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第一章
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アイリスが少しずつ改善されていっている中、ヴァルファス家に一通の手紙が届いた。
「やはり来たか」
「来ましたわね」
「予想通り」
「ふむ。来なければ内密にすませれたのにな」
来た手紙をルドルフ、リリーシア、カイルで見ている。
それはナーシェル子爵がアイリス名義で出した絶縁状に不服申し立てしたことが通達された。
「ふふふ、予想通りですね。これであの恥知らずどもにアイリスが受けた苦しみ等を返せます」
「そうだな。アイリス嬢ためにも」
「お返ししなくてはなりませんわね」
ヴァルファス公爵家全員が悪い顔をして笑っていた。
通達には簡易裁判(家庭裁判での話し合いみたいなもの)でお互いの主張を擦り合わせるようにすると明記されている。
カイルは王前裁判(王族の前での行う裁判のこと)で衆人環視のもと、ナーシェル子爵家がアイリスに行った非道の数々をあきらかにして裁くことが目的だ。
しかし、殺人などの重罪でない限りすぐに王前裁判とはならない。
つまり、これは始まりに過ぎないのだ。
この簡易裁判で話がまとまらなかったり、重罪の可能性が出たりすれば王前裁判に移行する。
カイルはもともと話し合いで済ます気などない。
しかし、法的に裁かなくてはいけないので順序をおっているだけだ。
「ああ、あんなやつらうっかり殺さないように回復させつつ我が牙で噛み砕き、爪で引き裂き、アイリスが受けた仕打ちを何倍、何十倍にして返し、生き恥をさらし、生き地獄を受けさせられたら、どれだけ良かったか」
「仕方ない。それをやってしまったらこちらが悪くなる」
「ええ、ちゃんとやっても良いと許可がおりなくては」
「分かっています、父上、母上。あいつらに子爵家とり潰しや爵位剥奪等の没落などで許す気などありません。必ずや重犯罪者としてこちらに生殺与奪の権利を取得します」
「ええ、頑張りなさい。カイル」
「時間がかかるだろうがやりなさい。あれほど可愛い我が家の義娘となるとアイリス嬢にしたことは許されない」
「ええ、ええ、勿論ですとも!私たちの可愛い義娘を傷つけたのですから、当然その報いは受けて頂かないと」
「はい。セバス、証人は集まっているな」
「勿論です、カイル様。ありのままを証言し、それを撤回・反語にしないと契約を交わしたいます」
「ああ、助かる」
カイルはアイリスがまだナーシェル子爵家にいた頃の事を知っている相手を探し出させた。
アイリスの事を思い、行動した者や進言し、解雇させられた者などがいる可能性を考えたのだ。
と言うのも、今日までアイリスが生きていけたのは誰かの支えがあった筈だとカイル思ったのだ。
最初に赤ん坊の時に育児放棄をすればまず生きてはいけない。
本当に誰からも蔑まされていては生きるだけの栄養源すらも取れない。
しかし、アイリスは今まで生きてきた。
状況や状態は最悪だったが生きてはいるのだ。
こちらを有利にするために……いや、目的を達成するためにそれを探し出させたのだ。
「あとはこの日に……」
「ああ」
「ええ」
通達にはこうあった。
『カイル・ヴァルファス次期公爵殿
以前、申請された番であるアイリス・ナーシェル子爵令嬢とアルバ・ナーシェル子爵をはじめとしたナーシェル子爵家との絶縁は相手側の不服申し立て請求により簡易裁判を行うことになりました。
つきましては七日後の○月×日の正午より裁判所の第三話し合い室に来て下さい。
法務省国民管理局貴族担当課』
「やはり来たか」
「来ましたわね」
「予想通り」
「ふむ。来なければ内密にすませれたのにな」
来た手紙をルドルフ、リリーシア、カイルで見ている。
それはナーシェル子爵がアイリス名義で出した絶縁状に不服申し立てしたことが通達された。
「ふふふ、予想通りですね。これであの恥知らずどもにアイリスが受けた苦しみ等を返せます」
「そうだな。アイリス嬢ためにも」
「お返ししなくてはなりませんわね」
ヴァルファス公爵家全員が悪い顔をして笑っていた。
通達には簡易裁判(家庭裁判での話し合いみたいなもの)でお互いの主張を擦り合わせるようにすると明記されている。
カイルは王前裁判(王族の前での行う裁判のこと)で衆人環視のもと、ナーシェル子爵家がアイリスに行った非道の数々をあきらかにして裁くことが目的だ。
しかし、殺人などの重罪でない限りすぐに王前裁判とはならない。
つまり、これは始まりに過ぎないのだ。
この簡易裁判で話がまとまらなかったり、重罪の可能性が出たりすれば王前裁判に移行する。
カイルはもともと話し合いで済ます気などない。
しかし、法的に裁かなくてはいけないので順序をおっているだけだ。
「ああ、あんなやつらうっかり殺さないように回復させつつ我が牙で噛み砕き、爪で引き裂き、アイリスが受けた仕打ちを何倍、何十倍にして返し、生き恥をさらし、生き地獄を受けさせられたら、どれだけ良かったか」
「仕方ない。それをやってしまったらこちらが悪くなる」
「ええ、ちゃんとやっても良いと許可がおりなくては」
「分かっています、父上、母上。あいつらに子爵家とり潰しや爵位剥奪等の没落などで許す気などありません。必ずや重犯罪者としてこちらに生殺与奪の権利を取得します」
「ええ、頑張りなさい。カイル」
「時間がかかるだろうがやりなさい。あれほど可愛い我が家の義娘となるとアイリス嬢にしたことは許されない」
「ええ、ええ、勿論ですとも!私たちの可愛い義娘を傷つけたのですから、当然その報いは受けて頂かないと」
「はい。セバス、証人は集まっているな」
「勿論です、カイル様。ありのままを証言し、それを撤回・反語にしないと契約を交わしたいます」
「ああ、助かる」
カイルはアイリスがまだナーシェル子爵家にいた頃の事を知っている相手を探し出させた。
アイリスの事を思い、行動した者や進言し、解雇させられた者などがいる可能性を考えたのだ。
と言うのも、今日までアイリスが生きていけたのは誰かの支えがあった筈だとカイル思ったのだ。
最初に赤ん坊の時に育児放棄をすればまず生きてはいけない。
本当に誰からも蔑まされていては生きるだけの栄養源すらも取れない。
しかし、アイリスは今まで生きてきた。
状況や状態は最悪だったが生きてはいるのだ。
こちらを有利にするために……いや、目的を達成するためにそれを探し出させたのだ。
「あとはこの日に……」
「ああ」
「ええ」
通達にはこうあった。
『カイル・ヴァルファス次期公爵殿
以前、申請された番であるアイリス・ナーシェル子爵令嬢とアルバ・ナーシェル子爵をはじめとしたナーシェル子爵家との絶縁は相手側の不服申し立て請求により簡易裁判を行うことになりました。
つきましては七日後の○月×日の正午より裁判所の第三話し合い室に来て下さい。
法務省国民管理局貴族担当課』
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