少年貴族と執事の話

プロローグ

ある村に天涯孤独の少年がいた。
彼は聡い子であった。
母親を亡くした後、村に何かあれば真っ先につまはじきにされるのは自分だと分かっていた。
分かっていたからこそ、誰とも交わろうとしなかった。
無理に交わってもつまはじきにされる可能性は高い。
だから、あえて交わらず、そうなっても（自分が）傷付かないようにしていた。

でも、それは彼の杞憂でしかなかった。
彼は知らない、彼自身の出生を。
彼の出生故に村人は彼をつまはじきにすることはない。
だけど、彼の行動は村人にとっても良かった。
下手に関わって危ない橋を渡らなくていいからだ。

そんなある日だった。

いつもと変わらない昼下がり、そこに村に似合わない出で立ちの者たちが現れた。
その者たちは迷いなく、まっすぐに目的地に向かっていた。

「お着きになりました」
「ここがあの方の今のご住まいですか」
「はい」
「では、参りましょう」
「「「はい！」」」

ある青年を先頭に彼らは目的地に向かった。
それは天涯孤独となった少年の家だ。

いつもは関わろうとしない村人たちも気になって野次馬をしに向かった。

青年は代表して少年の家の扉をノックした。
ノックの音を不思議に思いながら、少年は扉を開けた。

「はい、どちら様…？」
「お迎えにあがりました。マイロード」
「は？」

これがこの少年と青年の出会いであり、少年の人生の転機となった日である。