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第一章

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バルトたちはそういう細かいことは分からない。
領地経営ですらまともに出来ないのに、相続関係のややこしい手続きや決まりなんかを知っているわけもない。
もし、それを知って行動できるとしたらただ1人、ジークフリード・フォン・アルフレッドだけだ。

彼はユキルディスの1番目の異母兄だ。
文武両道を地で行くような相手で自身の両親に似ず、まともなのだ。

現在は騎士団に所属していて遠征中である。
ジークフリードはユキルディスの事を気に入っていて、何かと気にかけていた。
それこそ、実の弟よりもだ。

ユキルディスは自身を気に入って何かと助けてくれるジークフリードを兄として信頼しているし、懐いている。
サリバンたちも最初は警戒していたが、あまりにもユキルディスを甘やかしつつも導いており、実の両親や弟を蔑み、嫌悪している姿は偽りではないと判断して普通に仕えるようにしたぐらいなのだ。

だからこそ、ユキルディスは大丈夫だと判断していた。
ついでにこのユンゲート領に来る前に騎士団の方に手紙を出したので、遠征が終わり次第帰ってきてくれるとユキルディスは思っている。

「あ、マリモにジークフリード兄さんが帰ってきたら協力するように伝えておけば良かった」
「ジークフリード様が帰ってくるのですか?」
「今はただ遠征に行っているだけだしね。遠征って言ってもモンスター退治なのでジークフリード兄さんが負けることなんてないよ。あの人は本当に強いんだから」
「ジークフリード様かぁ」
「アルも楽しみだよね!ジークフリード兄さんはアルにとって良い剣の相手だもんね」
「ええ、そうですね。あの人は本当に強いので良い稽古相手になります」
「ジークフリード兄さんも思っているだろうね!」

ユキルディスの言葉にアルフォンスは微笑んでいた。
アルフォンスもかなり強いのだが、それと同等もしくはそれ以上に強いのがジークフリードなのだ。

ジークフリードが騎士団に入ったのは間違ってもアルフレッド家の当主として持ち上げられないためだ。
アルフレッド家はユキルディスの母親の血筋なので継げるわけもないのにそれを夢見ている両親や実弟に継げないと分からせるためだったが、今回のことで分かるように、両親や実弟にはなにも伝わらなかった。

いや、ジークフリードは言葉でも何度も伝えたが、理解しようとしなかったために行動したのだがそれも伝わってなかった。

「ジークフリード兄さんがいれば助かるよね」
「ええ、ですが」
「何?サリバン」
「ジークフリード様なら騎士団をやめてこちらに来るのではないでしょうか?あの方はユキルディス様を本当に溺愛されてますから」
「そうかなぁ?向こうに残ると思うけど?騎士団だってそんなにすぐには辞められないでしょう?」
「ですが、あの方は学園時代から現王太子殿下と仲も良いですし、王太子殿下を顎で使うような方ですから」
「確かに。よく不敬罪に問われないと思いますよ」
「そういえばそうだね」

サリバンの言うようにジークフリードが甘いのはユキルディスとその周りだけだ。
何故か、ジークフリードは学園時代に同級生として一緒にいた現王太子であるシュヴァルツ・ディル・マルテストに懐かれ、お目付け役みたいな立ち位置にいた。
かなり辛辣なことも言うし、雑に扱うが一度も咎められたことがない。
と言うのも、当の本人であるシュヴァルツが許可し、擁護するので誰も何も言えないのだ。

「あ、でも、ジークフリード兄さんも来てくれると俺も嬉しいなぁ」
「ユキルディス様が喜んでくれるならジークフリード様はすぐにでも飛んできますよ」
「そう?人も増えるし、楽しみだな」

ユキルディスは慕っているジークフリードが来るかもしれないと考えて嬉しくなった。
案外、ユキルディスはジークフリードが一緒に居てくれるのが好きなのだ。












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