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物語32第2次大戦
しおりを挟む森松さんと仁志さんが家に来たのは、私がお店を終わり家に帰った時だった。玄関のチャイムが鳴るので、インターホンを見たら森松さんと、仁志さんが写っていた。
「森松です。あの仁志のことで話しに来ました」
「ちょっと待って下さい。」なんの話しだろう。先日の後藤さんとの話は口止めしては居るが?もしその話ならどうしよう?恐る恐る玄関を開けたら、いきなり謝られ驚いた。
「どうもすみません。許して下さい。」と頭を下げ謝っている。(えー何なのよ?ひょっとして森井さんの事か先日の女性のこと?)
「なんですか?、とりあえず入って下さい」と言って、ダイニングのテーブルの前に座って貰った。
「どうしたんですか?どうしたの?」と二人に話を聞いた。
「実は太田の彼女の事と先日連れていた女性のことですが、同時に話しをするとこんがらかるので順に説明します。まず森井由美子の事ですが。」その時仁志さんが言った
「彼女の事は俺が話しをするよ。今の会社に入って営業を勉強していた。仕事にも慣れ様々なお客様の所にも伺うように成った。その時たまたま知り合った大西商事の森井由美子と気が合い、付き合い始めたんだ」
仁志さんの話では、その大西商事の森井由美子さんと結婚も考えたらしいが、ちょうど仕事が忙しくて、ほんの少し油断している内に大西商事に営業と結婚されたらしい。
当時の森井さんとの別れは、相当辛かったらしい。
男性でもやはり失恋は辛いだろう。次に金町で会っていた女性について説明された。
「実は僕の客なんです。ちょうど僕がヘマして予定を二重に入れてしまい、太田に取引先の女性役員を、会社まで案内して貰いました。それをあなたに見られたらしく、さくらさんに大変誤解を与えてしまいました。だから太田のことを許して上げて下さい。」(あーあの事で謝りに来たんだ!)森松さんは必死で釈明していた。
「そういう訳なんだ」仁志さんは悪気もなしにそう言う。
私はそれを聞いて、却って仁志さんに対し腹が立った。
なぜそんな大事な事をちゃんと話してくれないのだろう?もしちゃんと話しをして居てくれたら、あんなに悲しみや涙などは無かったはずだ。
あの時はそれなりに苦しかった。悲しみが胸を締め付けた。それなのに仁志の野郎、悪気も無い。そう考えていたらますます腹が立ってきた。
「森松さんどうか頭を上げて下さい。あなたは何も悪くないわ。悪いのは仕事だからって、人に誤解を与えておいて、何も言わない仁志さんがいけないんです。」
「えーオレ?」(お前しか居ないだろ!)
「だってそうでしょ、あの晩来た時に、なぜそう言ってくれなかったの?」
「そんな仕事のトラブルなんか、いちいち話せないじゃないか。」
「あたし、互いの悩みや苦労は、共有する物だと思っていたわ。それをあなたったら・・・、苦しいときは互いに助け合い悲しみを半分に、嬉しい時は喜びを倍にするのが、あたし達の関係じゃないの?あなたそう言わなかった?」
「まー、そう言わず。許して下さい。全くさくらさんの言う通りだよ」森松さんが賢明に仲を取り持ってくれた。
「おい太田、早くさくらさんに謝れ。ぐずぐずするな」
「確かにさくらに気持ちは解った、でも逆にオレがメシ食いに来た時に、何故そう言ってくれ無かったんだ。そうしたらいくらでも話したよ、お前にも落ち度は有ると思うけど」
「あたしがどれだけ傷ついていたか解らないでしょう、あなた鈍すぎるわ」
「俺の何処が不満なんだ!」このまま放って置いたら二人はますます険悪になると森松さんは思ったのだろう。慌てて二人に中に割り込み、互いの仲を取り持ってくれた。
「二人とも落ち着けよ。このまま言い合っていたって仕方ないだろう。子供じゃ無いんだから、互いにケンカする時はそれで良いけど、適当なところで歩み寄る知恵は無いのか?」
仁志さんもちょっと首をかしげていたが、考え直してくれた様で、
「そうだねさくらの言うとおりだ、苦しいときは互いに助け合い悲しみを半分に、嬉しい時は喜びを倍にする、全く君の言う通りだ。僕もそう言ったしね。僕が悪かったよ」
それを聞いている私の目から、大粒な涙がこぼれ落ちていた。
「何も泣く事ないじゃないか」
「だって怖かったの!裏切られたのかって思ったら、悲しくて!」
「悪かったよ、これからは何でも話をする様にするよ」
仁志さんが素直に謝っていて呉れたのがわかった。だから私は念を押した。
「私が生きている限りズーッと?」
「うん、ずーっと、年を取ってからもね!」
互いに無意識のうちに手を取り合っていた。森松さんは居づらそうに「オレ、帰るよ」と言ったので
「ごめんなさい、ご飯すぐ作るから食べて行って」
「森松そうしてくれ、さくらの料理はサイコーなんだ。仲直り出来たのもお前のおかげだから」
ふたりがそう言ったので、森松さんと三人で夕飯を食べる事になった。
料理をしていたら仁志さんが手伝うというので
「じゃータマゴ割って」
「俺タマゴを割るの得意なんだ」と宣言したので、少し疑ったが卵の入ったカゴを渡した。ところがタマゴの殻が、割ったボウルに沢山はいてしまう。
「これ、ダメじゃない」そう言った。(こいつなんて不器用だ!呆れる)
「おかしいな?いつもはうまく行くのに」
「殻出して!仁志さんやり方が雑だよ」(まったく仁志はどんな育てられ方したんだ?)
「俺たちまたケンカするな」
「うん、また絶対するね」ちょうどお皿に野菜を盛りつけていた。
「その時はお手柔らかにお願いするよ。俺小心者で、さくらに怒られるのが怖い!絶対にその皿なんか投げないでくれよな」
「よく言うよ、私こそ怖かったんだからね。アッタマに来たらラーメンドンブリでも投げてやる!」
「お前、ドンブリは勘弁してくれよ。あんなの当たったら大けがしちゃうよ」
「じゃあ、お皿にする」「おい、物を投げるのは危ないよ」
森松さんはそんな二人のジャレ合いを見ていて
「あー!お前ら独身の俺の前で仲良くするなよ、ばかばかしいから帰る」と言って、私達が止めるのも聞かず、さっさと帰って行った。
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