結婚って? 男性に取り、災難の始めかも?

sin,nisi

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物語22

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私はそれから仁志さんと度々公園で散歩の度に、様々な話しをした。
仁志さんが生まれて育った町の話しや、子供の頃の話し、中学は金町中学であたしと同じだ。これには学校の先生に話で盛り上がった。数学の青木先生は何かというと、罰として人のもみあげを引っ張りそれが痛かったこと、英語の谷口先生は頭が禿げていて、夢中で話しをすると口がとがった形になった事など、結構笑い有った。続いて仁志さんの大学の話しから今の会社に入社した経緯について話を聞いた。金町のビルは私も知っていたが、そこにそんなシステムの会社があったなんて事は全然知らなかった。
ふと「ねえ会社に恋人なんか居なかったの?あなた優しいから持てたでしょう」と聞くと「うんまあね、少し前の話だけど付き合っていた女性は居たよ」と軽く言い、後は口を閉ざしてしまった。だから帰って気になった。仁志さんは形勢が悪いと思ったのか、逆に「君には結婚を考えた人はいなかったの?」と聞かれて慌てた。
なんて答えようか少し考えた。「居ませんでした」など言うと全く持てないみたいで恥ずかしいし、引く手あまただなんて言うと、遊び人かとも思われてしまう。
昔大手町の商社で不倫関係があったとき以来、男の人とはベットを共にしたことはなかった。でもそんなこと言えない。仕方無く
「少し前まで大手町の会社に勤めていたけど、今のバイトに変わってからは誰とも付き合いなんて無いわ。そんな時間ないし」仁志さんは「ふーん」と言って首をかしげた。
あたしはその姿を見て、何かとても不安になった。
此処で仁志さんの女性関係について聞いても良いのかな?など思いながら何も言えなかった。
ただ思ったのはこれだけの営業マンだ。客を接待して綺麗なホステスの居る飲み屋にも行くはず、その女の中には、仁志さんが気に入った女も居るだろうし、もしそんなお店で知り合わなくても、会社で若くて綺麗な娘も居るだろう。その中には今仁志さんと付き合っている女性も居るはずだ、と思った。
私はただのさんぽ仲間でしかない。犬同士が仲が良いだけだ。
そう思うと、少し寂しくなってきた。
仁志さんの女性関係は気になるけど、そんなこと怖くて聞けない。考えただけで胸が熱くなる。何より証拠に仁志さんは、女性のことには一言も弁解すらしなかった。

話が途切れがちになり、あたしは慌てて彼の大学の話しを聞いてみた。
「ねえ仁志さんはどこの大学でコンピュータに勉強したの?」
「うん俺は東京理科大葛飾キャンパスにある、基礎工学部 電子応用工学科でデータベース関係の知識を学んだ。で就職が決まらなくてひょんな事で今の会社に入ったのは良いけど、営業担当にさせられてしまった。でも営業も楽しいよ」
「ふーん今の仕事に満足しているのね」
「うん、客と向かい合って話しをしているといろいろ言われるけど、遣り甲斐はあるよ。ところで君はパソコンは解る?」
「ごめんなさい。あたし元々アナログ人間だから、ああ言う方面は苦手なの。大学でも勉強しなかったし」
「大学ってどこの大学?君が大学出ているなんて知らなかった」
「学校の先生になりたいと思って、帝京大学の八王子キャンパスで、教育学部を出たの」
「へー先生ですか?でもあの仕事も大変だよね」
「うん、生徒一人一人個性があるでしょ、教育実習の時に実感したけれど、あたしが高校の時に世話になった先生が、とての親身になってくれたので、あたしも同じ仕事がしたいと思ったの」
「へー?そん話しを聞くと、君が別人に見えるな」
「そんなに変わらないよ、だって就職の時に教師に成れなくて、いろいろ苦労して、結局は今のバイトに成っちゃった」不倫したなど言えなかった。

仁志さんも就職には苦労したみたいだ。コンピュータの勉強はしていたが。システム作成の仕事には就けなかったらしい。でもその知識が今の営業で役に立っているとか。なんて話をしていると、時間が経つのが早い
ただ彼とは気が合いそうだと思った。音楽の好みも絵の好みも同じだった。

上野の美術館で展示されていた、アバンギャルド作品の話しをしたら、彼は笑っていた。
全紙のキャンバスにレモンイエロー一色の絵が有り、隅に「黄」と書いてあった。
「その作家はきっとこの色が綺麗だと思ったんだね」
「じゃなきゃ書かないわ、でもこういった単純な方が、解る人も居るかも?」
「逆に『なんだ!』なんて怒り出す人も居たりするんじゃない?」
「うん『黄』て書いてあるから、『見たら解るよ』なんて石投げたり?」
「そんな事したら事件になちゃうよ。仁志さんはそういった絵は嫌い?」
「僕は良いけど、さくらがアバンギャルドが気に入ったのは驚いた。そんな絵を認める人には見えなかった」
「あたしも抽象画より具象画の方が好きだわ。有名なジャン=フランソワ・ミレーの-落穂拾い-なんてとても深い意味があって、何度見ても感激!」
仁志さんとは多少趣味が違うが、同じように古くて趣のあるものが好きなのは一緒だった。彼はアメデオ・クレメンテ・モディリアーニが好きだと言って居た。あの瞳が書かれていない絵が肖像画については、モデルの心理や画家との関係を表現して居るとか、話をしてくれた。
私もその絵は知って居たが、瞳が書かれていない作風は好きには成れなかった。
でもお互いに「ピカソだけはあまり解らない」と声が揃った。そこで二人は気が合った。
音楽の好みも一緒だ。流行のAKD49より、トワエ・モア等好きだったし、私がさだまさしが好きなのに対し、彼は五輪真弓や中村あゆみ・森田童子が好きだと言って居た。
森田童子は私も知って居て、独特な歌い方にショックを受けた物だ。
この森田童子の歌は上戸彩主演の「高校教師」と言うドラマの主題歌にも成ったが、森田自身は素顔を見せず、歌の流行が終わると静かに普通の主婦に戻ったとか?
こんな同じ趣味の話しに、二人とも夢中で話をした。
それからどの位の月日が流れただろうか?有る時とてもショックなことがあった。
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