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竜親、町興し編
十六話 勝負③
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お兄さんは私を完全に敵として認識したらしく、私の動きを漏らさないように見ている。
その視線がすごく嫌だ。
敵に睨まれた獲物ってこういうことなのかなぁ?
「どうやら俺はお前を見くびり過ぎていたらしい」
『だから?それでもあなたが変わるとは思えないわ』
「ほざけ!」
お兄さんは私に思いっきり襲いかかってきた。さっきまでの遠距離攻撃ではなく、本当の爪での攻撃だ。一瞬だがその爪がものすごく鋭利な刃物に見えた。私は危機感を感じてその攻撃を『高粘着糸』で思いっきり距離を離して逃げた。
だが、それで正解だったみたいだ。地面が思いっきりえぐれているのだ。
何あれ!?威力半端ないんですけど!!
≪あれは『爪刃』という通常攻撃じゃな、爪を刃物の様にして攻撃してくるのじゃ≫
わ~お、まだ攻撃手段あったのね。
まぁ、それでもあまり変わらないけど。当たらなければ威力が強くても意味ないし!
なんて虚勢をはってみた、相変わらずドラグーンに呆れられた。
良いも~ん!ここからが私のターンなんだから!!
『やはり負ける気はしないわ』
「嘗めやがって!」
『事実よ。『土操作』!』
「うわぁ!」
私は土操作でお兄さんの足場から土を突き上げて行った。それは不規則にだが規則的にできている。私を囲むように土壁を作っていく。
不規則のように見えるのはお兄さんが行く先を突き上げているためだが実は突き上げの感じから逃げ場を誘導して作り上げたのだ。
急に足場を取られて、慌てたお兄さんにはそのことがわからない、もちろんその意図に気付いたのはごく少数だったようだ。ソーガは気付いていた。
何気にあんたすごいよね?力がお兄さんより弱いってだけなんじゃないの?つまり頭脳派?
いや、この戦いを見守るソーガの瞳には好戦的な部分が見えている。頭脳派であるが武闘派…いや、好戦的ってことか。
出来上がった土壁の隅々に『高粘着糸』を張り巡らせた。これでお兄さんを捕えるのだ。
今後のことを考えても殺すわけにはいかない。
ついでに土壁の上の方は高床式の倉庫の様に鼠返しになっている。つまり登っても出れない様になっている。
私は土壁の中で安全圏にいるように見えるが実はこれこそが罠なのだ。『高粘着糸』を張り巡らせているがお兄さんが入れるようになっている。
『足場を崩しただけでそれ?』
「ぐぬぬぬ!なめるな!」
『……予想通り』
「何?!」
お兄さんは私に向かって直進してきた。
だが、私はお兄さんが土壁の中に入ると判断した時に土の中に沈んでいった。
もちろん急に私が消えたことに驚いたお兄さんは止まろうとしたが止まりきれず、土壁に入っていき、そのままぶつかった。
お兄さんがぶつかったショックで動けなくなっている間に私は土壁の外に姿を現して出入口を『高粘着糸』でふさいだ。
それに驚いたお兄さんは出ようともがいているが上は鼠返しで登りきれず、出入口は『高粘着糸』でふさがれているので体当たりでもしようものならくっ付いてしまう。
私はスライムの姿に戻り、お兄さんに姿が見えるように土操作で台座を作った。
『やはりあなたは群れを率いるには冷静さが足りないわ。私の挑発にすぐに乗るなんて、直情的で向こう見ず、考えも浅い』
「貴様!!」
私の指摘に腹を立てて怒鳴ってきたが私は気にせず、話を続けた。
『自分の力不足がわかった?あなたは力だけで考えて行動していないの、だから負けるのよ。あなたを倒して群れがどうにかなるのはあの子が嫌がるからこれで終わらせてあげる』
「なんだと」
『だって、あの子は群れに戻るつもりはなくて、あなたに自分の弱点を知って群れをより良く導いて欲しいだけなのだから』
「っっっ!」
『あなたは思い違いをしているだけ。あの子は本当にあなたのことが好きだったのに』
「弟よ」
お兄さんは私に言われ、ソーガを見て、ソーガの気持ちがやっと理解できたらしく項垂れた。
それを見た狼たちはこの結末を受け入れた。
ソーガは全てを見届け、お兄さんを見ているがかける言葉が見つからないようだ。
「兄よ……勝者、ティア様!!」
『わかったら今後はもっと考えて行動することね。あなたの周りにも相手の力を判断できる子がいるようだからその子に補佐してもらいうべきよ』
ソーガが勝利宣言をしたことで私はすべての罠を解除した。
お兄さんはそれでも項垂れたまま動かなかった。
それを心配そうに支持派の狼たちが囲った。
「ティア様」
『見届け、ご苦労様』
「いえ、私は別に何かしたわけではないので」
そう言いつつ、ソーガは私にすり寄っている。
私はソーガの背中に乗り、そのままこの群れから離れようとした。
だって、ソーガは群れに戻れないのだからむやみに心を乱す必要はない。
そう思ってソーガと共に群れに背を向けると声をかけられた。
その視線がすごく嫌だ。
敵に睨まれた獲物ってこういうことなのかなぁ?
「どうやら俺はお前を見くびり過ぎていたらしい」
『だから?それでもあなたが変わるとは思えないわ』
「ほざけ!」
お兄さんは私に思いっきり襲いかかってきた。さっきまでの遠距離攻撃ではなく、本当の爪での攻撃だ。一瞬だがその爪がものすごく鋭利な刃物に見えた。私は危機感を感じてその攻撃を『高粘着糸』で思いっきり距離を離して逃げた。
だが、それで正解だったみたいだ。地面が思いっきりえぐれているのだ。
何あれ!?威力半端ないんですけど!!
≪あれは『爪刃』という通常攻撃じゃな、爪を刃物の様にして攻撃してくるのじゃ≫
わ~お、まだ攻撃手段あったのね。
まぁ、それでもあまり変わらないけど。当たらなければ威力が強くても意味ないし!
なんて虚勢をはってみた、相変わらずドラグーンに呆れられた。
良いも~ん!ここからが私のターンなんだから!!
『やはり負ける気はしないわ』
「嘗めやがって!」
『事実よ。『土操作』!』
「うわぁ!」
私は土操作でお兄さんの足場から土を突き上げて行った。それは不規則にだが規則的にできている。私を囲むように土壁を作っていく。
不規則のように見えるのはお兄さんが行く先を突き上げているためだが実は突き上げの感じから逃げ場を誘導して作り上げたのだ。
急に足場を取られて、慌てたお兄さんにはそのことがわからない、もちろんその意図に気付いたのはごく少数だったようだ。ソーガは気付いていた。
何気にあんたすごいよね?力がお兄さんより弱いってだけなんじゃないの?つまり頭脳派?
いや、この戦いを見守るソーガの瞳には好戦的な部分が見えている。頭脳派であるが武闘派…いや、好戦的ってことか。
出来上がった土壁の隅々に『高粘着糸』を張り巡らせた。これでお兄さんを捕えるのだ。
今後のことを考えても殺すわけにはいかない。
ついでに土壁の上の方は高床式の倉庫の様に鼠返しになっている。つまり登っても出れない様になっている。
私は土壁の中で安全圏にいるように見えるが実はこれこそが罠なのだ。『高粘着糸』を張り巡らせているがお兄さんが入れるようになっている。
『足場を崩しただけでそれ?』
「ぐぬぬぬ!なめるな!」
『……予想通り』
「何?!」
お兄さんは私に向かって直進してきた。
だが、私はお兄さんが土壁の中に入ると判断した時に土の中に沈んでいった。
もちろん急に私が消えたことに驚いたお兄さんは止まろうとしたが止まりきれず、土壁に入っていき、そのままぶつかった。
お兄さんがぶつかったショックで動けなくなっている間に私は土壁の外に姿を現して出入口を『高粘着糸』でふさいだ。
それに驚いたお兄さんは出ようともがいているが上は鼠返しで登りきれず、出入口は『高粘着糸』でふさがれているので体当たりでもしようものならくっ付いてしまう。
私はスライムの姿に戻り、お兄さんに姿が見えるように土操作で台座を作った。
『やはりあなたは群れを率いるには冷静さが足りないわ。私の挑発にすぐに乗るなんて、直情的で向こう見ず、考えも浅い』
「貴様!!」
私の指摘に腹を立てて怒鳴ってきたが私は気にせず、話を続けた。
『自分の力不足がわかった?あなたは力だけで考えて行動していないの、だから負けるのよ。あなたを倒して群れがどうにかなるのはあの子が嫌がるからこれで終わらせてあげる』
「なんだと」
『だって、あの子は群れに戻るつもりはなくて、あなたに自分の弱点を知って群れをより良く導いて欲しいだけなのだから』
「っっっ!」
『あなたは思い違いをしているだけ。あの子は本当にあなたのことが好きだったのに』
「弟よ」
お兄さんは私に言われ、ソーガを見て、ソーガの気持ちがやっと理解できたらしく項垂れた。
それを見た狼たちはこの結末を受け入れた。
ソーガは全てを見届け、お兄さんを見ているがかける言葉が見つからないようだ。
「兄よ……勝者、ティア様!!」
『わかったら今後はもっと考えて行動することね。あなたの周りにも相手の力を判断できる子がいるようだからその子に補佐してもらいうべきよ』
ソーガが勝利宣言をしたことで私はすべての罠を解除した。
お兄さんはそれでも項垂れたまま動かなかった。
それを心配そうに支持派の狼たちが囲った。
「ティア様」
『見届け、ご苦労様』
「いえ、私は別に何かしたわけではないので」
そう言いつつ、ソーガは私にすり寄っている。
私はソーガの背中に乗り、そのままこの群れから離れようとした。
だって、ソーガは群れに戻れないのだからむやみに心を乱す必要はない。
そう思ってソーガと共に群れに背を向けると声をかけられた。
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