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物語26待ちぼうけ?
しおりを挟む次の休日に仁志さんと二人で映画でも見ようかという事になった。日比谷の駅で午前九時に待ち合わせだ。
私は新しい洋服に身を包み、化粧も新しくして、彼に逢ったら喜んで貰おうと気張っていた。
ところが時間になっても、彼は来ない。どうしたんだろう?金町から日比谷までわずか三十分の距離だ。
九時半に成っても来ない。電話しようかなと思ったが、私は携帯を持っていない。それに仁志さんの携帯の番号も知らない。
「困ったな、どうしよう」と思った。目の前は待ち合わせの人々が沢山居る。
「よう、待たせた」と声がするので、そちらを見たが、別のカップルだった。それから十分位経っただろうか
「お待ち合わせですか」見知らぬ紳士が声を掛けてきた。年の頃五十歳位だろうか?
「ええそうですが?何か?」
「イヤ彼氏が来ないなら、ご一緒できないかと思って、あなた九時前からここに居るでしょ」どうも私に事を見ていたらしい。でもこの年になっても、ナンパなんてする男性も居るのかと感心した。
「ごめんなさい。もう来るかと思います。別の方誘って下さい」と断ったが、独身ならああ言う出会いもあるのかと感心した。
でも男性ってああ言う歳でも、異性を求められる物かと驚いた。これではウカウカと、待ち合わせも出来ない。それにしてもまだ来ない、少し腹がたってきた。
それからしばらく待っていたが、十時になっても彼は来ない。私はだんだん不安になったり、頭にきたりした。だんだんと人のことを待たせる彼に、怒りを覚えてきた。
でもふと
「彼は何か急な、仕事でも入ったのかしら?」などと思い、自分も携帯を持ってないしと思い、自宅に帰った。こんな事なら、わざわざ日比谷まで行かなきゃ良かった。
夜九時くらいに、彼が家に来た。
「今日はごめん。客先でトラブルがあり、どうしても休みの今日中に、問題を解決しては成らなくなって、待ち合わせに行けなかった。待った?」と言う。(お前そんなの当たり前だろ、ナンパまでされたんだぞ。あたしを放っておくと、よそ見ちゃうぞ)と思いつつ
「うん九時から一時間ほど待っても来ないから。帰ってきたわ」
「凄いごめんね、これプレゼント」と言って携帯の紙袋を出して頭を下げるのだった。
「何?これ」
「これから待ち合わせや、連絡が有るかも知れないから。君にも携帯を持って欲しいんだ。今日少し時間を貰って買ってきた。携帯の料金も僕が払う」と言う。
「やはり仕事だと思って居たわ。でもこれからはこれで連絡が出来るから、待ちぼうけも無しだね」と私も納得した。
その携帯電話はとある会社の物で、高性能らしいのだが、私は電話を掛ける事と、電話の受け方、メールのやり方などを聞き、メールの文字を打つにも、いろいろなやり方が有り、結構難しい。高校生など両手を使い、メールを打つのも早いとか?
早速テスト通信してお互いに通信し合う、実際に使ってみないとやり方が解らない。
「ほらこうしてメールを書くんだ。そうして此処で送信ボタンを押すと、僕の携帯に着信する。ほらね」
「あー本当だ。なるほど、こうして使うのね」
「僕は僕で君の携帯にメールすると、ほら『メールが着信』って携帯が知らせてくれるだろ。電話はこうして電話帳に登録して置いたから、此処を押して、こうすると僕に電話が掛かる具合になっている」
「あー解った。こうすれば互いの電話もすぐ繋がるね。でもお風呂などに入っていたら、電話があっても出られないよ」
「その時には留守番電話サービスが利用出来る。後で携帯を見て、着信があれば、君からかけ直すことも出来るよ。でも電話だと互いに時間を拘束するので、メールの方が互いに都合の良い時に連絡し合えるから便利だよ」(なるほど、後藤さんが言っていた携帯って便利だ。彼はこれをプレゼントするって言ってたのね)と仁志さんからプレゼントされた、携帯電話を操作して、心の片隅でそう思った。
でも高性能携帯だけに、一遍では全部の機能は使えない。その内徐々に覚えることにした。
「でもこんな小さな機械で話が出来るなんて不思議ね」私はそれまで使ったことがなかったので、とても不思議な感じがしていた
それから彼からは、毎日メールが来る。
「今日の昼は駅前の立ち食いソバ二百五十円」とか「夜は接客で、金町の飲み屋」とか、「今日朝寝坊して会社に遅刻した」、「道路で交通事故があり、怪我人が出て大騒ぎだったみたいだ」など細かなメールがちょくちょく入る。(これで彼の首に首輪を付けられた)と思い、これからの互いの関係に安心出来た。
女ってみんな付き合って居る男性の気持ちが、気になる物だ。私もこれで安心して、仕事が出来るようになった。
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