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第一章

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カイルはアイリスが眠りについたのを確認して寒くないように布団をかけ直してからターニャ女医に向き直った。

「ターニャ女医」
「はい?」
「アイリスの事、お願いします。私の大事な、とても大切で、大事で、愛しい『番』なんです」
「ターニャ女医、私たちからも頼む」
「お願いします。やっと出来た可愛い娘なの」
「勿論です。お力になれるように尽力します」

ヴァルファス公爵一家は全員、頭を下げた。
ターニャ女医はそれだけアイリスが大事にされている事を理解して、助けたいと思ってた。

勿論、受け持った患者の力になりたいと医者としていつもターニャ女医は思ってもいる。

アイリスの状態からターニャ女医も怒りを覚えたほどだった。
だからこそ、ターニャ女医は診断書・・・の製作も早急に行ったのだ。

ターニャ女医は王宮にも出入りするほどの高名な医師だ。
その発言だけでも力を持つほどだが、正式な診断書となれば絶対の力をもつ。

王宮にも出入りし、王妃や王女たちを診断することがあるターニャ女医は公平であることを誓っている。
だからこそ、ターニャ女医の診断書には力があるのだ。

ターニャ女医が頷いたことでカイルは満足した。
そして、アイリスをターニャ女医と母親であるリリーシアに託し、カイルは子爵家との縁切りのために動いた。

すでに王宮には書類や物証の目録・・・・・をつけて送っている。
判断は役員に任された。

しかし、カイルたちは向こうが不服申し立てをして、裁判になると判断している。
勿論、それの備えをしている。

カイルとルドルフとセバスはアイリスが眠る部屋から出て、執務室に向かった。
執務室に着くと定位置につき、話し始めた。

「カイル、抜かりはないな」
「当たり前です。まぁ、ターニャ女医の診断書とアイリスの持ち物だけでかなりの力です」
「確かに」
「ですが、できうるだけの人脈に声をかけさせて頂きました」
「うむ」

カイルとルドルフは悪い顔をしていた。
そばに控えていたセバスはやはり親子だなと思いつつも止める気はない。

アイリスはカイルの『番』なのだ。
つまり、確実に自分たちの主人になる存在なのだ。

そんなアイリスが傷つけられていたと言うのは許すわけにはいかない。
ましてやそれが不当であり、一方的など人としても許せるものではない。

「さて、もう暫くしたらアイリスの絶縁状が向こうに届くだろう」
「ですね。おとなしく従うか?それとも……」
「向かってくるか、か?」
「ええ、向かってきて欲しいですね。大義名分がほしいので、ふふふ」
「…………なるほど」

カイルの言葉にさすがのルドルフもセバスも顔がひきつった。
オーラがあまりにも黒すぎた。
普段より低めの声で笑っているのも怖い。

カイルを敵にまわすべきではないと嫌な汗をかきながら思ったのだ。



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R3.2.12
一部修正しました。

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