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お付き合い物語21
しおりを挟む先日メモを貰った後藤さんは、しばらくは顔を見せなかった。電話も無い。きっと私に構っている暇など無いのだろうと、私も忘れかけていた。
ところが春でも寒い日があるが、その時ひょっこりと現れた。定番の味噌ラーメンと餃子を食べて帰って行った。きっとあのメモのことは忘れて居るんだろうと思って居た。
あたしも仁志さんと親しくしていたし、二股なんて掛けられない。それほど器用な性格では無い。
ところが次の日も来た。席は調理場の私が見えるカウンタ席だ。ただ食事を済ますと帰って行く。
でもいつもお付き合い物語21カウンター席から私の顔を見ると、手を上げて会釈する。
私もお客様なので知らん顔は出来ない。ニッコリ笑い、笑顔で挨拶をしていた。いつもそうだった。
彼が日曜でお休みの時は来ないが、それ以外はお店に来た。それも毎日続けてくる。
その度に会釈をする。私とすればメモのこともあるし、気が気では無くなっていった。
(今度何か言ってきたら、どうしたら良いの?)と迷ってしまう。それは仁志さんから結婚の約束も無いし、特に付き合ってくれと言われた訳でも無い。
ただ何となく一緒に遊びに行っただけ、そんなどっちつかずの付き合いで、もし振られたらと考えると邪険に出来なかった。
最初は店のお客さんとして丁寧に挨拶していた。でもそれが度重なると、周りのバイトも娘達が騒ぎ出す。
「チーフ、またあのお客様が来てますよ。チーフに気があるんじゃ無いですか」など言ってくる。私は思わず顔を赤くして怒鳴っていた。
「お前らしっかり仕事しろ、遊んでいる奴らは給与からさっ引くぞ」でも本当に後藤さんが来る度にドキドキしていた。
だって、カウンター席に座り私を見て、目礼するだけなのだ。あたしとしては気にしないようにしては居たが、やはり気になる。
いっその事告白して呉れれば「ごめんなさい、もうお付き合いしている人が居るんです」と断られるが、ただ食事に来ただけのお客様には、「来ないでくれ」とも言えなかった。
(はー?なんか言われたら、どうしよう?)
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