。ドレスのみを整えられた。そうとしか言えない状態でした」
「具体的には?」
「正直に言いますとアイリス嬢は令嬢とは言えない状態でした。痛みきった髪に、痩せすぎな体、瞳には生気すらありませんでした」
「来た際の台詞と礼のみ教えられたのでしょうな。それ以外はずっと立っていました」
「なんと!」
「アルバ・ナーシェル子爵、何か申し開きは?」
アルバは何も言えなかった。
それもそのはず、カイルやルドルフが言ったのはアイリスがヴァルファス公爵家を訪れた際の状態だ。
アルバは忘れていたのだ。
自身がアイリスにどのような態度で接していたのか、どういう仕打ちをしていたのか、屋敷内でアイリスがどういう扱いを受けていたのか。
しかし、ここで反論しておかないといけない。
認めてしまえば絶縁状が受理されてしまうから。
そうなれば訪れる恩恵がなくなってしまうのだ。
「それは、あれが、言い付けも守らず悪事を働いたため仕置きをしていただけです」
やっと絞り出した答えは納得のいくものではなかった。
「あれが仕置き?あり得ませんな。アイリス嬢は心を壊していた。命ぜられたことしか出来ない『人形』と称した方が納得いくほどに」
「いいえ。あれは時折、人の所業とは思えない悪事を働くのです。ですから、私たちは心を鬼にして仕置きをするのです」
アルバは自身は悪くないと、アイリスが全て悪いからなったのだと言い募った。
まったく悪びれもせずに。
サマンサ夫人とアイリーンもそれに習った。
「ええ、ええ、あれは本当に仕方のない子なのです。使用人たちに気分次第で不当に罰するのです。終いには体罰も行います」
「お姉様はいつも私に悪口を言います。本当に辛かったです」
「ヴァルファス公爵、確かにご子息に怪我を負わせてしまったのはアイリーンですが、アイリーンはあれの所業に心が疲れていたのです。ですから、私たちは謝罪の際、諸悪の根元であるあれを向かわせました。勿論、ご子息の『番』だったとは思いませんでしたが」
それを聞いていたルドルフは怒りを感じていたが、それ以上の怒気を感じ、カイルの方を向くと青ざめた。
表情なく、負のオーラを纏うカイルはさながら魔神の様だ。
隣にいたターニャ女医もこの場を逃げ出したい気持ちだった。
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R3.2.22
一部修正しました。
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